きゅうせいこきゅうきゅうはくしょうこうぐん(えーあーるでぃーえす)
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
全身で激しい炎症が起こったことが原因で肺もダメージを受け、急激に呼吸状態が悪化すこと
10人の医師がチェック 147回の改訂 最終更新: 2024.02.17

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の基礎知識

POINT 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)とは

急性呼吸窮迫(促迫)症候群は全身に激しい炎症が起こることで肺にもダメージが及び呼吸状態が悪化する病気です。感染(特に肺炎)や外傷、熱傷などが原因になりやすいです。主な症状は咳・痰・発熱・チアノーゼ・呼吸困難感などです。症状・画像検査・血液検査・細菌検査などを用いて診断されます。急性呼吸窮迫症候群の原因となっている病気の治療を行うことが最優先になりますが、低酸素血症をきたすため酸素投与や人工呼吸器管理が必要になります。急性呼吸窮迫症候群の治療に関しては救急科や呼吸器内科を受診して相談して下さい。

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)について

  • 全身で激しい炎症が起こったことが原因で肺もダメージを受けることで、急激に呼吸状態が悪化した状態の総称
    • 心臓機能の低下や過剰な点滴が原因で肺に水がたまり呼吸状態が悪化したものは含まない
  • 病気のメカニズム
    • 何らかの原因で起こった強い炎症が主に肺の血管にダメージを与える
    • 血管の壁を水が通過しやすくなることで、肺胞の中に水分が溜まる
    • 肺胞に溜まった水分が邪魔して酸素の交換がうまくできなくなる
    • ARDSの原因には直接肺胞を損傷する誤嚥肺炎などと、間接的に肺胞を損傷する敗血症や外傷等がある
  • 劇的に改善する治療は存在せず、治療が難渋しやすい
  • 以下の状態があるとARDSの存在を考える
    • 急速に病気が現れる
    • 胸のレントゲン写真やCT検査で肺の両側に異常な影が見える
    • 心臓の機能には大きな問題がない
    • 酸素が体内にうまく取り込めない

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の症状

  • 症状は様々なものが現れるが、病気が出現してから48時間以内に発生することが多い
  • 症状の例
    • 急激に進行する呼吸困難
    • チアノーゼ(低酸素血症による皮膚や粘膜が青紫色である状態)
    • 痰(場合によっては血痰も現れる)
    • 発熱

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の検査・診断

  • 画像検査
    • 胸部レントゲン検査(X線写真):肺の両側に影が現れていることを確認する
    • CT検査:肺の両側に影が現れていることを確認する
    • 心臓超音波検査:心臓の機能に大きな異常が無いことを確認する
  • 血液検査:血液中の酸素濃度や臓器にダメージがないかを調べる
  • 細菌検査:痰や血液に対して、顕微鏡検査や培養検査をして感染があるかを調べる

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療法

  • 低酸素血症の改善を目的に以下の治療を行う
    • 酸素投与を行う
    • 人工呼吸器を装着して陽圧換気(肺が潰れないようにサポートする)を行う
      • 人工呼吸器による陽圧換気は呼吸状態を保つ上で非常に有効
      • 人工呼吸器には起きた状態で使うものと寝た状態で使うものがあり、急性呼吸促迫症候群に対しては鎮静剤で深く眠った状態にして後者を使うことが多い
  • 原因疾患の治療
    • 感染症がある場合は抗菌薬を使う
    • 外傷がある場合はこれに対して治療を行う
  • 薬物治療
    • 発症早期であれば少量のステロイド薬投与が考慮される
    • 好中球エラスターゼ阻害薬が用いられることもあるが、その使用の賛否は分かれる
  • 予後
    • 人工呼吸器を使用する場合にはしばしば集中治療室(ICU)に入室することになるが、そのまま亡くなる方も少なくない重篤な病気である

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の経過と病院探しのポイント

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)でお困りの方

ARDSは、肺に炎症が生じたり水が溜まったりして呼吸が効率的に行えなくなった状況です。ARDSが起こるからには何らかの原因があるため、ARDSを治療するというよりは、元となった病気や病態を治療するというのが基本的な考え方となります。ARDSの原因は肺炎であったり、敗血症(全身を菌が巡って重篤になった状態)であったりと様々です。したがって、「ARDSで病院を受診する」「ARDSの治療ができる病院を探す」というよりは、元の病気の治療ができる病院を探すというのがより適切な考え方です。

中には、肺の病気以外が原因でARDSが起こることもあります。熱中症敗血症といった病気は肺だけの問題ではありませんが、結果的に肺にARDSを引き起こすことがあります。

受診すべき診療科については、元の病気次第ではありますが悩むような場合には、呼吸器内科となるでしょう。肺だけでなく全身の状態が悪いのであれば救急科に入院すること多いです。元の病気や診療科がどこであったとしても、ARDSの状態にあるということは入院の上で酸素吸入などの治療が必要な病状です。重症になるとICU(集中治療室)での治療や人工呼吸器が必要となります。

このように、ARDSは一つの病気というよりも、他の病気によって引き起こされた肺の状態のことです。ARDSそのものに対する治療では根本的な解決につながらないことが多いので、ARDSの治療をしつつ、ARDSを引き起こしたと考えられる病気の治療をしっかりやっていくことが重要です。

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