げんぱつせいあるどすてろんしょう
原発性アルドステロン症
高血圧のうち、腎臓の上にある副腎という臓器が原因で生じるもの。全高血圧症患者のうち、5-10%がこれに当てはまる。
15人の医師がチェック 112回の改訂 最終更新: 2021.05.14

原発性アルドステロン症とは?症状、原因、検査、治療など

原発性アルドステロン症はアルドステロンというホルモンの過剰分泌により血圧が高くなる病気です。血圧が高い人の3-10%に原発性アルドステロン症が隠れていると言われています。若いのに血圧が高い人、薬を飲んでも血圧が下がらない人は注意が必要です。治療としては薬物療法と手術があり、原発性アルドステロン症の原因、年齢、全身状態、持病の有無によって治療法が決定されます。

1. 原発性アルドステロン症の症状について

原発性アルドステロン症は以下のような症状があらわれる病気です。

  • 血圧が高い(高血圧症
  • 手足に力が入りにくい・疲れやすい
  • 尿量が多い

これらの症状でもっとも頻度が多いのは、血圧が高いことです。健康診断で高血圧を指摘され、精密検査をしたところ原発性アルドステロン症が見つかるといったことも珍しくありません。特に若いのに血圧が高い人、薬を飲んでも血圧が下がらない人は注意が必要です。症状について詳しくは「症状のページ」で説明しています。

2. 原発性アルドステロン症の原因について

原発性アルドステロン症はアルドステロンと呼ばれる血圧を上げるホルモンが過剰に作られることで起こります。アルドステロンは腎臓のすぐ上にある小さな臓器である副腎という場所で作られます。

原発性アルドステロン症:腎臓と副腎

原発性アルドステロン症の多くは以下の2つの原因により引き起こされます。

  • 副腎の細胞が増えすぎた状態(両側副腎過形成)
  • 副腎の良性のできもの(副腎腺腫)

両側副腎過形成、副腎腺腫のどちらが原因かによって治療法も異なるため、どちらが原因であるか見極めることは重要です。詳しくは「原因のページ」で説明しています。

3. 原発性アルドステロン症の検査について

原発性アルドステロン症では診断と原因の特定のために以下の検査を行います。

  • 問診
  • 血液検査
  • 負荷試験
  • CT検査
  • 副腎静脈サンプリング検査

問診では状態の確認や他の検査をするうえで必要な情報収集を行っていきます。血液検査や負荷試験ではアルドステロンの値を調べることで、原発性アルドステロン症の診断に役立てられます。CT検査、副腎静脈サンプリング検査では、原発性アルドステロン症の原因が両側副腎過形成と副腎腺腫のどちらであるかを判断するために行われます。

それぞれの検査がどのようなものであるか詳しくは「検査のページ」で説明しています。

4. 原発性アルドステロン症の治療について

原発性アルドステロン症の治療法には大きく薬物療法と手術の2つがあります。治療法は原発性アルドステロン症の原因が両側副腎過形成と副腎腺腫のどちらであるかによって異なります。

薬物療法

両側副腎過形成の人、副腎腺腫の人のうち手術を希望しない人・手術ができない人は薬物療法を行います。スピロノラクトン(主な商品名:アルダクトン®A)やエプレレノン(商品名:セララ®)などのアルドステロンの作用を抑える薬(アルドステロン拮抗薬)を使います。

手術

副腎腺腫の人は手術による治療を選択することができます。原発性アルドステロン症の原因となっている副腎腺腫を切除することで、完治させることもできます。手術は腹腔鏡で行われることが多いです。

薬物療法、手術の詳しい内容や、それぞれのメリット・デメリットについては「治療のページ」で説明しています。

5. 原発性アルドステロン症の薬は飲み続けなければいけないか

原発性アルドステロン症で薬物療法を選択した場合には、アルドステロン拮抗薬や血圧を下げる薬を一生涯、飲み続けなければなりません。薬を使って血圧が正常化した場合でも、中止すると血圧が再度上昇してしまうことが多いためです。

ただし、原発性アルドステロン症の中でも副腎腺腫の人は、手術による治療を受けることも可能で、この場合は約40%の人で高血圧治療薬が必要がなくなると言われています。

その他、原発性アルドステロン症の患者数や遺伝する可能性があるかなどについては、「疑問点のページ」で紹介しています。

【参考文献】

わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント