えんげしょうがい
嚥下障害
正常に食べ物や唾液を飲み込めない状態
13人の医師がチェック 116回の改訂 最終更新: 2022.02.28

嚥下障害の基礎知識

POINT 嚥下障害とは

嚥下とは水分や食物を口から食道・胃へ送り込む動作です。色々な原因でこの動作がうまくできなくなることを嚥下障害といいます。原因には通過障害(腫瘍や炎症などによる)、嚥下反射の低下(加齢や脳神経疾患などによる)、嚥下に関連する筋肉の機能低下などがあります。むせこみ、食事のつかえ、食事に時間がかかる、繰り返す発熱などが主な症状です。診断には水や唾液を飲んで、むせこみの有無を調べます。造影剤を飲みながらX線写真をとる嚥下造影検査や、鼻から細いカメラを入れて誤嚥の有無を確認する嚥下内視鏡検査なども行います。治療として、原因疾患の治療、嚥下訓練を行います。改善困難な場合は手術治療を検討します。健康な人でもむせこみはありますが、頻度が多い場合や、肺炎を繰り返す場合は医療機関に受診してください。

嚥下障害について

  • さまざまな原因により、正常に食べ物や唾液を飲み込めない状態
  • 大きく分けて2つの原因がある
    • 口・のど・食道いずれかの形の異常
    • 飲み込む機能の異常
      • 脳卒中パーキンソン病といった、神経が冒される病気では、特に嚥下障害が出現することが多い
      • 中枢神経抑制薬や抗コリン薬などの副作用により嚥下障害が起きることもある
  • 嚥下障害によって起こる問題点は以下のようなものがある
    • 誤嚥性肺炎誤嚥により起こる肺炎
    • 窒息(飲み込む力が弱くなりのどに詰まってしまうこと)
    • 低栄養・脱水(うまく飲み込めないことにより食事量が減り、栄養が摂れなかったり水分が不足する)
    • 食べる楽しみの喪失

嚥下障害の症状

  • 主な症状
    • 食べ物、飲み物を飲み込みづらい
      • 唾液もうまく飲み込めない場合がある
    • 食べたり、飲んだりすることでむせる(食物が胃ではなく肺の方に入りかけてしまう)
    • 飲み込むのに時間がかかる
    • 体重減少
    • 誤嚥を恐れて)水を飲みたがらなくなることによる脱水 など
  • 症状が悪化すると、誤嚥をして肺炎になってしまうこともある(誤嚥性肺炎
    • 食事をしていなくても、唾液や胃の中のものが逆流したりすることで起こる
  • 健康な人でも当然むせることはあり、全てのむせ込みが嚥下障害を意味するわけではない
    • 高齢者、度重なるむせ、声がかすれる、熱があるなどの症状が有る場合に医療機関への受診が勧められる

嚥下障害の検査・診断

  • 飲み込みの能力を調べる検査
    • 反復唾液嚥下テスト
      • 30秒で唾液を何回飲み込めるかを確認し、2回以下で嚥下機能低下疑い
    • 水飲みテスト
      • 少量の水を飲み込み、むせないかを検査
  • 確定診断に用いる検査
    • 嚥下造影検査
      • 造影剤入りの液体もしくは模擬食品を食べさせ、食べ始めから飲み込み終了までをレントゲン透視しながらビデオで記録する
    • 喉頭ファイバー
      • 飲み込んでいるときの、のどの状態を確認する
  • その他に喉に異常がないかを検査するために頚部CTなどの画像検査を行う場合もある

嚥下障害の治療法

  • 主な治療
    • リハビリテーション
      • 発声練習
      • 食事の練習
      • 飲み込むのに働く筋肉の力を強化する
      • 氷のかけらを使って飲み込みの練習
      • 冷たい水でしめらせた綿棒で口の中を刺激する(アイスマッサージ)
    • 口腔ケア
      • 口腔ケアを行い口の中を清潔に保つことが需要
      • 口の中を清潔に保つことで、誤嚥を起こしても肺炎になりにくくする
    • 内服
      • ACE阻害薬(降圧薬の一種)やカプサイシンを用いることがある
  • もともと重症の病気をもっていて寝たきり状態である場合など、状況によっては手術も選択肢に入る
    • 嚥下改善手術
    • 誤嚥防止手術
      • 声帯の動きが悪いことが原因であれば、声帯の位置を移動して固定することで誤嚥を防ぐ場合がある
  • とろみを付けた食事を摂ることで誤嚥を減らすようにする
    • 状態によって適切なとろみの度合いは変わる

嚥下障害のタグ

嚥下障害に関わるからだの部位