きょうまくえん
胸膜炎
肺を覆う膜(胸膜)に炎症が起きた状態の総称。原因は感染症、がん、膠原病など様々である
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最終更新: 2021.06.12
胸膜炎の基礎知識
POINT 胸膜炎とは
肋骨や筋肉で覆われている胸の壁(胸壁)の中に、左右それぞれ1つずつ肺はあります。肺は胸壁の中に裸で存在する訳ではなく、胸壁内側の表面に1枚の膜が、肺の表面にもう1枚の膜があります。それぞれを壁側胸膜、臓側胸膜と呼びます。この胸膜があることによって肺はスムーズに膨らんでしぼむことができ、また空気漏れを起こさずにいます。この胸膜に炎症が起きている状態が胸膜炎です。肺には痛みを感じる神経が乏しいですが、胸膜には神経が通っているため、胸膜炎では胸の痛みを感じることが多いです。胸膜炎の原因は菌やウイルスによるもの、癌によるもの、膠原病(こうげんびょう)という免疫に関連するもの、など様々であり原因によって治療は異なります。一般的には最も専門とする診療科は呼吸器内科です。
胸膜炎について
胸膜炎の症状
- 主な
症状 - 胸の痛み(特に大きく息を吸ったときに悪化する)
- 呼吸困難(
胸水 が肺の周りに溜まるため) - 発熱
- 咳
胸膜炎の検査・診断
- 画像検査:胸膜に
炎症 があることを画像で直接確認するのは難しいので、炎症に伴って滲み出てくる水分(胸水 )を確認する。画像検査で肺炎の有無を調べることもできる。胸部レントゲン (X線 )検査胸部CT検査 - 超音波(
エコー )検査
細菌検査 - 胸水に
細菌 や結核菌 が含まれているかを調べる 胸水を採取するために、超音波で胸水の位置を確認しつつ胸に針を刺す(胸腔 穿刺 )
- 胸水に
細胞診 - 胸水に
がん 細胞が含まれていないか、どのようなタイプの白血球 が多いかなどを調べる
- 胸水に
- 原因がどうしてもわからない場合は、
胸腔鏡 を使って胸の内部を直接観察して調べることがあるが、それでも診断が難しいケースも時折ある
胸膜炎の治療法
- 2つの治療を並行して行う
- 原因となっている病気の治療
胸水 が貯まらないようにする治療 根本的な解決にはなりにくいので、原因となる病気の治療を優先する
- 溜まった胸水が多ければ
ドレナージ (胸水を身体の外に出す)を行う胸腔 ドレーンという鉛筆~ボールペンくらいの太さのチューブを胸の表面から入れたままにしておき、溜まった胸水を身体の外に出す処置
- 原因に対する治療は、各疾患情報を参照
- 感染性の胸水が長期間に渡って存在すると膿胸となってしまい、根治するには手術が必要になることがある
癌 性胸膜炎で抗癌剤治療 が効かないケースなど、胸水が貯まる原因をコントロールすることができず、胸水のせいで息苦しさが酷い場合には、壁側胸膜と臓側胸膜を人工的にくっつける治療(胸膜癒着 術)を行うことがある