髄膜腫の基礎知識
POINT 髄膜腫とは
脳やその周りにある脳脊髄液を包む髄膜にできた腫瘍のことです。髄膜腫はほとんどが良性腫瘍であるので、転移をしたり周りの臓器に入り込んでいくことはありません。症状がない場合もあり、人間ドックで偶然見つかることもあります。髄膜腫が大きくなると周りの脳神経に影響を与えて頭痛や歩きづらさ、けいれんなどさまざまな症状が現れます。髄膜腫が疑われる場合には画像検査(CT検査やMRI検査など)や組織検査(腫瘍の一部を取り出して調べる検査)などが行なわれます。髄膜腫は特に症状がない場合は治療をせずに様子をみますが。症状が現れている場合やこれから高い確率で症状が現れる場合には手術や放射線治療などを行います。 髄膜腫は完全に取り切ることができれば再発することはかなり少ないと考えられています。髄膜腫が疑われる場合には脳神経外科で診療が行なわれます。
髄膜腫について
髄膜腫の症状
症状 がない状態で発見されることが多い- 大きくなって周りの脳や神経を圧迫することで症状が出る
- 小さくてもできる場所が悪ければ症状があらわれ、治療が必要となる
- 髄膜腫の症状は2つのタイプに分けられる
- 局所症状
頭蓋内圧 亢進症状
- 局所症状
- 髄膜腫の周りにある脳や神経が圧迫されることで出る症状
腫瘍 のできる場所によって、圧迫される部位も変わるため症状もさまざま- 手足を動かす部位にできれば
麻痺 が起きる - 目の神経の近くにできれば視力障害が起きる など
- 手足を動かす部位にできれば
- 代表的な症状
- 歩きづらさ
- しゃべりづらさ
- 見えづらさ
- けいれん
発作 - 物忘れ
- 認知症のような症状 など
- 頭蓋内圧亢進症状
- 髄膜腫が大きくなって頭蓋骨の中の圧力が高くなると起こる症状
- 代表的な症状
- 頭痛
- 嘔吐
髄膜腫の検査・診断
- 画像検査:髄膜腫の大きさや位置などを調べる
頭部CT 頭部MRI - 手術などの治療のために
頭部血管造影検査 を行う場合もある
- 組織検査
- 手術でとった
腫瘍 の一部を、組織の種類や悪性度 について、顕微鏡などを用いて調べる - 組織検査によって、最終的に髄膜腫であることが診断される
- 手術でとった
- 手術をしない場合は、時間を置くと腫瘍の大きさや形が変わらないか調べるために、手術をした後は、再発が無いか調べるために、定期的な画像検査を行う
髄膜腫の治療法
症状 がない場合や大きくならない場合は、様子をみることが多い- 症状がなくても、次第に大きくなってくるもの、これから症状を出しそうなものは治療を行うこともある
- 症状がある場合は治療する必要がある
- 治療法は手術と
放射線療法 である - 根治的な治療は手術
良性腫瘍 なので手術で完全に切り取ることができれば、再発の心配はない- 血管からたくさんの血液が流れ込んでいる
腫瘍 だと、手術中に出血が多くなってしまい、手術自体も難しい - そのため手術前に
カテーテル治療 で、コイルや液体塞栓 物質を利用して、腫瘍に流れ込む血管を詰めることもある
- 放射線療法は瘍が小さい場合(目安は3cm)に可能である
- 脳の奥に位置している、あるいは高齢だったり、他の全身の病気が理由で手術が難しい場合に、放射線療法が行われる
- 手術で腫瘍が残った場合、再発した時に、手術後放射線療法を行うこともある
- 基本的に手術が治療の
第一選択 肢- 難しい場所にできて取りきれない場合などは、カテーテル治療や
放射線治療 (ガンマナイフ、サイバーナイフなど)を合わせて行うこともある
- 難しい場所にできて取りきれない場合などは、カテーテル治療や
髄膜腫の経過と病院探しのポイント
髄膜腫が心配な方
髄膜腫の症状は、場所によって異なります。頭痛や吐き気、ぼーっとする、性格や行動の異常、けいれん、手足の動きにくさ、言葉の出づらさなど様々な症状が出ます。
なかなかご自身で髄膜腫を疑うことはないと思います。上記の症状のいずれかが出現して困った時に、内科、総合内科、総合診療科、神経内科や脳神経外科のクリニックや病院を最初に受診して、頭のCTやMRIを撮った時に脳腫瘍を指摘され、髄膜腫を疑われることが実際には多いです。
頭のCTやMRIを撮って髄膜腫を疑われた場合には、一定規模以上の病院での入院が必要となるでしょう。大学病院でしたら脳腫瘍の方は多く入院していますし、他にも脳腫瘍の多い一般病院もあります。webで探したり、最初に受診したクリニック、病院の医師にそういった病院を紹介もらうのが良いでしょう。
髄膜腫は年齢や性別、CTやMRIの画像所見、脳の中での部位から予測できますが、最終的には手術で腫瘍の組織を採取して、病理検査を行うことで診断が確定します。脳の奥にあって治療が難しそうな場合、高度な脳神経外科の治療を行っている病院をぜひ紹介してもらってください。
髄膜腫でお困りの方
髄膜腫の根治的な治療は手術で取りきることです。手術前にカテーテル治療を行うことで、手術中の出血を減らし、手術をしやすくすることもあります。
腫瘍が小さければ(目安は3cm以内)であれば、放射線療法も可能となってきます。脳の奥に位置している、あるいは高齢だったり、他の全身の病気が理由で手術が難しい場合に、放射線療法が行われます。また手術で腫瘍が残った場合や再発した時に、手術後放射線療法を行うこともあります。
髄膜腫は出来る部位や大きさによって手術、治療の難易度が全く異なります。脳の表面にあって比較的簡単に手術できる場合、一般的な病院の脳神経外科でも手術ができます。治療の効果や合併症も、差が出にくいです。一方で脳の奥にあったり、重要な神経を圧迫していたり巻き込んでいる場合、手術が行える病院は大学病院と一部の脳神経外科が強い病院に限られています。
放射線療法を行う場合は、そのような設備がある病院に行きましょう。一般的なリニアックという機械を使った治療であれば、多くの病院で行われています。ガンマナイフやサイバーナイフを行う場合、そのような施設は日本でもそれぞれ数十施設しかありません。かかっている脳神経外科医に紹介してもらうのが良いでしょう。