きゅうせいちゅうすいえん
急性虫垂炎
一般的に盲腸と言われている病気。右の下腹部にある虫垂に細菌が感染した状態
18人の医師がチェック 187回の改訂 最終更新: 2025.04.02

急性虫垂炎(盲腸)の注意点:初期症状、治療後の過ごし方など

急性虫垂炎は盲腸(もうちょう)の呼び方でよく知られている病気の一つです。子どもから大人まで誰もが発症する可能性のある病気でもあります。急性虫垂炎で知っておくと良い知識やよくある疑問についてまとめました。

1. 急性虫垂炎かもしれない症状とは?

図:急性虫垂炎のイメージイラスト。盲腸と虫垂は右下腹部にある。

右の下腹部が痛くなって「急性虫垂炎かも?」と心配になった経験をもつ人はいるのではないでしょうか?

急性虫垂炎の初期症状はみぞおちや臍(へそ)の辺りの持続的な腹痛です。みぞおちのあたりを心窩部(しんかぶ)と言います。心窩部の痛みを心窩部痛と言います。急性虫垂炎がひどくなると徐々に痛みが心窩部から右の下腹に移動していきます。

急性虫垂炎の症状では発熱もよくあらわれる症状ですが、初期は微熱のことが多いです。また倦怠感も初期の症状としてよく現れます。

腹痛の後には嘔吐することもありますが、数時間で収まることが多いです。

急性虫垂炎の症状は他の病気でもあらわれることがあるものが多いです。しかしながら、その症状には前述のように特徴があります。ここで説明した症状について思い当たるところがある場合は医療機関の受診を検討してみてください。

2. 子どもの急性虫垂炎には注意が必要

急性虫垂炎は子どもでもなります。

子どもの急性虫垂炎の症状は大人のようにはっきりとしないことが多いです。また、子どもは症状を正確に伝えられなかったり怖がって診察させてくれないことがあります。このため子どもの急性虫垂炎は発見が遅れることが多く重症化しやすいことが知られています。

急性虫垂炎は早期に治療を開始することが大事です。どうすれば子どもの急性虫垂炎を発見できるかを考えていきます。

急性虫垂炎の主な初期症状は以下のものです。

  • 臍の周りやみぞおち辺りの腹痛
  • 微熱
  • 食欲不振
  • 吐き気・嘔吐(おうと)

急性虫垂炎の初期症状は他の病気の症状と重なります。早い時点での診断は難しいこともあります。さらに、子どもの場合はこれらの初期症状がない場合も珍しくはありません。

急性虫垂炎の症状は時間とともに変化する特徴があります。症状の変化に注目することも大事です。

急性虫垂炎が進行すると以下の症状がでます。

  • 腹痛が右の下腹部に移動 
  • 高熱

腹痛が長く続くときには「痛い場所が変わった?」や「痛い場所を指差して」などの質問をすることで具体的に痛みの場所を知ることができます。それでも痛みの場所がはっきりしないときにはお腹を指で触りながら表情を観察することも痛みの部位を知ることに有効なことがあります。

腹痛の特徴が変わって体温の上昇があらわれると急性虫垂炎の心配が強くなります。医療機関の受診を検討してもよいと思います。

医療機関を受診しても原因がはっきりしないこともあります。仮に急性虫垂炎であったとしても子どもの虫垂炎は診断が難しい場合があるからです。したがって、一度受診した後も自宅で症状などを注意深く観察することが大事です。どのような症状がでたら再受診の必要があるかなどをなるべく詳しく聞いておいてください。

3. 急性虫垂炎は早期の治療が大事!受診をためらわないで!

急性虫垂炎は時間とともに症状が重くなります。このためにできるだけ早期に受診をすることが大事です。早めに受診をすれば抗生物質による治療で入院しないで完治することも可能な場合があります。

急性虫垂炎の初期の症状は腹痛や微熱、吐き気など他の病気でもよくあらわれる症状ばかりです。急性虫垂炎の場合は時間が経過するとともに痛む場所が右の下腹部に移り、微熱から高い熱になります。このような症状がでている場合は急性虫垂炎かもしれませんので、受診をしてください。

急性虫垂炎は検査をしなければ診断できません。かつて救急医療が現代ほど発達していなかった時代には、急性虫垂炎で命を落とす人は珍しくはありませんでした。急性虫垂炎で命を落とすことは今となってはまれですが、早期に治療をしたほうが治療の経過もよいと考えられます。

4. 急性虫垂炎が心配な時は何科を受診すればいい?

右下腹部が痛くなり調べてみると急性虫垂炎の症状と似ていることがわかりました。こんなときは何科を受診すればいいのでしょうか?

急性虫垂炎などの腸の病気を扱うのは消化器内科や消化器外科、一般外科などです。平日の昼間などはこれらの診療科を受診してください。子どもの場合はまず小児科を受診することが望ましいです。

虫垂炎は徐々にお腹が痛くなる病気です。昼間は様子をみていて夜になっても腹痛が改善しないので夜に受診を希望される人もいます。夜間は特定の診療科を受診することが難しくなります。夜などは救急外来などを受診すれば検査などをして調べてもらえます。

急性虫垂炎は時間の経過とともに病状が重くなります。医療機関を早めに受診することが大事です。

5. 急性虫垂炎は自然に治癒する?

急性虫垂炎は時間とともに症状が重くなる病気です。自然治癒することはありません。

右下腹部が痛んで「急性虫垂炎かな?」と頭に浮かんだら、自然治癒を期待して我慢するのは得策ではありません。早期に治療を始められれば手術を回避できる可能性も広がります。急性虫垂炎かなと頭をよぎったときにはすみやかに医療機関を受診することをお勧めします。

6. 急性虫垂炎の手術後はいつから運動していいの?

退院後の最初の外来で傷口に問題がないと判断されれば手術前と同じように運動しても問題はありません。いきなり手術の前と同じように動くよりは段階的に運動の強さを上げて行くことをお勧めします。というのも、入院生活や自宅療養の後は、自分が思っているより筋力や体力が落ちていることが多いからです。運動をすると傷が開くのではないかと心配になる人もいると思いますが、1週間程度で傷はしっかりと閉じるので心配することはありません。

逆に、退院後に必要以上に安静を保ち過ぎることもあまりよくありません。急性虫垂炎の手術の後には腸閉塞(ちょうへいそく)になる人がいます。腸閉塞は腸の動きが止まる病気です。腹部の手術の後には一定の確率でおきる合併症です。腸閉塞を予防するには腸の動きを活発にするとよいと考えられます。適度に運動をすることで腸の動きはよくなります。

7. 急性虫垂炎の手術後の食事で気をつけることは?

急性虫垂炎の手術後は腸に負担をかけない食事を心がけると良いです。腹部の手術の後には一定の割合の人で腸閉塞が起きます。腸閉塞は腸の動きが止まってしまう病気です。手術の影響で腸と腸に癒着(ゆちゃく)が起きることなどが腸閉塞の原因です。腸閉塞を予防するにはできるだけ腸に負担のかからない食事がよいと考えられます。

腸に負担のかからない食事とは脂分が少なく消化の良い食事のことです。暴飲暴食は避けてください。急性虫垂炎の手術後に腸閉塞になる人は多くはありませんが、手術後しばらくは食事や生活に気を付けてみてください。

8. 急性虫垂炎を薬で散らした後に注意をすることは?

急性虫垂炎を抗生物質で治療することを「虫垂炎を散らす」ということがあります。手術のように虫垂を切り取るわけではないので、身体に虫垂は残ったままです。そのため、急性虫垂炎が再発することがあります。再発しないためにはどんなことに注意をすればいいのでしょうか。

急性虫垂炎を薬で散らした後には食事などに気を配りできるだけ腸に負担をかけないようにしましょう。

急性虫垂炎を抗生物質で治療するときには同時に食事を一度中止することがあります。これを腸管安静といいます。虫垂は腸の一部なので炎症が起きているときには食事をやめて腸管を休めることが治療になります。急性虫垂炎になった場合は腸をとにかく休めてあげることが大事です。これは薬による治療が終わった後にも当てはまります。再発する可能性がある虫垂が身体の中に残っているのであれば、できるだけ腸に負担をかけないように工夫してみてください。

食事の量は腹八分目がお勧めです。少なくとも誰がみても暴飲暴食というような食生活を続けることはお勧めしません。また、便秘にも気を付けたほうがいいと思います。便秘がちになると腸への負担は大きくなります。便秘をさけるには規則正しい生活や適度な運動、適度な食物線維の摂取などを意識してください。

参照:Arch Surg.1983;118:868-870