きゅうせいちゅうすいえん
急性虫垂炎
一般的に盲腸と言われている病気。右の下腹部にある虫垂に細菌が感染した状態
18人の医師がチェック 155回の改訂 最終更新: 2023.02.13

急性虫垂炎(盲腸・アッペ)の注意点:初期症状、治療後の過ごし方など

急性虫垂炎は盲腸(もうちょう)の名前で誰もが知る病気の一つです。誰もが発症する可能性のある急性虫垂炎を疑う症状から急性虫垂炎になった後に注意をすることなど日常生活での注意点についてまとめました。

1. 急性虫垂炎かもしれない?症状や受診する診療科

図:急性虫垂炎のイメージイラスト。盲腸と虫垂は右下腹部にある。

右の下腹部が痛くなって「急性虫垂炎かも?」と心配になった経験をもつ人はいるのではないでしょうか?ここでは急性虫垂炎の初期症状や受診する診療科などについて解説します。

急性虫垂炎を疑う症状は?

急性虫垂炎の初期症状はみぞおちや臍(へそ)の辺りの持続的な腹痛です。みぞおちのあたりを心窩部(しんかぶ)と言います。心窩部の痛みを心窩部痛と言います。急性虫垂炎がひどくなると徐々に痛みが心窩部から右の下腹に移動していきます。

急性虫垂炎の症状では発熱もよく現れる症状ですが、初期は微熱のことが多いです。また倦怠感も初期の症状としてよく現れます。

腹痛の後には嘔吐が現れることがありますが、嘔吐は数時間で収まることが多いです。急性虫垂炎の症状は他の病気でも現れることがあるものが多いです。しかしながらその症状には特徴があります。ここで説明した症状について思い当たるところがある場合は医療機関の受診を検討してみてください。

子供の急性虫垂炎には注意が必要

急性虫垂炎は子供でもなります。

子供(小児)の急性虫垂炎の症状は大人のようにはっきりとしないことも多いです。また小児は症状を正確に伝えられなかったり怖がって診察させてくれないことがあります。このため子供の急性虫垂炎は発見が遅れることが多く重症化しやすいことが知られています。

急性虫垂炎は早期に治療を開始することが大事です。どうすれば子供の急性虫垂炎を発見できるかを考えていきます。

急性虫垂炎の主な初期症状は以下のものです。

  • 臍の周りやみぞおち辺りの腹痛
  • 微熱
  • 食欲不振
  • 吐き気・嘔吐(おうと)

急性虫垂炎の初期症状は他の病気の症状と重なります。早い時点での診断は難しいこともあります。また小児の場合はこれらの初期症状がない場合も珍しくはありません。

急性虫垂炎の症状は時間とともに変化する特徴があります。症状の変化に注目することも大事です。

急性虫垂炎が進行すると以下の症状がでます。

  • 腹痛が右の下腹部に移動 
  • 高熱

腹痛が長く続くときには「痛い場所が変わった?」や「痛い場所を指差して」などの質問をすることで具体的に痛みの場所を知ることができます。それでも痛みの場所がはっきりしないときにはお腹を指で触りながら表情を観察することも痛みの部位を知ることに有効なことがあります。

腹痛の特徴が変わって体温の上昇が現れると急性虫垂炎の心配が強くなります。医療機関の受診を検討してもよいと思います。

医療機関を受診しても原因がはっきりしないこともあります。仮に急性虫垂炎であったとしても小児の虫垂炎は診断が難しい場合があります。したがって一度受診した後も自宅で症状などを注意深く観察することが大事です。また診察を受けた後もどのような症状がでたら再受診の必要があるかなどをなるべく詳しく聞いておくことが大事です。

急性虫垂炎は早期の治療が大事!受診をためらわないで!

急性虫垂炎は時間とともに症状が重くなります。このためにできるだけ早期に受診をすることが大事です。早めに受診をすれば抗生物質による治療で入院しないで完治することも可能な場合があります。

急性虫垂炎の初期の症状は腹痛や微熱、吐き気など他の病気でもよく現れる症状ばかりです。急性虫垂炎の場合は時間が経過するとともに痛む場所が右の下腹部に移り、微熱から高い熱になります。このような症状が現れている場合は急性虫垂炎を発症していることを考えなければなりません。急性虫垂炎は検査をしなければ診断することはできないです。かつて救急医療が現代ほど発達していなかった時代には、急性虫垂炎で命を落とす人は珍しくはありませんでした。急性虫垂炎で命を落とすことは今となっては稀ですが早期に治療をした方が治療の経過もよくなることが考えられます。

急性虫垂炎が心配な時は何科を受診すればいい?

右下腹部が痛くなり調べてみると急性虫垂炎の症状と似ていることがわかりました。こんなときは何科を受診すればいいのでしょうか?

急性虫垂炎などの腸の病気を扱うのは消化器内科や消化器外科、一般外科などです。平日の昼間などはこれらの診療科を受診してください。子供場合は先ず小児科を受診することが望ましいです。

虫垂炎は徐々にお腹が痛くなる病気です。昼間は様子をみていて夜になっても腹痛が改善しないので夜に受診を希望される人もいます。夜間は特定の診療科を受診することが難しくなります。夜などは救急外来などを受診すれば検査などをして調べてもらえます。

急性虫垂炎は時間の経過とともに病状が重くなります。医療機関を早めに受診することが大事です。

急性虫垂炎は自然に治癒する?

急性虫垂炎は時間とともに症状が重くなる病気です。自然治癒することはありません。

右下腹部が痛んで「急性虫垂炎かな?」と頭に浮かんだら、自然治癒を期待して我慢するのは得策ではありません。

急性虫垂炎は発症してから時間の経過とともに症状が悪化します。早期に治療を開始することで手術を回避できたりする可能性も広がります。

急性虫垂炎かなと頭をよぎったときにはすみやかに医療機関を受診することが大事です。

2. 急性虫垂炎の治療後の日常生活での注意点は?手術後、抗生物質による治療後

急性虫垂炎を治療した後には日常生活でどのようなことに注意が必要なのでしょうか。手術後と抗生物質による治療後の注意点などについて解説します。

急性虫垂炎の手術後はいつから運動していいの?

退院後の最初の外来で傷口に問題がないと判断されれば手術前と同じように運動しても問題はありません。いきなり手術の前と同じように動くよりは段階的に運動の強さを上げて行くことをお勧めします。というのも入院生活や自宅療養では自分が思っているより筋力や体力が落ちていることが多いからです。運動をすると傷が開くのではないかと心配になる人もいると思いますが、1週間程度で傷はしっかりと閉じるので心配することはありません。

逆に、退院後に必要以上に安静を保ち過ぎることもあまりよくありません。急性虫垂炎の手術の後には腸閉塞(ちょうへいそく)になる人がいます。腸閉塞は腸の動きが止まる病気です。腹部の手術の後には一定の確率でおきる合併症です。腸閉塞を予防するには腸の動きを活発にするとよいと考えられます。適度に運動をすることで腸の動きはよくなります。

急性虫垂炎の手術後の食事で気をつけることは?

急性虫垂炎の手術後の食生活では腸に負担をかけない食事を心がけることが大事です。腹部の手術の後には一定の割合の人で腸閉塞が起きます。腸閉塞は腸の動きが止まってしまう病気です。手術の影響で腸と腸に癒着(ゆちゃく)が起きることなどが腸閉塞の原因です。腸閉塞を予防するにはできるだけ腸に負担のかからない食事がよいと考えられます。

腸に負担のかからない食事とは、暴飲暴食を避けることや、便通がよくなるように食物繊維の多い食品を組み込むことなどです。

急性虫垂炎の手術後に腸閉塞になる人は多くはありませんが、手術後しばらくは食事や生活に気を付けたほうがいいでしょう。

急性虫垂炎を薬で散らした後に注意をすることは?

急性虫垂炎を抗生物質で治療することを「虫垂炎を散らす」ということがあります。手術と違って虫垂を切り取る訳ではないので体に虫垂は残っています。虫垂が体に残っているので急性虫垂炎が再発することがあります。再発しないためにはどんなことに注意をすればいいのでしょうか。

急性虫垂炎を薬で散らした後には食事などに気を配りできるだけ腸に負担をかけないようにしましょう。

急性虫垂炎を抗生物質で治療するときには同時に食事を一度中止することがあります。これを腸管安静といいます。虫垂は腸の一部なので炎症が起きているときには食事をやめて腸管を休めることが治療になります。急性虫垂炎になった場合は腸をとにかく休めてあげることが大事です。これは薬による治療が終わった後にも当てはまります。再発する可能性がある虫垂が体の中に残っているのであればできるだけ腸に負担をかけないように工夫してみてください。

食事の量は腹八分目がお勧めです。少なくとも誰がみても暴飲暴食というような食生活を続けることはお勧めしません。また便秘にも気を付けたほうがいいと思います。便秘がちになると腸への負担は大きくなります。便秘をさけるには規則正しい生活や適度な運動、食物線維の摂取などを意識してください。

参照:Arch Surg.1983;118:868-870