へんずつう
片頭痛(偏頭痛)
若い人から中年の人に多い頭痛の一種で「偏頭痛」と同じ。頭の中の血管が広がることで痛みが起こる
26人の医師がチェック 197回の改訂 最終更新: 2024.10.24

片頭痛(偏頭痛)の原因について

片頭痛の多くは特定の誘因によって引き起こされます。誘因にはストレス、不規則な睡眠、疲れ、食事、女性ホルモン、天候などがあります。誘因を避ける生活を心掛けることで、片頭痛発作を減らすことができます。ここでは片頭痛の痛みが起こるメカニズムや、片頭痛の誘因について説明します。

1. 片頭痛が起こる理由:痛みのメカニズム

片頭痛が起こるメカニズムは未だはっきりはしていません。片頭痛は頭痛に伴って視覚や聴覚が過敏になるなどのいろいろな症状が起こるため、それら全てを説明できる仕組みを解明中です。ここでは現在最も有力と考えられているメカニズムについて説明します。

片頭痛は脳の血管が拡張して起こる?

痛みの原因はいまだにはっきりと解明はされていませんが、以前言われていたような脳の血管が拡張することだけが痛みの原因ではないと考えられています。

現在は、三叉神経血管説が有力と考えられています。三叉神経は頭部の感覚を担当する神経です。何らかの原因によって、脳の神経細胞の活動が変化して脳の血管周囲にある三叉神経から「痛みを引き起こす炎症物質」が分泌されます。炎症物質が周囲の神経や血管を刺激すると、血管が拡張したり、痛みを感じやすくなったりします。この、血管の拡張や痛みといった刺激が三叉神経から脳に伝わって、頭痛や吐き気、嘔吐を引き起こされるのではないかと考えられています。

頭痛のきっかけになる脳の神経細胞の活動変化は、視覚や聴覚を担当する脳の部位で起こることが多いため、片頭痛に特徴的な視覚の予兆や前兆症状を引き起こすのではないかと考えられています。

この脳の神経細胞の活動変化のしやすさは、遺伝、女性ホルモン、薬物、食事、天候、ストレスなどの影響を受けていると考えられています。しかし、はっきりとした原因はわかっていません。

片頭痛はセロトニンが原因?

片頭痛に効果のあるトリプタン製剤は、セロトニン受容体に働く薬であることから、セロトニンが片頭痛発作に重要な役割があるのではないかと考えられています。

セロトニンは、ストレスがあると多くなるドパミンやノルアドレナリンに対抗するホルモンで、血管を収縮させる作用があります。

ストレスが加わってドパミンやノルアドレナリンが増加すると、対抗するためにセロトニンが大量に放出されて一時的に脳の血管が収縮します。ところがセロトニンは脳内に少量しかないため大量放出によって枯渇し、時間とともにセロトニンが分解されて減少すると、今度は反動で血管が急激に広がり、血管周囲の神経が刺激されて頭痛を起こすのではないかとも言われています。詳しい仕組みは研究中です。

2. 片頭痛の誘因には何があるか

片頭痛の約75%の人は特定の誘因によって頭痛が引き起こされます。頭痛を誘発したり、悪化させたりする要因を避けて日常生活を送ることで、片頭痛の発作予防につながります。発作の誘因がわからない場合は「頭痛ダイアリー」を使うと便利です。頭痛の記録をすることで、どんなときに頭痛がおきているかを把握することができます。頭痛ダイアリーは日本頭痛学会のホームページで手に入れることができます。

精神的な要因:ストレス

ストレスは片頭痛の大きな誘因となります。片頭痛の人のうち約6割の人がストレスがある時に頭痛が起こると感じ、25%の人がストレスから解放されたときに頭痛が起こると感じています。

休日になると頭痛が多くなるのは、平日の緊張が急に解ける影響もあります。毎日の生活でストレスを溜め込まないように、自分に合ったリラックス方法をいくつかもっておくことも有用です。

不規則な睡眠:寝不足・過剰な睡眠

片頭痛の人の約3割の人が睡眠不足、約25%の人が過剰な睡眠をとったときに頭痛が起こると感じています。休日にいつもより長く睡眠をとると、片頭痛が起こることがあります。また、朝遅くまで寝ていると空腹になって血糖値が下がり、さらに片頭痛を誘発する原因になります。休日も平日と同じような規則的な生活を送ることは片頭痛発作を減らす一つの方法です。

身体的な要因:疲れ

身体的な疲れがあると、精神的なストレスも大きくなり片頭痛の誘因になります。毎日の生活のなかで疲労を完全にとることは難しいかもしれませんが、疲労が重なると取れにくくなります。疲労を溜め込まないように息抜き方法をみつけるようにしてみてください。

天候の変化:台風・梅雨・気圧の変化・温度差

台風や梅雨などの低気圧の時は片頭痛が起こりやすくなることがあります。気圧の急激な変動が片頭痛を誘発しているのではないかと考えられています。台風や梅雨などは避けることができません。天気予報を確認して頭痛薬を持ち歩くなど、頭痛にすぐに対処できるようにしておいてください。

温度差も片頭痛の誘因になると考えられています。体が温まった時、例えば夏に冷房のきいた部屋から外へ出た時や、寒い冬に暖かい部屋に入った時、熱いお風呂に入った時などに、片頭痛が起こりやすいです。温度差を緩和するために、冷房のきいた屋内では羽織ものを着るなど温度調整のしやすい服装を心掛けてみてください。

環境の影響:旅行・匂い・強い光

環境の変化も頭痛の誘因になります。

例えば旅行もその一つです。旅行は楽しいものですが、普段と違う環境に身を置くことで疲れやすくなったり、あるいは日常のストレスが一気に解放されたり、不規則な生活になったりすることがあります。このようなさまざまな誘因が重なると片頭痛を引き起こすことがあります。片頭痛を引き起こさないためには、体調を整えて旅行にいくとともに、片頭痛の誘因がわかっていれば避けるようにしてみてください。

周囲のにおいの影響で片頭痛が起こることがあります。人ごみ、化粧品売り場、喫煙所など、においが強いところは片頭痛が起こりやすいため気をつけてください。人の多いところや匂いが強いところへの外出は避けるか、頭痛薬を持ち歩く、体調が悪くなったらすぐ帰宅するなどで対応してみてください。

強い光も片頭痛を誘発することがあります。コンサート会場や映画館などの強い照明、まぶしい日差し、夏の海などの炎天下も誘発因子になります。天気のいい日はサングラスをつけて外出するなど心掛けてみてください。

食事の影響:空腹・お酒・チーズ・チョコレート

片頭痛はお酒を飲んだ時によく起こると聞いたことがあるかもしれません。片頭痛は食事の影響も受けます。食事だけでなく空腹も誘因の一つになります。血糖値の低下が片頭痛の誘因になるため、規則正しく食事をとるようにしてください。

アルコールのなかでも特に赤ワインは発作の誘発、増悪因子として有名です。とはいえ片頭痛の人の全員が赤ワインの影響を受けるわけではありません。赤ワインに含まれている成分のうち、痛みに関連するヒスタミン、血管拡張作用のあるアルコールやポリフェノールが痛みを誘発する原因ではないかと考えられています。

その他に片頭痛の誘因として知られている食品は次の通りです。

  • 亜硝酸化合物が含まれるもの
    • ベーコン
    • ソーセージ  など
  • グルタミン酸ナトリウムが含まれるもの
    • 調味料
    • ファーストフード
    • スナック菓子
    • 冷凍食品  など
  • チアミンが含まれるもの
    • チョコレート
    • ココア
    • チーズ  など
  • 柑橘類
    • みかん
    • グレープフルーツ  など

防腐剤として使われている亜硝酸化合物が含まれるベーコンやソーセージなども誘発の原因になります。また、調味料などに含まれるグルタミン酸ナトリウムや、チアミンなどのアミンを含む食物も誘発因子として知られています。

これらの食物が実際に片頭痛発作を誘発するかは個人差があります。さらに、いつも同じ食品で片頭痛が起こるとも限りません。食べた時の状況や、いくつかの誘因が重なった場合に片頭痛発作が起きるのではないかと考えられています。ですので、これらの食品についてあまり神経質に制限しないでバランスの良い食事を心掛けてください。さらに「頭痛ダイアリー」などを使って誘因となる食べ物がわかれば片頭痛発作を避けることができるため、ぜひ活用してみてください。

女性ホルモンの影響:月経(生理)前・排卵期・産後

女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量の変動によっても片頭痛が起こります。月経開始の2日前から月経3日目までの期間や排卵期にはエストロゲンの量が変動するため、頭痛が起こりやすくなります。月経に関連した片頭痛は月経時頭痛と呼ばれます。月経時頭痛はそれ以外の片頭痛より頭痛がひどく、持続時間が長いことが特徴です。

月経開始2日前から月経3日目までに頭痛発作があって、月経3回のうち2回以上で頭痛が起こる場合には「純粋月経時片頭痛」と呼ばれます。この時期以外にも頭痛が起こる場合には「月経関連片頭痛」と呼ばれます。いずれも片頭痛と同じように治療が行われます。

妊娠中はエストロゲンの変動がないため片頭痛の発作が一時的に起こらなくなります。一般的には妊娠した人の60-80%の人の片頭痛が改善しますが、出産後1ヶ月以内に再び片頭痛が起こるようになります。

女性ホルモンの影響で起こる片頭痛は、閉経後は改善することが知られていますが、これはエストロゲンの変動がなくなるためと考えられます。

【参考文献】

「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」

Kelman L. The triggers or precipitants of the acute migraine attack. Cephalalgia. 2007 May ; 27(5) : 394-402.

Robbins L. Precipitating factors in migraine: a retrospective review of 494 patients.Headache. 1994 Apr;34(4):214-6.