へんずつう
片頭痛(偏頭痛)
若い人から中年の人に多い頭痛の一種で「偏頭痛」と同じ。頭の中の血管が広がることで痛みが起こる
26人の医師がチェック 195回の改訂 最終更新: 2023.08.24

片頭痛(偏頭痛)の症状について

片頭痛の典型的な症状では、頭痛の前に目の前がチカチカ・キラキラするような前兆の症状が起こり、その後ズキズキするような頭痛が片側のこめかみや目の周囲に起こります。頭痛に伴って気持ち悪さや嘔吐、光や音、匂いが気になるような症状が起こります。片頭痛発作の経過や症状について説明します。

1. 片頭痛発作の経過:予兆期から回復期まで

片頭痛では、突然頭痛が襲ってくるわけではなく、前兆や予兆とよばれる症状があることが多いです。片頭痛の1回の頭痛発作は次の1から4ような経過をたどります。

  1. 予兆期
  2. 前兆期
  3. 頭痛期
  4. 回復期

それぞれの期について詳しく説明します。

片頭痛の発作が起こる24-48時間前に予兆症状が出る予兆期があります。予兆期では個人差がありますが、疲れやすい、あくびがでる、食欲が増すなどの症状が起こります。

前兆期は頭痛発作が起こる直前の時期を指します。前兆期は5分から60分続き、目の前がチカチカしたりキラキラしたりする症状や皮膚がチクチクする症状が出ます。前兆症状は頭痛と同時に起こることもあります。前兆期がおさまった後に頭痛が起き、頭痛期に移行します。頭痛期は4時間から72時間続き、その後、痛みが徐々におさまってきて頭痛がなくなり回復します(回復期)。

片頭痛発作時には視覚、聴覚、嗅覚が過敏になったり、食欲と睡眠に関係した症状が起こったりします。過敏症状は主に頭痛期に起こり、いつもより光がまぶしく感じたり、音が響いて聞こえたり、匂いが不快に感じたりします。また食欲に関しては、予兆期には食欲が増しますが、頭痛期には食欲が減って気持ち悪くなることが多く、なかには吐くこともあります。睡眠に関しては、予兆期には疲れやすくなってあくびが増え、頭痛期には眠気も感じるようになります。頭痛が弱まってくると眠ってしまうことがあり、頭痛がおさまって回復した後も疲労感が残ります。

2. 片頭痛の発作はどのくらいの時間続くのか

片頭痛の1回の発作は4時間から72時間で、3日以上は続かないと言われています。

前兆のある片頭痛の場合には、頭痛の発作の前に5分から60分続く前兆が起こります。前兆症状とは、目の前がチカチカしたり、キラキラしたり、皮膚がチクチクしたりする症状です。前兆がおさまってから60分以内に頭痛発作が起こると言われています。

3. 片頭痛の予兆の症状とは

片頭痛の発作が起こる24時間から48時間前に、「予兆」とよばれる症状が起こることがあります。「予兆」の症状は片頭痛に特徴的な「前兆」の症状のもっと前に起こります。具体的には次のような症状です。

  • 食欲が増す
  • あくびが増える
  • 疲れる
  • 集中できない
  • 気分が落ち込む
  • 首が硬くなる
  • いらいらしやすくなる
  • 焦りやすくなる

これらの予兆は片頭痛の発作よりだいぶ前に起こりますし、症状自体もあまりはっきりとしないため、自覚していないこともあります。片頭痛がある人で今まで「予兆」を意識してこなかった人は、頭痛発作の前に上記のような症状が起きているかチェックしてみるとよいかもしれません。

この「予兆」の症状は、目の前がチカチカ・キラキラしたり、皮膚がチクチクしたりする「前兆」の症状とは区別されます。

4. 片頭痛の前兆の症状とは

片頭痛のはじまる直前もしくは同時に、「前兆」とよばれる独特の症状が現れることがあります。通常は5分から20分にわたり徐々に強くなって、60分以内に治まります。前兆は医療機関を受診する片頭痛の人のうち20%の人にみられます。

片頭痛の典型的な前兆でもっとも多いのは目に起こる症状で、目の前がチカチカ・キラキラする感じがします。次に多いのが皮膚に起こる感覚症状で、その次が話にくさなどの言語症状です。稀ですが、手足が動かしにくくなることや、めまいや耳鳴りなどの症状も起こります。

どの症状が起こるかは人によって異なりますが、ほとんどの人はいつも同じ前兆の症状が起こります。

前兆の症状についてさらに詳しく説明します。

目の前がチカチカ・キラキラする:閃輝暗点(せんきあんてん)

目の症状は片頭痛の前兆にもっとも多い症状です。視野のなかにチカチカ・キラキラする点や線、ギザギザしたガラスやオーロラのようなものが見えたりします。この光が徐々に大きくなっていきます。このような視界に起こる前兆を閃輝暗点(せんきあんてん)とよびます。人によっては、眼の前が真っ暗になったり視野の一部が黒く欠けたりすることもあります。

皮膚がチクチクする:感覚性前兆

視覚に次いで多い前兆の症状は、チクチクするような皮膚の感覚の症状です。体や顔の一部がチクチクしはじめて、それが徐々に広がっていきます。逆に体や顔の感覚が鈍くなっていくこともあります。

言葉がうまく出ない:失語性言語障害

目や皮膚の前兆よりさらに割合は少ないですが、一時的に言葉がうまく出にくくなったり、しゃべりにくくなtたりする症状が出る人もいます。いずれも一時的な症状で60分以内におさまります。

その他の前兆:手足の脱力、めまい、耳鳴り

目や皮膚の前兆に比べると珍しいのですが、手足に力が入りにくくなる症状が起こる人もいます。その他にもめまい、耳鳴り、難聴複視(ものが二重に見える)、意識がもうろうとするなどの前兆もあります。多くの前兆は60分程度でなくなります。

これらその他の前兆は、典型的前兆とは区別して考えられています。片頭痛のなかでも片麻痺性片頭痛(へんまひせいへんずつう)、脳底型片頭痛(のうていがたへんずつう)とよばれる片頭痛に特徴的な前兆です。

片麻痺性片頭痛では、典型的な前兆の他に手足に力が入りにくくなる症状が起こります。

脳底型片頭痛では話しにくくなる症状や、回転性めまい、耳鳴り、難聴、ものが二重に見える、両眼の外側もしくは内側の視野がかける、手足が動かしにくなる、意識がもうろうとするなどの多彩な症状が起こります。これらのうち1つの前兆が5分以上かけて徐々に強くなることもあれば、いくつかの前兆が一緒に起こることがあります。

手足が脱力する、言葉が出にくくなるなどの症状がある場合には、脳出血脳梗塞など命に関わる危険な病気の可能性もあります。頭痛に加えてこのような症状がある場合には、まずは病院を受診して調べてもらってください。

5. 発作時の頭痛はどんなものか

片頭痛と聞くと、一般的には片方のこめかみあたりがズキズキするような頭痛を想像するかもしれません。実際には両方のこめかみが痛くなることもありますし、ズキズキしない頭痛のこともあります。片頭痛発作時の頭痛について説明します。

頭痛はどの場所に起こりやすいか:こめかみ・おでこ・後頭部

片頭痛は、言葉の通り片側のこめかみあたりが痛むイメージがありますが、半分の人では左右両側の頭痛が起こります。

頭痛が起きやすい場所も実はこめかみだけではありません。日本で行われた調査で、偏頭痛で最も多くの人が痛むと答えた場所は後頭部で、40%前後の人が痛むと答えました。その他の場所として、おでこ、こめかみ、目の周囲などがありました。このように、痛む場所だけでは片頭痛かどうか自分で判断することは難しいので、辛い頭痛がある場合には医療機関に相談してみてください。

なお、こめかみやおでこが痛む頭痛では片頭痛の可能性がありますが、後頭部の痛みは緊張型頭痛でもよく起こるため、片頭痛かどうかを判断することが難しいです。医療機関では、その他の症状や検査結果なども参考に診断をしてもらってください。

片頭痛の頭痛はどんな痛み?:拍動性頭痛

片頭痛は拍動性とよばれる頭痛が特徴的です。「ガンガンする」頭痛や「ズキズキする」頭痛などと表現されます。約40%の人で拍動性頭痛が起こり、頭の重い感じも30%前後の人に起こります。拍動性頭痛は片頭痛の人に特徴的ですが、頭の重い感じは緊張型頭痛の人にもみられる症状です。

片頭痛の頭痛の強さはどれくらい?

片頭痛が起きている間は、頭痛のために日常生活を送るのが困難になります。動くと頭痛が悪化するため、学校や会社に行くのが難しくなるほどの強い頭痛になることもあります。

6. 発作時に頭痛とともに起こりやすい症状とは

片頭痛発作時には食欲が低下して気持ち悪くなり、嘔吐することもあります。また、光をいつもより眩しく感じたり、音をうるさく感じたりする症状も起こることがあります。頭痛とともに眠気も起こります。このような頭痛にあわせて起こる症状について以下に説明します。

食欲がない:食欲減退

片頭痛発作の時は食欲がなくなります。片頭痛発作前の24-48時間に起こる予兆期では反対に食欲が増すことがありますが、頭痛がはじまると食欲が低下します。頭痛がおさまった後にもしばらく食欲が低下した状態が続きます。

気持ち悪い・吐き気がある・吐く:悪心・嘔気・嘔吐

片頭痛では頭痛に伴って、気持ち悪さや実際に嘔吐するような症状が起こります。気持ち悪い症状は60%以上の人で起こり、実際に嘔吐するのは25-37%の人という報告があります。気持ち悪さや嘔吐に伴って腹痛や下痢などの症状が起こる場合があります。

頭痛と嘔吐に合わせて、意識がぼんやりする人や、手足のしびれや動かしにくさがある人は、脳梗塞脳出血くも膜下出血などの可能性がありますので、すぐに病院を受診してください。

光や音、匂いが気になる:光過敏・音過敏・嗅覚過敏

頭痛がしている時に、いつもより光や音、匂いに過敏になって頭痛が悪化することがあります。光過敏は光をいつもより眩しく感じる症状で、音過敏はいつもより音がうるさく感じる症状です。人によっては匂いに敏感になることもあります。光過敏では、カーテンの隙間や雲の切れ間から差し込むような光が特に頭痛の悪化を起こしやすいと言われています。音に関しては時計の秒針の音さえも気になる場合もあります。

これらは片頭痛には多く起こる症状ですが、光過敏や音過敏は緊張型頭痛でもたまに起こることがあります。

皮膚の異常感覚:皮膚アロディニア

片頭痛発作の時に皮膚アロディニアという異常感覚が起こることがあります。これは片頭痛が慢性化すると起こる症状です。皮膚アロディニアとは、軽く皮膚に触れただけでも、痛みやヒリヒリした感じがする症状です。片頭痛に伴う皮膚アロディニアは主に顔や頭に起こりますが、片頭痛が慢性化して長い期間経過すると、手や足などにも起こるようになります。

7. 片頭痛に関連した症状には何がある?

片頭痛では吐き気や嘔吐、光過敏、音過敏の他にも、めまいや肩こりなども起こることがあります。繰り返すめまいに片頭痛を伴う場合には前庭型片頭痛(ぜんていがたへんずつう)とよばれます。肩こりは緊張型頭痛に多い症状ですが、片頭痛でもみられます。これらの関連した症状について説明します。

ぐるぐるする・ふわふわする:めまい

目の前がぐるぐるしたり、ふわふわしたりするめまいを繰り返す人に片頭痛が伴うことがあります。このようなめまいに片頭痛を伴う場合は、前庭型片頭痛(ぜんていがたへんずつう)とよばれます。片頭痛関連めまい、片頭痛性めまいなどとよばれている病気も同じものです。特にきっかけがなく繰り返し起こるめまいのなかでは最も多いめまいです。前庭型片頭痛は、もともと片頭痛がある人や、今は片頭痛はないが以前は片頭痛があった人に起こるめまいです。しかし、めまいのある片頭痛に前兆を伴う場合には、前庭型片頭痛ではなく脳底型片頭痛の可能性もあります。この2つの区別は難しいのですが、治療方法が異なるため、診察を行ってどちらのめまいかが判断されます。

片頭痛に伴うめまいが起きたときに、前庭型片頭痛に当てはまる条件としては下記のものがあります。

【前庭型片頭痛の診断基準】

  • めまい発作を繰り返している
    5分以上続いて72時間以内にはおさまるめまいで、日常生活に支障があるか、日常生活が送れないほど(中等度から高度)のめまい症状(前庭症状)を5回以上繰り返している
  • 頭痛が片頭痛の診断基準を満たしているか、以前に片頭痛の診断を受けている
  • 繰り返し起こるめまい症状(前庭症状)のうち半分以上のめまいで、以下の片頭痛の兆候を1つ以上伴っている
  • 他のめまいを起こす病気や、他の頭痛を考えにくい
  • 片頭痛の兆候とは次のものをさします
    • 視覚性前兆:頭痛発作の前に眼の前がチカチカ・キラキラする
    • 光過敏:光で症状が悪化する
    • 音過敏:音で症状が悪化する
    • 少なくとも以下の2つを伴う頭痛
      • 頭の片側のみが痛む
      • 日常生活に支障があるか、日常生活を送れないほど(中等度〜高度)強く痛む
      • 日常生活の動きで頭痛が悪化する
      • 痛みが拍動性である

肩がこる:肩こり

肩こりの症状は51−66%の片頭痛の人で起こります。肩こりからの頭痛というと一般的には緊張型頭痛を考えますが、片頭痛でも肩こりの症状があります。

8. 片頭痛で起こりにくい症状には何がある?:発熱など

片頭痛では発熱や寒気は起こりません。微熱や熱に頭痛が合わせて起こる場合には、発熱による頭痛であることが多いです。数日前から咳や鼻水があって、発熱ともに頭痛が起きた人は、まずは急性上気道炎風邪症候群)による頭痛と考えられますので過度な心配はいりません。インフルエンザなどでも発熱に伴って頭痛が起こることがあります。

風邪インフルエンザによる頭痛で激しい吐き気や嘔吐がないのであれば、よく栄養と水分をとって自宅でゆっくり休むことが早くよくなる秘訣です。

ごくまれではありますが、激しい吐き気や嘔吐がある場合には、風邪症候群ではなく髄膜炎などの可能性があります。髄膜炎では、ほとんどの場合には熱と頭痛のみではなく、激しい嘔吐や髄膜刺激症状(ずいまくしげきしょうじょう)が合わせて起こります。髄膜刺激症状とは、髄膜炎くも膜下出血で起こる症状で、脳を包む髄膜が炎症や出血によって刺激を受けやすくなったために起こる症状です。具体的には、仰向けに寝た状態で、お医者さんが頭を前に倒そうとしても首の後ろの筋肉が硬くて頭を前に倒すことができないようになります。髄膜刺激症状では、首は前後には動きにくくなりますが、左右の動きは正常であることが特徴です。髄膜炎は治療が遅れると命に関わる病気ですので、風邪のような症状に伴って激しい吐き気や嘔吐がある場合には早めに医療機関に受診してください。

【参考文献】

Takeshima T, Ishizaki K, Fukuhara Y, et al. Population-based door-to-door survey of migraine in Japan: the Daisen study. Headache. 2004. 44(1) : 8-19.

Lempert T, Olesen J, Furman J, et ai. Vestibular migraine: diagnostic criteria: consensus document of the Bárány Society and the International Headache Society. Nervenarzt. 2013. 84(4) : 511-6.