知っておくべき片頭痛(偏頭痛)の注意点
片頭痛と診断された後にはさまざまな疑問が湧くかもしれません。片頭痛の遺伝、片頭痛の起こりやすい時間帯、片頭痛を予防するための日常生活、片頭痛を予防するための食事などの疑問点についてここでは説明します。
1. 片頭痛の疑問
ここでは下記のような片頭痛のさまざまな疑問について説明します。
- 片頭痛をツボで治す方法はある?
- 片頭痛は完治する?
- 片頭痛の
発作 は寝起きや朝に多い? - 片頭痛は遺伝するの?
- 片頭痛では
経口避妊薬 (ピル)は飲める?
片頭痛をツボで治す方法はある?
頭痛を和らげるツボはいくつか知られています。ツボ押しの効果についてははっきりとはわかっていませんが、人によっては頭痛や肩こりを和らげることができるかもしれません。片頭痛発作が起きている時に頭や首周りを触るとアロディニアが引き起こされる場合があるので避けてください。アロディニアとは痛みを感じない程度の強さで触った際に、過敏に痛みを感じてしまう症状です。
指圧を行う時は指の腹を皮膚に垂直に当ててツボを押します。ゆっくり押して少し響く感じがしたら、同じ強さで3-5秒間押して、その後にゆっくり離します。押してすぐ離すのではなく、同じ強さでしばらく押すのがポイントです。はじめはあまり強く押しすぎず、気持ちいい強さで優しく押してください。
頭痛が強い時は無理に指圧を行う必要はなく、軽くマッサージする程度にするか、温タオルやホットパックでツボの部分を温めるだけでも効果があることがあります。
片頭痛による側頭部や前頭部、頭頂部の痛みに効果があると言われているツボは次の通りです。
◎足臨泣(あしりんきゅう)
足の小指と薬指の骨が合流するあたりのツボです。身体の側面の不調を緩和すると言われ、頭痛、首や肩こり、月経不順に効果があると言われています。
◎外関(がいかん)
手の甲側の小指側で、手首から肘に向けて指3本分上のあたりにあるツボです。腕や肩から首、側頭部にかけての不調に効果があるツボと言われています。
◎足三里(あしさんり)
足の前面の膝外側で、指4本下のあたりにあるツボです。前頭部の痛みに効果があると言われています。
◎合谷(ごうこく)
人差し指と親指の骨が合流する部分から少し人差し指側のツボで、万能のツボと呼ばれています。頭や顔の症状に効果があり、頭痛、生理痛、歯痛、肩こりなどに効くと言われています。
◎崑崙(こんろん)
くるぶしの外側とアキレス腱の間にあるくぼみのツボ。後頭部に効果があると言われ、頭痛、めまい、吐き気、腰痛、足の
◎後渓(こうけい)
手を握るとできる小指側の手のひらのしわの端にあるツボです。首の後ろ側のこりや痛みを緩和する効果があると言われています。
◎手三里(てさんり)
ひじを曲げた時にできる横ジワから手首に向かって指3本の所にあるツボ。肩こりや寝違えに効果があると言われています。
片頭痛は完治する?
片頭痛の多くは50歳をすぎるころには軽快します。アメリカの調査では、男性では30代の9%の人に片頭痛が起こりますが、60歳以上では2.1%と低くなっています。同じく女性では30代で38.1%いるのに対して、60歳以上では6.4%にとどまりまります。この調査から30代で片頭痛に悩んでいても、多くの人は60歳を超えるまでに片頭痛が軽快していると考えられます。女性では
片頭痛の発作は寝起きや朝に多い?
片頭痛発作は寝起きや朝に多いわけではありませんが、睡眠不足や睡眠過多が
仕事が休みの日だからといって、お昼まで寝たりすると片頭痛発作が誘発されることがあります。休みの日もいつもと同じ時間に起きて規則正しい生活をするだけで、発作を予防できる効果があります。
片頭痛は遺伝するの?
片頭痛では遺伝的な要因があると言われています。前兆のある片頭痛の場合には、子どもが片頭痛になる確率は5割以上と言われています。片頭痛の前兆とは、頭痛の前に目の前がチカチカするような症状、皮膚がチクチクするような症状、言葉が話しにくくなるような症状のことです。詳細は解明されていませんが、一つの説としては、細胞内にあるミトコンドリアの機能が片頭痛の発作に関連していると考えられており、このミトコンドリアの機能に関しては遺伝している言われています。
遺伝と勘違いしやすいのが生活環境です。家族で片頭痛にかかっている場合には、遺伝的な要因の他にも同じ生活環境の影響も考えられます。日常から誘因になる食べ物を食べているなどが原因になります。
片頭痛では経口避妊薬(ピル)は飲める?
日本の経口避妊薬の
経口避妊薬では
- 高血圧
- 喫煙:1日15本以上
- 肥満:
BMI 30以上 - 高年齢:40歳以上
前兆がない片頭痛がある人で経口避妊薬を内服する場合には、上記のような条件と経口避妊薬の使用目的に応じて一人ひとり使用について検討されます。経口避妊薬の使用目的には避妊の目的のほかにも、月経困難症の軽減や子宮内膜症などの治療目的があり、経口避妊薬を内服するメリットとデメリットを個々に考えて使用が決められます。また新しく経口避妊薬を内服しはじめた場合には、内服による副作用として新たに頭痛が起きることがありますので、その場合には適宜処方をしてもらったお医者さんに相談してください。
2. 日常生活の注意点
片頭痛の発作を起こさないためにどのような生活を心掛けると良いのかについて説明します。食事に関しては「3.食事の注意点」について書いてあります。
頭痛が休日に起きやすい時はどうすればいい?
休日に頭痛が起こる原因にはいくつか考えられます。
- 平日のストレスから解放されること
- 睡眠時間が多すぎること
- 朝寝坊による空腹・低血糖
ストレスは片頭痛の誘因として大きいのですが、ストレスがある時だけではなく、ストレスから解放されたときにも頭痛が起こります。休日には平日の緊張が急激に解けることで頭痛が起こりやすくなります。毎日の生活でストレスを溜め込まないように、リラックスできる息抜きを自分でいくつかもっておき、毎日ストレスを減らして行くことが有用です。
また、片頭痛発作は不規則な睡眠によっても起こります。休日ではいつもより過剰に睡眠をとることで片頭痛が起こります。加えて朝遅くまで寝ていることで空腹から低血糖になり、さらに片頭痛を誘発します。このような不規則な睡眠や生活によって頭痛が起きている場合には、休日も平日と同じような規則的な生活を送るようにすると、片頭痛発作が緩和されます。
季節ごとの頭痛対策は?:花粉・梅雨・台風など
◎春:花粉症
花粉症の時期には頭痛が起こることもあります。花粉症では鼻づまり自体が頭痛を起こしたり、夜間に眠れないことから頭痛を起こしたりすることもあり、必ずしも片頭痛発作ではないこともあります。しかし十分な睡眠が取れないことや、花粉症でのストレスは片頭痛発作を引き起こす可能性があります。花粉症がある場合には花粉症の治療をきちんと行うことで、頭痛を和らげることができるかもしれません。花粉症の場合には市販薬での対応もしくは、症状が強い場合には耳鼻咽喉科や内科を受診して処方薬での治療をお勧めします。
◎夏:梅雨、強い日光、温度差
梅雨などの低気圧の時は片頭痛が起こりやすくなることがあります。気圧の急激な変動が片頭痛を誘発しているのではないかと考えられています。梅雨の時期には頭痛薬を持ち歩くなど、頭痛にすぐに対処できるようにしておいてください。
まぶしい光や炎天下なども片頭痛を誘発することがあります。天気のいい日はサングラスをつけて外出するなどを心掛けてみてください。
温度差も片頭痛の発作の誘因となります。夏は冷房のきいた屋内から屋外へ出た時などの温度差で発作が誘発されることがあります。温度差を緩和するために、冷房のきいた屋内では羽織ものを着るなど温度調整のしやすい服装を心掛けてみてください。
◎秋:台風
秋は台風が多く片頭痛が起こりやすいと感じている人がいるかもしれません。気圧の急激な変動が片頭痛を誘発しているのではないかと考えられています。台風を避けることは難しいため、天気予報を確認して台風が近づいている日は頭痛薬を持ち歩くなど、頭痛にすぐに対処できるようにしておくと良いです。
◎冬:温度差
温度差も片頭痛の誘発の原因になると考えられています。体が温かくなった時に起こりやすく、寒い冬に暖かい屋内に入った時、冬に熱いお風呂に入る時などの温度差が片頭痛の誘因になります。温度差を緩和するために服装を工夫したり、お風呂場や脱衣所に暖房を設置するなどは頭痛の発作に効果があると考えられます。
お風呂と片頭痛の関係について
◎お風呂とシャワーはどちらが良いの?
お風呂とシャワーどちらが良いのかについては片頭痛発作時と発作が起きていない場合で異なります。
片頭痛の発作が起きている時は、体が温まることで血管が拡張するため頭痛が悪化することがあり、湯船への入浴は避けシャワーのみにする方が望ましいです。
一方、片頭痛発作がない時にはお風呂に浸かることで発作の予防も期待できます。片頭痛の発作の誘発因子としてストレスや精神的緊張、疲れなどがあります。湯船にゆっくり浸かることでリラックスできるという人には、シャワーよりお風呂に入ることが有効と考えられます。
◎入浴時の注意点は?
入浴時の注意点に温度差があります。片頭痛発作は温度差でも誘発されることがあります。特に寒い冬の日に急に温かいお風呂入ると頭痛発作が誘発されることがあります。温度差を生じないようにあらかじめ身体を温めておいたり、脱衣所やお風呂が冷えすぎないような工夫をすると良いです。
運動は片頭痛の予防になる?
片頭痛発作が起きていない時の適切な運動は、リラックス効果などから発作の予防になると考えられます。しかし激しい運動は逆に片頭痛発作の誘因にもなります。
片頭痛発作が起きている時は日常動作でも頭痛が悪化するので、運動は控え安静にしてください。
3. 食事の注意点
片頭痛の人が気をつけるべき食べ物や飲み物について見ていきます。食べ物のなかには誘因として知られているものも多くあります。頭痛発作が起きたときは、発作前に食べたものをチェックするようにすると、誘因を見つけることができます。誘因をさけて生活することで、片頭痛発作の頻度を減らすことができます。
片頭痛の人が食生活で気をつけるべきこととは
片頭痛の人が食生活で気をつけるべきことには次のようなものがあります。
- 誘因となる食べ物を避ける
- 飲酒が原因となる場合には避ける
- 空腹を避ける
片頭痛発作の誘因として特定の食べ物がある場合にはできるだけ食べないようにします。いつも同じ食べ物で誘発されることが多いですが、食べ合わせや体調によって異なる場合もあります。誘因の可能性があるすべての食べ物を避けるのではなく、「頭痛ダイアリー」などに記録して、どんな時に食べたもので頭痛が起きたかを知り、その誘因と状況を避けるようにすると効果的です。
食べ物と同様に飲酒、とくに赤ワインが誘因になることが知られていますが、個人差があります。こちらも、自分の頭痛の誘因であるとわかっていて日常生活に支障が出るほどの頭痛が起こる場合には、避けた方が良いかもしれません。
また空腹自体も頭痛の原因となります。朝寝坊をすると朝ごはんを食べられずに空腹にもなるので、片頭痛発作が起こりやすくなります。規則正しい生活および食生活を心掛けることが重要です。
片頭痛もちの人が気をつけた方がよい食べ物とは
片頭痛発作の誘因とされている食べ物には次のようなものがあります。
- 亜硝酸化合物が含まれるもの
- ベーコン
- ソーセージ など
- グルタミン酸ナトリウムが含まれるもの
- 調味料
- ファーストフード
- スナック菓子
- 冷凍食品 など
- チアミンが含まれるもの
- チョコレート
- ココア
- チーズ など
- 柑橘類
- みかん
- グレープフルーツ など
上記のほかにも、アルコールや空腹も発作の誘因として知られています。しかし、誘因には個人差があります。誘因とされている食べ物すべてを避ける努力は必要ありません。「頭痛ダイアリー」などを利用したり、発作を起こしたときのことを振り返ったりすることから、自分の誘因について知り、避けることが重要です。
片頭痛もちの人はアルコールは控えた方が良い?
片頭痛の発作の誘因としてアルコールは有名です。通常は飲酒後3時間以内に頭痛発作が起こります。必ずしも飲酒を禁止する必要はありませんが、アルコールが誘因となって、生活に支障が出るような頭痛発作が起こる場合には飲酒を控えるほうが良いと思います。
片頭痛を予防できるサプリメントはある?
片頭痛を予防できるものとして、マグネシウム、
西洋フキ(バターバー)も有効性が示されていますが、肝障害が起こりやすく、厚生労働省から摂取を避けるように注意喚起がされています。
コーヒーなどカフェイン入りの飲み物は片頭痛を改善する?
カフェインは血管を収縮させる作用があります。片頭痛の頭痛の広がりには血管の拡張が原因の一つとなっているため、カフェインを摂取すると頭痛に効果がある人もいます。しかし、一方でカフェインの摂取が頭痛の誘因となる場合もあります。片頭痛発作を振り返ってカフェイン入りの飲料を摂取した後に頭痛が起きていることが多い場合には避けてください。
【参考文献】