ききょう
気胸
肋骨の内側で肺の外側の胸腔というスペースに空気が貯まった状態。肺に穴が空いてしまい空気が漏れることによって起こることが多い
24人の医師がチェック 191回の改訂 最終更新: 2021.03.31

気胸で知っておきたいこと:生活の注意点、受診する診療科など

気胸は肺に穴が空いて空気漏れを起こすなどして、肺の外側に空気が溜まってしまった状態を指します。溜まった空気によって肺や心臓が圧迫されることで、様々な問題を起こします。ここでは気胸について、再発防止のための知識、受診する診療科など、知っておくと役立つことを解説していきます。

1. 気胸は自然治癒するのか

気胸では、溜まってしまった空気を排出するために、肋骨の間から針を刺して空気を抜いたり(胸腔穿刺、脱気)、肋骨の間からチューブを留置して持続的に空気を抜く(胸腔ドレナージ)治療が行われます。

一方で、軽度の気胸であれば自然治癒することも多いです。つまり、様子を見ているだけで、自然に肺からの空気漏れが治り、溜まっていた空気が消えていくことがよくあります。

昔の研究結果ではありますが、特にもともと肺の病気がない人が自然に起こした気胸(原発性自然気胸)では、様子を見ているだけで4週間で78%、8週間で97%の人が治癒したというデータもあります(Thorax 1966;21:145-9.)。

もともと肺に病気がある人が起こした気胸(続発性自然気胸)では治癒率はより低いと考えられています。しかし、いずれにしても軽度の気胸であれば、特に何も治療をせず様子を見るという選択は合理的なことが多いです。ただし、様子を見ている際に状態が悪化した人は積極的な治療が必要となります。

2. 気胸は何科を受診すればよいのか

気胸を専門とする診療科は呼吸器内科呼吸器外科です。気胸が心配な人はこれらの診療科を受診するようにしてください。

ただし、気胸はかかる人が多い病気なので、胸部X線レントゲン)検査ができる内科や外科の医療機関であれば、専門ではなくても診断をつけたり応急処置をしてくれることもあります。

また、夜間や休日の場合には、救急外来を受診するようにしてください。症状が乏しければ翌平日まで待って専門科を受診することもできますが、気胸は急激に悪化することもあるので、疑わしい症状が現れたら速やかに医療機関にかかるのが無難です。

3. 気胸は再発するのか:予防策など

気胸はしばしば再発する病気です。特にもともと肺の病気がない人が自然に起こした気胸(原発性自然気胸)での報告を紹介します。

研究によってかなりデータにばらつきはあるものの、原発性自然気胸で肺の空気漏れが自然に塞がった人では1年以内の再発率が20-50%前後、手術を受けた人では数%になると言われています。

原発性自然気胸では手術を受ければ再発をかなり抑えられるので、手術を受けることが最大の再発予防策になります。また、生活習慣などで再発予防につながると確実に分かっているのは禁煙だけです。気胸を起こした人は直ちに禁煙してください。

もともと肺に病気がある人が起こした気胸(続発性自然気胸)では、もともとの病気によっても再発率は異なると考えられ、一概に予測できません。ただし、一般的に原発性自然気胸よりは高い再発率になると考えられます。

4. 女性も気胸になるのか:月経随伴性気胸など

もともと肺の病気がない人が自然に起こす気胸(原発性自然気胸)は、若い喫煙者の男性で、痩せ型高身長の人に起きやすいことが分かっています。特に持病のない若い女性が、いきなり気胸になるのは比較的珍しいことです。

そのように珍しく気胸になってしまう人では、月経随伴性気胸という病気のことがあります。月経が始まる3-5日ほど前に気胸を繰り返すのが特徴です。ほとんどの人で右側の気胸になることが知られています。

月経随伴性気胸は子宮内膜症という病気の一種だと考えられています。これは、子宮の内膜が子宮以外の場所で定着してしまう病気です。どうやって右胸に子宮内膜がたどり着くのかはよく分かっていません。

また、月経随伴性気胸以外にも考えられる病気はあります。様々な病気が挙げられますが、リンパ脈管筋腫症LAM)やバート・ホッグ・デュベ症候群(BHD)は、こうした気胸の原因として知られています。

その他、もともと肺の病気であることが分かっている人では男女問わず、気胸を起こすことも珍しくありません。こうした気胸(続発性自然気胸)の原因としては、間質性肺炎肺気腫COPD)、肺がん非結核性抗酸菌症(NTM)などがあります。

5. ストレスが原因で気胸になるのか

精神的なストレスが原因で気胸になるかどうかは分かっていません

もともと肺の病気がない人が自然に起こす気胸(原発性自然気胸)は、10代後半から30代の男性が起こすことの多い病気です。大学の試験前や、入社後間もない時期などのストレスが多い時期に発症しやすいとも言われています。

しかし、ストレスの程度は人それぞれであり、数値化するのは困難なものです。そのため、ストレスと気胸との関係を医学的に証明するのは難しいことで、現状では明らかではありません。

6. 気胸の手術費用はどれくらいか

もともと肺の病気がない若い男性が気胸(原発性自然気胸)を起こして入院し、手術を受けて退院した場合を想定してみます。その場合、治療費の3割を支払ったと仮定すると、窓口では25-40万円ほどの負担額になると予想されます。もし手術以外の治療であれば、1週間入院したとしても、10万円以下で済むことが多いです。

医療費は入院期間などによって変わるものです。ここで紹介した値段は目安と考えてください。なお、高額療養費制度を使うことで、負担を減らすことができる人も多くいます。まずはこの制度の利用を検討してみてください。

高額療養費制度とは

高額療養費制度とは、家計に応じて医療費の自己負担額に上限を決めている制度です。

医療機関の窓口において医療費の自己負担額を全額一度支払ったあとに(*)、月ごとの支払いが自己負担限度額を超えた部分について、払い戻しがあります。払い戻しを受け取るまでに数か月かかることがあります。

(*限度額適用認定証を使うことで、窓口での支払いを自己負担限度額までで済ますことができます)

たとえば70歳未満で標準報酬月額が28万円から50万円の人では、1か月の自己負担限度額が80,100円+(総医療費-267,000円)×1%と定められています。それを超える医療費は払い戻しの対象になります。

この人で医療費が1,000,000円かかったとします。窓口で払う自己負担額は300,000円になります。この場合の自己負担限度額は80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円となります。

したがって、払い戻される金額は300,000-87,430=212,570円となります。

所得によって自己負担最高額は35,400円から252,600円+(総医療費-842,000円)×1%まで幅があります。高額療養費制度については下記の厚生労働省のウェブサイトやこちらの「コラム」を参考にしてください。

参考:厚生労働省保険局:高額療養費制度を利用される皆さまへ(2020.9.3閲覧)

7. 気胸の人は飛行機に乗ってもよいか

飛行機に搭乗することで気胸を再発しやすくなるというデータは十分ではありません。しかし、飛行機に乗ると気圧の変化が生じるため、気胸が悪化する可能性が指摘されています。

気胸の治癒後数週間は飛行機の搭乗を避けるよう指導されることが一般的ですが、人によって異なるので、飛行機に乗る予定がある人は担当のお医者さんに確認しておくと安心です。また、気胸の後に飛行機に乗ってはいけない期間を航空会社ごとに設定していることがあるので、航空会社にも確認しておくと良いと思います。

なお、気胸を治療する前の状態で飛行機に乗ることはできません。機内で気胸が悪化した際には速やかな治療が受けられず、命に関わるからです。そのため、旅行先で気胸を発症したような人では、飛行機で地元に戻って手術を受けたりすることは困難です。いったん、滞在先近隣の医療機関にて治療を受けてください。

8. 気胸治療にガイドラインはあるのか

気胸については2009年に日本気胸・嚢胞性肺疾患学会が発行したガイドラインがあります。また、世界的に参考にされているガイドラインとして、米国胸部医学会(ACCP)の合同声明や、英国胸部学会の自然気胸ガイドラインがあります。

しかし、長らく更新されておらず、他の病気のガイドラインと比べるとこれらのガイドラインはあまり活用されていないのが実情です。お医者さんは患者さんの気胸の状態や背景などを総合的に鑑みて、その人に合った治療を検討しています。

参考文献

・日本気胸・嚢胞性肺疾患学会/編, 「気胸・嚢胞性肺疾患 規約・用語・ガイドライン(2009年版)」, 金原出版, 2009年

Baumann MH, et al. Management of spontaneous pneumothorax: an American College of Chest Physicians Delphi consensus statement. Chest 2001; 119: 590-602.

MacDuff A, et al. Management of spontaneous pneumothorax: British Thoracic Society Pleural Disease Guideline 2010. Thorax 2010; 65 Suppl 2: ii18-31.

(2020.9.14閲覧)