かれいおうはんへんせい
加齢黄斑変性
網膜の中心部分(黄斑)が年齢とともに変化する。物が歪んで見えたり失明したりする
8人の医師がチェック 233回の改訂 最終更新: 2022.06.27

加齢黄斑変性の原因について:喫煙、日光など

黄斑網膜の中心部分にあり、ものを見る時に最も視力が出るところです。加齢黄斑変性は老化により黄斑に異常が起こり、ものが見えにくくなる病気です。喫煙、高血圧症、遺伝子、日光は加齢黄斑変性を悪化させる原因として知られています。

1. 加齢黄斑変性とは何か?

眼はものを見るために必要な場所です。眼に入ってきた光が水晶体というレンズを通って、眼の内側の網膜にあたることで、ものを見ることができます。網膜には光や色を認識できる細胞(視細胞)が集まっています。眼に入ってきた光の情報が視細胞から脳に送られることで、映像として認識することができます。

黄斑は網膜の中心部の直径約6mmの領域を指し、ものを見る時に最も視力が出るところです。加齢黄斑変性は老化により黄斑に異常が起こる病気で、ものが見えにくくなる病気です。

【眼の構造】

加齢黄斑変性:眼の構造

2. 加齢黄斑変性には萎縮型と滲出型の2種類がある

加齢黄斑変性は黄斑の変性のタイプにより萎縮型と滲出型の2種類に分けられます。

萎縮型は老化により黄斑の細胞が縮んでいく(萎縮する)ことで、正常の機能を保てなくタイプです。これに対し滲出型は、本来はない異常な血管が黄斑に生えてくる(異常血管新生)ことで起こります。この異常な血管は通常の血管より脆いので、黄斑での出血の原因になります。また、異常な血管が生えることで黄斑の構造を破壊します。滲出型で見られる異常血管新生は老化による動脈硬化や老廃物の沈着などが原因であると考えられています。

また、詳しくは「症状について」、「治療について」のページで説明していますが、萎縮型と滲出型は症状の進行の早さや治療法が異なるため、どちらであるかを見極めることは方針を決める上でも非常に重要です。

  萎縮型 滲出型
原因 黄斑が萎縮する 異常な血管が新生してくる
症状
(詳しくは症状のページ)
数ヶ月から数年かけて
ものの見えにくさが進む
数日から数週間で
ものの見えにくさが進む
治療法
(詳しくは症状のページ)
禁煙や生活習慣病の管理などを行い
進行を遅らせる
禁煙や生活習慣病の管理に加えて
VEGF阻害薬、光線療法

3. 加齢黄斑変性の悪化させる要因

加齢黄斑変性の原因はその名の通り「加齢」によるものですが、悪化させる要因としては以下のものが知られています。

以下でそれぞれついて説明してきます。

喫煙

たばこは加齢黄斑変性のリスクであることが知られています。たばこを吸うと肺から本来取り込まれるはずの新鮮な酸素が取り込まれなくなり、血液中の酸素濃度が薄まります。代わりにたばこに含まれる様々な有害物質が血液中が溶け込みます。黄斑部位に十分な酸素が行き渡らなくなったり、有害物質により黄斑が障害されたりすることで、異常な血管新生が起こりやすくなります。

加齢黄斑変性は喫煙の積算量が多ければ多いほどなりやすくなると考えられています。そのため、長年喫煙をしていたとしても、今から禁煙をしてこれ以上積算量を増やさないようにすることは意味がある行動です。また、副流煙でもリスクが上がるので、周りの人が喫煙する場合には、副流煙を吸わない注意も必要です。

高血圧症

高血圧症は血管に過度に圧力がかかっている状態です。高血圧症が続くと、血圧に負けないように血管は硬い状態となります。この状態を「動脈硬化」と呼びます。動脈硬化は決して良いことではなく、血管のしなやかさが失われる結果、血管が破れやすくなったり血液の流れが悪くなったりします。

動脈硬化が起こり黄斑の血液の流れが悪くなると、血液の流れの悪さを補おうとして、本来血管がないはずの黄斑に異常な血管ができやすくなります。この異常な新生血管が黄斑の視細胞の並びを破壊してしまい、加齢黄斑変性の原因になります。

年を重ねると若い時よりも血圧が上がりやすくなります。高血圧症に該当するのは30代では男性20%、女性5%であるのに対し、70代では男性80%、女性70%だったという統計があり、年齢を重ねた人では高血圧症の人が多いことがわかります。高血圧症は治療でよくすることができる病気です。高血圧症がある人は、加齢黄斑変性を予防するためにもしっかりと治療することが重要です。

遺伝子

私たちはお父さんとお母さんの遺伝子の引き継ぐことで、両親に似た部分を持つことになります。例えば、顔立ちや性格の遺伝などが挙げられます。ただ、それだけではなく、病気のなりやすさなども遺伝子により引き継がれます。加齢黄斑変性も例外ではなく、持っていると加齢黄斑変性を起こしやすくなる遺伝子が知られています。

しかし、加齢黄斑変性を起こしやすくなる遺伝子も、あくまで「起こしやすくなる」程度であり、100%の確率で加齢黄斑変性を起こすわけではありません。加齢黄斑変性の家族がいたとしても、過度に心配しすぎず、禁煙や血圧管理などできる予防策を行っていくことが重要です。

日光

日光に含まれる紫外線には黄斑を傷つける作用があります。そのため、強い日差しが眼に入ると加齢黄斑変性が助長される可能性があります。例えば、車の運転や屋外でのレジャーなどで強い日差しが眼に入りそうな時は、日除けやサングラスを活用してみてください。