慢性硬膜下血腫の基礎知識
POINT 慢性硬膜下血腫とは
脳は髄膜(ずいまく)という膜で包まれています。髄膜は3層構造になっており、脳の表面に近い方から順番に軟膜、くも膜、硬膜と呼びます。頭を強く打つなどの原因で、硬膜とくも膜の間にじわじわと出血して、血の塊が出来てくる病気が慢性硬膜下血腫です。高齢者やアルコールを多く飲む人、血液がサラサラになる薬を飲んでいる人などで起こりやすい病気です。症状の出かたは様々ですが、認知症のような症状が出たり、頭痛や吐き気、麻痺などがでる場合もあります。診断は頭部CT検査により行なうことが一般的です。治療としては、穿頭血腫除去術という短時間の手術を行なうことが一般的ですが、血腫が小さくて症状が乏しい場合には、自然に治るのを待つ場合もあります。慢性硬膜下血腫が心配な方や治療したい方は、脳神経外科や救急科を受診してください。
慢性硬膜下血腫について
硬膜 下で、時間をかけてじわじわと出血して、血液が溜まる病気- 脳は髄膜(ずいまく)という膜で表面を覆われている
- 髄膜は3層構造となっており、脳の表面に近い方から順番に
軟膜 、くも膜 、硬膜と呼ぶ - 慢性硬膜下血腫はくも膜と硬膜の間でじわじわと出血している病気
- 転んだりして頭を打った際に、頭の中の細かい血管が裂けたり切れたりすることが原因となる
- 頭を打ってから、数週間から数ヶ月遅れて症状が出てくる
- 高齢者、男性に
発症 することが多い- 特にお酒をよく飲む人や血をサラサラにする薬(
抗血小板薬 ・抗凝固薬 など)を飲んでいる人はリスクが高い - 高齢者やアルコール多飲者は、脳が
萎縮 しているので脳の周りのスペースが大きく、血液が溜まりやすい
- 特にお酒をよく飲む人や血をサラサラにする薬(
慢性硬膜下血腫の症状
頭部CT検査 や頭部MRI 検査で慢性硬膜下血腫が見つかっても、症状がないことも多い- 頭をぶつけてから、数週間から数か月ほど経ってから症状が出ることが多い
- 主な症状
- 歩行するとふらつく
- 片側の手足の動かしづらさやしびれが出る
- 頭痛、頭重感が出現する
- しゃべりづらくなる
- ぼーっとする
- 物忘れ(認知症のような症状)が現れる、または悪化する
- 重症な場合には、
意識障害 の原因となる場合がある
慢性硬膜下血腫の検査・診断
- 画像検査
頭部CT検査 :硬膜 下に血腫 があるか調べる頭部MRI 検査:より詳しく検査する必要がある時に行われることもある
- 血液検査
- 出血しやすくなる異常がないかどうか調べる
- 手術を受けるにあたって問題なさそうか調べる
慢性硬膜下血腫の治療法
- 症状があれば原則的に手術が行われるが、症状がない場合は手術以外の治療することもある
- 手術を行わない場合は、
経過観察 をしたり漢方薬などを使ったりして様子を見る
- 手術を行わない場合は、
- 手術
- 頭蓋骨に小さい穴を開け(穿頭)、溜まった血の塊を吸い出す(
血腫 除去術) - 通常は局所麻酔で1時間前後で終わる
- 頭蓋骨に小さい穴を開け(穿頭)、溜まった血の塊を吸い出す(
- 手術後の再発
- 10人に1人が治療後に再発し、特に腎臓の機能が落ちている場合は再発率が高いと言われている
抗血小板薬 、抗凝固薬 を飲んでいる場合も再発しやすい
慢性硬膜下血腫の経過と病院探しのポイント
慢性硬膜下血腫が心配な方
慢性硬膜下血腫は、頭をぶつけてから数週間後、場合によっては数か月後に症状が出てくる病気です。この間少しずつ血管から出血が広がっていき、徐々に意識がぼんやりとする、言動がおかしくなる、尿失禁を繰り返してしまう、などの症状が出てきます。
上記のような症状に該当してご心配な方は脳神経外科(脳外科)のある病院での受診をお勧めします。もし慢性硬膜下血腫があったとしても、小さなものや症状のないものについては、手術をせずに様子をみることがあります。
慢性硬膜下血腫の診断はCTで行います。国内の総合病院であればほとんどのところにCTの設備がありますので、診断のために特別な病院を選択しなければならない、ということはありません。
出血が大きなものであれば脳外科医でなくとも診断がつきますが、CTの画像上では脳と血腫が同じ色に写るために血腫が見えにくいことや、左右両側に血腫があると両側対称に見えて異常に気づきにくいことから、一部の慢性硬膜下血腫では、普段から慣れている医師でないと血腫を見落としてしまう可能性もあります。
慢性硬膜下血腫でお困りの方
慢性硬膜下血腫の根本治療としては、頭蓋骨に穴を空けて内部に溜まった血液を洗い流す手術(穿頭、血腫除去術)を行います。溜まった血液をしっかりと取り除くことができれば大半の症状は改善します。
症状が強い場合には緊急で手術を行います。平日の日中であれば良いのですが、土日祝日や夜間は院内に残っているスタッフが少ないため、緊急で手術を行える病院と、そうでない病院があります。ある程度の規模の病院や、脳外科手術の手術件数が多い病院の方が、時間外の緊急手術により迅速に対応できるところが多い傾向にあります。
慢性硬膜下血腫が大きなものであった場合や、症状が出てから手術までに時間がかかってしまった場合などは残念ながら後遺症が残ってしまうことがあります。この場合、脳の機能回復を目指してリハビリテーションが必要となります。急性期病院から慢性期病院(リハビリ病院、療養型病院)に転院して、リハビリに専念することが多いです。
急性期病院にも一般的にリハビリの施設はついていますが、慢性期病院の方がリハビリに専念しやすい環境が整っています。一緒にリハビリを行うことになるのは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったスタッフです。患者さん一人あたりのスタッフ数や、リハビリ設備(リハビリ室や器具)の充実度といったところが病院を選ぶ上で参考になります。リハビリの回数が1日1回なのか、それとも午前と午後で2回あるのか、土日はどうかといった点は、慢性期の病院を探す上でのポイントとなります。