2015.05.29 | ニュース

クローン病は原発性免疫不全症の関連性解明のきっかけが・・・?

遺伝子解析に意外な共通点

from Gut

クローン病は原発性免疫不全症の関連性解明のきっかけが・・・?の写真

クローン病は小腸や大腸に炎症ができ、腹痛や下痢などの症状を起こす病気で、炎症性腸疾患と総称される難病のひとつです。原因には遺伝の要因が関わっていると考えられていますが、はっきりとはわかっていません。このクローン病がある人の遺伝子を調べた研究で、原発性免疫不全症という別の難病と関わる遺伝子の変異が見つかり、これらの病気に共通のしくみがあるのではないか、という説が唱えられました。

◆クローン病患者の遺伝子全体を解析

研究班は、若い年齢で発症したクローン病の患者に対して、遺伝子の全体にわたる解析を行いました。

 

◆意外にもXIAP遺伝子が変異していた

遺伝子の解析から、次の結果が得られました。

結果は、小児期発症クローン病の男性患者のうちおよそ4%に起こる、XIAP遺伝子の頻繁な突然変異の発生を示した。

男性の対象者に、およそ4%という高い頻度で、XIAP遺伝子の変異が見つかりました

XIAP遺伝子は、2型X連鎖リンパ球増殖性症候群(XLP2)という、ほぼ男性だけにまれに起こる、生まれつき免疫のしくみが正常に働かない病気(原発性免疫不全症)の一種と関係しています。対象者のうちにXLP2の患者はいませんでしたが、XIAP遺伝子にはさまざまな種類の変異が見つかりました

研究班は「この研究は男性の小児期発症クローン病でXIAP遺伝子の変異が頻繁に起こっていたという予期せぬ事実を示している」とまとめたうえ、「原発性免疫不全症を炎症性腸疾患の患者の一部ととらえる考え」を唱えています。

 

クローン病と原発性免疫不全症はどちらも難病ですが、この説によって今後の研究に新しい観点が生まれるかもしれません。もしこれらの病気に共通するしくみが明らかになれば、ふたつの難病に同時に対処する治療が生まれることも想像できます。さらに解明が進むかどうか、今後に期待がかかります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

XIAP variants in male Crohn's disease.

Gut. 2015 Jan

[PMID: 24572142]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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