◆炎症性腸疾患とは?
クローン病、潰瘍性大腸炎をあわせて炎症性腸疾患と言います。どちらも10代など若い人にも多く起こり、腸に持続する炎症が起こって腹痛や下痢などの症状を起こします。詳しいしくみは不明ですが、免疫が自分自身の体を攻撃してしまうこと(自己免疫)が原因に関係していると考えられています。
◆ボストンの7千人の炎症性腸疾患患者を調査
研究班は次のように情報を集めました。
後ろ向き研究として、マサチューセッツ州ボストンの2か所の三次病院で炎症性腸疾患と診断され、3年以上フォローされた患者6,823人(2,764人はフォロー中のある期間に大腸内視鏡検査を受けたことがあり、4,059人はこの期間に大腸内視鏡検査を受けていない)についてのデータを解析した。
大腸がんの診断またはフォロー期間の終了の36か月前以後に大腸内視鏡検査を受けた人の割合を調べた。その際、すでに大腸がんがある疑いで行われた大腸内視鏡検査を除くため、大腸がんの診断の6か月前以後に受けた大腸内視鏡検査は除いて数えた。
炎症性腸疾患と診断された人のうち、大腸内視鏡検査を受けていた人と、受けていなかった人で、その後大腸がんの発症率に、または死亡率に違いがあるかを調べました。
◆大腸がん発症、死亡ともに減少
調査から次の結果が得られました。
154人の患者に大腸がんが発症した。大腸内視鏡検査を受けていない人では、大腸がんの発症率(2.7%)が大腸内視鏡検査を受けた人(1.6%)よりも有意に高かった(オッズ比0.56、95%信頼区間0.39-0.80)。
大腸がんが発症した人の間では、大腸がんの診断の6か月から36か月前に大腸内視鏡検査を受けたことが、以後の死亡率低下(オッズ比0.34、95%信頼区間0.12-0.95)と関連していた。
大腸内視鏡検査を受けていた人のほうが大腸がんの発症が少なく、また大腸がんを発症した場合にも、大腸内視鏡検査を受けていなかった人で大腸がんが見つかった人よりも、死亡率が低いという関連がありました。
炎症性腸疾患のある人が定期的に大腸内視鏡検査を受ける根拠に、この研究も加わることになりそうです。炎症性腸疾患には発がんだけではなく、それ自身の症状が重くなるリスクもあり、診断された方には検査や治療の方針について医師とよく相談されることをお勧めします。
執筆者
Colonoscopy is associated with a reduced risk for colon cancer and mortality in patients with inflammatory bowel diseases.
Clin Gastroenterol Hepatol. 2015 Feb
[PMID: 25041865]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。