おねしょは何歳までになくなるのか? 夜尿症とおねしょの違いについて
おねしょは5歳までになくなることが多いです。一方で、5歳以降にもおねしょをする場合には「夜尿症」という病名がつくことがあります。「夜尿」とはおねしょのことで、国際小児尿禁制学会では夜尿症を次のように定義しています。
- 夜尿症:5歳以降で、1ヶ月に1回以上の夜尿が3ヶ月以上続くもの
ですので、5歳以降に継続しておねしょをしている場合は夜尿症の可能性がありますが、5歳未満の子どもであれば心配しすぎる必要はありません。
夜尿症の子どもはどのくらいいるのか
「夜尿症診療ガイドライン2016」によると、一般的な夜尿症の頻度は、就学前の5歳から6歳で約20%、小学校低学年で約10%とされています。また、10歳を超えても5%に夜尿症がみられるともされています。
身体が成長するに従って排尿機能も成熟してくるため、このように年齢が上がるとともに夜尿症の割合は少なくなります。しかし、成熟の仕方には個人差があり、小学生ではまだ排尿機能が十分でない子どもは珍しくありません。トイレトレーニング(オムツはずし)の進みが人それぞれであったように、夜間の排尿がコントロールできるようになるまでに時間がかかる子どももいる、ということです。
夜尿症は医療機関で相談するべきか
夜尿症の多くは成長とともに自然と治ります。実際、昔はそれぞれの家庭で様子をみるのが主流でした。そのため、親子ともにあまり気にならないならば、受診せずにそのまま経過を見るのも一つの考え方です。
しかしながら、近年、医療機関での生活指導や薬物療法によって、より早く夜尿が解決できることがわかってきました。また、いつまでも夜尿症が長引いているという事実が子どもの自尊心を低下させる可能性があるという指摘もあります。
お医者さんに連れていかれることでかえってお子さんが落ち込んでしまうようであれば本末転倒ですが、受診に抵抗がなく、5歳を過ぎてもおねしょで悩んでいるようであれば、かかりつけの小児科か、泌尿器科での相談を検討してみてください。
受診に際して不安の色が見える場合には、お父さんやお母さんが自身の体験談や聞いた話を交えながら気持ちを支えてあげると良いかもしれません。また、受診前にはお子さんと夜尿について「お医者さんが早く治す方法を教えてくれるよ」「痛いことはしないよ」といった内容を伝えておくと、受診による子どもの精神的な負担を軽減できます。ただ受診するのではなく、十分な話し合いをしておくことをお勧めします。
今回のコラムでは、子どものおねしょが治らなくて心配している方々の参考のために、夜尿症の定義や、頻度、受診の考え方を簡単に説明しました。
夜尿症は決して命に危険が及ぶ病気ではありませんが、子どもの生活や成長にとっては重大な問題です。おねしょの悩みで受診するのはハードルが高いという意見もよく耳にしますが、なるべく早く解決するに越したことはありません。繰り返しになりますが、気になっている人は積極的に受診を検討してみてください。
このコラムがみなさんの勇気ある一歩の力になれれば幸いです。
なお、医療機関で行われる治療や生活指導も気になる話題かと思いますので、折をみて紹介していきたいと考えています。
*2021.8.11追記
家庭できる対策について、下記コラムを公開しました。
「おねしょはしつけの問題? おむつはしない方がいい?:夜尿症の原因と家庭でできる対策について」(2021.8.11公開)
執筆者
・日本夜尿症学会/編, 夜尿症診療ガイドライン2016, 診断と治療社, 2016
・Naiwen D Tu, et al., Nocturnal enuresis in children: Etiology and evaluation, UpToDate(最終更新2021.5.10)
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。