2019.12.24 | コラム

海外でケガや病気をしたら医療費はどうなる?:高額な負担に備えて知っておきたいこと

海外療養費制度、海外旅行保険について
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年末年始やゴールデンウィークなどの長期休暇には、海外旅行にでかける人が増えます。異国では普段は味わえない貴重な経験ができますが、滞在中のケガや病気は心配の種です。このコラムでは、海外で医療を受けたときに使える制度や保険などを説明していきます。

1. 海外で支払った医療費の一部が支給される海外療養費制度とは?

海外で医療行為を受けると高額の費用がかかる、と耳にしたことがあるかもしれません。その理由の一つに、海外では日本の医療保険が使えないためその場で全額を負担しなければならないことが挙げられます。しかし、帰国後に「海外療養費制度」を申請すると、負担額の一部が戻ってくる可能性があります。海外療養費制度とは、国外でやむを得ず受けた医療にかかった費用の一部が支給される社会保障制度のことです。

 

海外療養費制度の適用になるもの・ならないもの

全ての医療行為に海外療養費制度が適用されるわけではなく、日本の保険診療の範囲内のものに限られます。 例えば、骨折に対するギブス固定や、心筋梗塞に対するカテーテル治療などは日本の保険診療でカバーされているので、海外療養費制度が適用されます。一方で、美容整形手術や性転換手術といった保険診療外の医療行為については適用されません。 また、海外療養費制度の対象はあくまでやむを得ず医療を受けなければならなかった人です。つまり、保険診療の範囲内であっても医療行為を目的に渡航した人には原則として適用されません*。

*臓器移植については、海外療養費制度が適用される可能性があるので、主治医に相談したり、厚生労働省のホームページを参考にしてください。

 

海外療養費制度で戻ってくる金額について

海外療養費制度で支給される金額は日本国内での診療費用と自己負担割合をもとに計算されます。また、海外の医療費が日本の医療費を上回る場合と、下回る場合で療養費の求め方が異なります。

 

◎海外の医療費が日本の医療費を下回る場合(下図の①のケース)
海外での支払額が、日本で同じ治療を受けた場合の算定額を下回るときは、海外で支払った額から自己負担割合分を除いた金額が支給されます。 自己負担が3割の人であれば、海外での支払額のうち7割が返ってきます。

下図のケースであれば、支払った5万円のうち、3万5千円が支給され、自己負担が1万5千円になります。

 

◎海外の医療費が日本の医療費を上回る場合(下図の②のケース)
海外での支払額が、日本で同じ治療を受けた場合の算定額を超えるときは、超過分が全て自己負担になります。支給されるのは日本の算定額から自己負担割合分を除いた金額のみです。 自己負担が3割の人であれば、日本の算定額のうち7割は返ってきますが、足が出た費用は自己負担になります。

下のケースであれば、支払った額は15万円ですが、支給されるのは日本の医療費をもとに計算された10万円の7割にあたる7万円で、残りの8万円を自己負担することになります。

 

【海外療養費の支給額の例(自己負担が3割の人)】

海外療養費制度でいくら戻ってくるのか

自己負担の割合は年齢や収入などによって異なりますが、この支給額の求め方は変わりません。

 

海外療養費制度の申請について

申請には次の書類を準備してください。

 

【海外療養費制度の申請に必要な書類の例】

  • 海外療養費申請書
  • 診療内容明細書
  • 領収書明細書
  • 現地で支払った領収書の原本
  • パスポートまたは航空券の写し
  • 同意書

 

現地の医療機関でもらった領収書は必ず保管するようにしてください。また、上記の申請書等は加入している健康保険のホームページからダウンロードできることが多いです。

 

2. 海外旅行保険の加入は必要か?

渡航先で医療機関にかかったとしても、海外療養費制度によって、負担をある程度は抑えられることがわかりました。ここでもう一つ気になるのが、海外旅行保険の加入についてです。海外旅行保険とは、渡航先でのケガや病気、盗難などに備えて、任意で加入する保険のことです。 筆者は海外旅行保険に加入したほうが無難なケースが多いと考えています。滞在先の医療事情によりますが、海外の医療費は日本よりはるかに高額なことが多いからです。

例えば、ニューヨークでは、1日あたりの入院費が1万ドルから2万ドルです。日本円になおすと、たった1日の入院に100万円から200万円程度かかる計算になります。日本の入院費が1日あたり1万円から1万5千円前後であることを考えると、非常に高額であることがわかります。つまり、ニューヨークで医療をうけると、海外療養費制度を利用しても費用負担が莫大になることに変わりはないので、万が一の備えとして海外旅行保険に加入する価値は高いと考えられます。 ニューヨークの例は極端かもしれませんが、あらかじめ、旅先の医療事情を出国までに確認しておく必要はありそうです。主な国や地域の医療事情は「外務省のホームページ」で調べられるので、保険加入を検討する際に参考にしてください。

 

3. おまけ:言葉の不安に備えるには

ここまでは医療費負担の備えについて説明してきましたが、旅先の医療機関でのコミュニケーションも不安材料かもしれません。まず、可能であれば、インターネットの翻訳サービスを利用してみてください。多くの言語に対応しており、簡単に使えます。また、英語やフランス語、中国語などの医療用語がリスト化されたものが外務省ホームページに掲載されています。インターネットが使えない環境が想定される場合は、プリントアウトするなどして携帯しておくとより安心です。

 

海外療養費制度を中心に、渡航前に押さえておきたい医療の知識をいくつか紹介しました。「備えあれば憂いなし」という言葉にあるように、十分な準備をして、海外旅行をより楽しんでみてください。

 

執筆者

斎木 寛

参考文献

・外務省ホームページ「世界の医療事情」(2019.12.23閲覧)

・厚生労働省ホームページ(2019.12.23閲覧)

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。