2019.06.11 | コラム

新型タバコの安全性は?:アイコス、グローなどの加熱式タバコや電子タバコについて

ニコチンやタール以外の有害物質も含まれるので、健康上は吸わないに越したことはありません

新型タバコの安全性は?:アイコス、グローなどの加熱式タバコや電子タバコについての写真

近年、加熱式タバコや電子タバコといった新型タバコを吸う人が増えてきました。「一般的な紙巻タバコよりは身体に害が少なそう」、「比較的安い」、「禁煙につなげられそう」、「カッコいい」、など人によって新型タバコを吸う理由はさまざまだと思います。ここでは日本の学会や国際会議で発表されている公式見解を分かりやすくまとめて、新型タバコの健康への影響や禁煙サポートとしての有用性について説明していきます。

 

1. 新型タバコとは?:加熱式タバコや電子タバコ

新型タバコにはタバコの葉や粉末を加熱して発生する蒸気を吸い込む加熱式タバコと、香りのついた液体(リキッド)を加熱して蒸気を吸い込む電子タバコがあります。特徴をまとめると以下の表のようになります。

 

【新型タバコの種類と特徴】

種類

中身 タール ニコチン

主な商品名

加熱式タバコ

葉タバコ
または
タバコの粉末
含まれる 含まれる

IQOS(アイコス)
Ploom TECH(プルー・ムテック)
glo(グロー)など

電子タバコ※1

液体(リキッド) 含まない (国内で販売されているものには)含まない※2

DR.VAPE(ドクターベイプ)
VITAFUL(ビタフル)
EMILI MINI+(エミリミニプラス) など

※1:電子タバコの中には以下の3種類があります

  • リキッド式:リキッドを注入して使用(EMILI MINI+ など)
  • カートリッジ式:カートリッジを交換して使用(DR.VAPE など)
  • 使い捨て式:本体ごと交換して使用(VITAFUL など)

※2:薬機法による規制で、日本国内ではニコチンを含む電子タバコの販売は禁止されています

 

どれも目に見える煙はほとんど出ないのですが、煙よりもっと細かい霧(エアロゾル)が使用者の吐く息から出ています。

 

新型タバコの日本での使用ルールについて

日本での法律的な扱いとしては、原則として加熱式タバコはタバコの葉を使用しているので「タバコ」に入ります。他方、電子タバコはタバコの葉を使用していないので「タバコ」には分類されません。

ただ、2020年4月から全面施行される改正健康増進法では、経過措置として加熱式タバコは紙巻タバコに比べてやや緩い扱いになっています。大型の飲食店では、飲食しながらの紙巻タバコの喫煙が全面的に禁止される一方で、加熱式タバコは、喫煙室内であれば飲食しながら使用できます。

また、電子タバコに関しては法律で明確に年齢や使用場所を制限されてはいません。しかし、自治体や施設ごとにルールを設けているケースは多くあります。

このように新型タバコに関するルールははっきり定まっていない面があり、今後も変わっていくものと予想されます。

 

2. 新型タバコの健康に対する影響は?

結論から言えば、新型タバコによる健康への影響はまだはっきり分かっていません。なぜなら、がん、心筋梗塞、脳卒中、COPD(肺気腫)など多くのタバコに関連した健康被害はすぐに出るようなものではなく、結論づけられるほど十分なデータが集まってくるのには数十年を要するからです。新型タバコが日本でメジャーになってきたのは2015年頃からの話であり、まだまとまったデータが出てくる時期ではないのです。

とはいえ、何ひとつ分かっていないわけではありません。成分は異なりますが、加熱式タバコも電子タバコも有害物質を含むことがわかっています。

 

【新型タバコに含まれている有害物質】

タバコの種類 有害物質もしくは有害性が疑われる物質
加熱式タバコ タール、ニコチン、アクロレイン、アルデヒド類、ニトロサミン、アセナフテン、一酸化炭素など
電子タバコ グリコール類、アルデヒド類、揮発性有機化合物、多環形芳香族炭化水素、ニトロサミン、重金属、ケイ素粒子など

 

加熱式タバコは紙巻タバコと同レベルか、それ以上の有害物質を含むことが分かっており、吸えばこれらの物質が体内に取り込まれてしまいます

また、電子タバコはタールやニコチンを含まないため一見安全なように思えますが、有害性が疑われる物質が発生します。従来の紙巻タバコよりも有害性が低い可能性はあるものの、その程度に関しては現時点では分かりません。いずれにしても、タールやニコチンを含まない電子タバコであっても安全と言い切ることはできません

 

3. 新型タバコの副流煙は安全?

新型タバコからは煙はほとんど出ませんが、目に見えにくい細かい霧(エアロゾル)は出ています。新型タバコを吸っている人の吐く息にはエアロゾルが含まれており、見えにくいだけで副流煙(受動喫煙)は存在します。このエアロゾルには前述のような有害物質が含まれているので、新型タバコの副流煙も安全とは言い切れません。そのため、紙タバコと同様の使用場所、使用マナーとするのが無難と考えられます。

 

4. 新型タバコは禁煙の助けになる?

禁煙の補助として役立つかどうか検討した研究はいくつかありますが、あまり質の高い研究はなく、禁煙に役立ったとする報告と役立たなかったという報告の両方があります。現時点では、新型タバコを禁煙へのつなぎとして使用するのはあまり根拠のない使用方法ということになり、積極的にお勧めできるものではありません。

 

5. まとめ

ここまで、新型タバコを取り巻く環境、健康への影響、禁煙補助としての役割などを解説しました。健康被害に関するデータがちゃんと出てくるには数十年以上を要するため歯切れよく説明はできませんが、健康を損ねる可能性が十分にあるということは知っておいて欲しいと思います。

また、タバコ関連の規制について日本は世界で大きく遅れをとっており、世界の加熱式タバコのうち9割を日本で消費しているのが現状です。2020年には東京オリンピック・パラリンピックを控えていることもあり、このコラムを読んでタバコについてもっと多くの人に関心を持ってもらえれば幸いです。

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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