2018.10.12 | コラム

蛋白尿は腎臓からのSOS?健康診断で見つかった人はどうすればいいのか

蛋白尿を指摘された人は放置をせずに医療機関を受診してください

蛋白尿は腎臓からのSOS?健康診断で見つかった人はどうすればいいのかの写真

健康診断などで行われる尿検査を受けると身体の異常がみつかることがあります。今回は、尿検査で蛋白が出ていると指摘があった人に特に知って欲しい「腎臓の病気」を中心に説明をします。

1. 尿検査で蛋白が出ていると指摘されたら病院にいくべきなのか?

「尿に蛋白が出ている」と言われても、身体にどんなことが起こっているかは想像しにくいものです。また、蛋白が出ていると指摘されても自覚症状がないことが多いためか、精密検査を受けずにそのままにしてしまう人がいます。蛋白尿は病気が原因となっていることがあるので、病院で詳しく調べてはっきりさせておくことが大切です。

 

2. そもそも蛋白尿とは何なのか?

「蛋白」はタンパク質のことです。「炭水化物」や「脂質」とならぶ三大栄養素として聞いたことがあると思います。

タンパク質は身体の維持に必要なものです。身体にとって大切なタンパク質は尿にはごくわずかな量しか出ていかないようになっています。正常より多くのタンパク質が含まれている尿を「蛋白尿」と言い、正確には、1日に尿から出ていくタンパク質の量が150mgを超えた状態のことを指します。

 

3. 蛋白尿の原因で最も注意が必要なものは?

蛋白尿にはいくつか原因がありますが、なかでも最も注意しなければいけないものは「腎臓の病気」です。腎臓は尿を作る臓器で、尿には老廃物や余分な水分を身体の外に出す役割があります。腎臓の仕組みは、身体にとって不要なものを尿にして外に出し、必要なものは出来るだけ尿に出さないようになっています。

しかし、腎臓に異常が起こると、タンパク質のような身体にとって必要なものが、尿に漏れ出るようになります。つまり、蛋白尿は腎臓に異常が起こっているサインと言えるのです。

 

【蛋白尿の原因となる主な腎臓の病気】

  • 糖尿病性腎症
  • 腎硬化症
  • IgA腎症

 

上に挙げた病気は初期には自覚症状がほとんどないことが多いため、知らぬ間に進行して、腎臓の機能を損ねてしまうことがあります。症状がないからといって蛋白尿を放置するのではなく、病気が隠れていないかをきちんと調べることが大切です。

 

4. 蛋白尿を放置するとどんなことが起こりえるのか

では、腎臓の病気のサインとも言える蛋白尿を放置していると、どんなことが起こるのでしょうか。

まず、蛋白尿を放置していると、腎臓の病気に気づくのが遅れることがあります。腎臓の病気に気づけずにいると、時間の経過とともに腎臓の機能は徐々に低下していき、最終的にはその機能が失われてしまいます。

腎臓の機能が低下した状態を腎不全といいます。腎不全が最終段階まで進行すると、尿を作り出すことができなくなるので、身体に老廃物や水分が溜まってしまいます。そのため、血液透析や腹膜透析といった腎臓の代わりをする治療が必要になります。血液透析や腹膜透析は日常生活にとって大きな負担です。例えば、血液透析が必要になった人は1日もしくは2日おきに通院し、1回あたり4時間程度の治療を受け続けなくてはなりません。

蛋白尿が指摘された時点で、腎臓の病気を早期から見つけることができれば、治療によって腎臓の機能を長持ちさせることができます。

 

5. 決して侮れない蛋白尿の原因は病気だけではない

ここまでは、蛋白尿の原因として腎臓の病気の話を中心に説明してきました。蛋白尿はとても怖いものだと感じたかもしれません。侮れない蛋白尿ですが、実は、健康な人にも蛋白尿が現れることがあります。

よく知られているのは、長時間の起立や激しい運動によって一時的に現れる蛋白尿です。病気が原因ではない蛋白尿は生理的蛋白尿と呼ばれ、治療の必要はありません。ただし、尿検査の前に長時間の起立や運動をしていたとしても、蛋白尿が生理的なものかどうかは詳しく検査をしてみないとわかりません。

 

6. 蛋白尿を指摘された場合は放置をせずに精密検査を

蛋白尿は腎臓からのSOSであることが少なくありません。蛋白尿の原因になる腎臓の病気は、進行すると生活に支障が出てきますが、治療によって進行を遅らせることができます

蛋白尿を指摘された人は放置をせずに精密検査を受けてください。

 

参考文献

・「腎臓内科診療マニュアル」(浅野 泰/監修)、日本医学館、2010

・「標準泌尿器科学」(赤座英之/監 並木幹夫、堀江重郎/編)、医学書院、2014

・「泌尿器科診療ガイド」(勝岡洋治/編)、金芳堂、2011

・「異常値の出るメカニズム」(河合 忠/著)、医学書院、2018

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る