重症喘息に対するベンラリズマブによるステロイド内服薬の減量
多国籍の研究班が、重症の喘息に対してベンラリズマブの効果を調べた「ZONDA試験」の結果を医学誌『The New England Journal of Medicine』に報告しました。
ZONDA試験は、喘息のある18歳から75歳の患者で、血中の好酸球が150個/μl以上であり、治療のためステロイド内服薬など一定基準以上の薬を使用している人を対象とした研究です。
対象者220人がランダムに3グループに分けられました。
- ベンラリズマブを4週間ごとに注射するグループ
- ベンラリズマブを8週間ごとに注射するグループ(最初の3回は4週ごと)
- 偽薬を注射するグループ
研究参加時に使っていた喘息の治療薬はそのまま続け、ステロイド内服薬は一定のルールで減らすことと決められました。
効果判定のため、研究参加時と比べて28週時点でステロイド内服薬の量がどの程度減ったかが比較されました。
対象者の半数が75%以上減量
偽薬のグループでは、半数の人でステロイド内服薬を飲む量が最初の25%以上減りました。最も大きく減った人でステロイド内服薬は完全に中止されていて、最も大きく増えた人で150%増量されていました。
対して、ベンラリズマブを4週間ごとに注射したグループでは、半数の人でステロイド内服薬を飲む量が75%以上減りました。最も大きく減った人ではステロイド内服薬中止、最も大きく増えた人で100%増量でした。
ベンラリズマブを8週間ごとに注射したグループでは、半数の人でステロイド内服薬を飲む量が75%以上減りました。最も大きく減った人でステロイド内服薬中止、最も大きく増えた人で50%増量でした。
薬の副作用やその他の原因により現れた症状など(有害事象)のうち深刻なものは、偽薬のグループで14人(19%)、ベンラリズマブ4週間ごとのグループで7人(10%)、ベンラリズマブ8週間ごとのグループで7人(10%)に現れました。統計的には偶然としても説明のつく範囲でした。
重症の喘息にベンラリズマブは有効?
重症の喘息でステロイド内服薬を継続的に飲んでいる人に対して、ベンラリズマブによりステロイド内服薬の量を減らす効果の研究を紹介しました。
日本ではベンラリズマブは未承認です(2017年11月14日時点)。11月24日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会でベンラリズマブ(商品名ファセンラ®)の承認が審査される予定です。
喘息の治療では吸入ステロイド薬を中心に、必要に応じてさまざまな薬が加えて使われます。実際に試されたデータに基づいて、ベンラリズマブも今後の治療の中に位置づけられていくかもしれません。
執筆者
Oral Glucocorticoid-Sparing Effect of Benralizumab in Severe Asthma.
N Engl J Med. 2017 Jun 22.
[PMID: 28530840]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。