2017.07.10 | ニュース

腹痛・嘔吐で手術に、広島県67歳男性の腸がねじれていた原因は?

庄原赤十字病院から症例報告
from Journal of medical case reports
腹痛・嘔吐で手術に、広島県67歳男性の腸がねじれていた原因は?の写真
(C) style-photographs - iStock

脂肪腫は多くの人に現れます。脂肪腫があるだけでは通常症状がありませんが、周りの臓器に影響して症状を起こす場合もあります。脂肪腫が原因で腹痛や嘔吐があり、腹腔鏡手術で治療された人の例が報告されました。

広島県の庄原赤十字病院のチームが、腸間膜から発生した脂肪腫により小腸捻転が起こった人の例を、専門誌『Journal of Medical Case Reports』に報告しました。

この67歳男性は、1日続く吐き気・嘔吐、腹痛があり受診しました。

数年前からときどき腹痛などが現れて自然に治まることがありました。腹部の手術を受けた経験はありませんでした。

診察では腹部がわずかに膨らんでいました。

画像検査で小腸の捻転(ねじれ)、腸の拡張と、何かの塊が見つかりました。

画像上の特徴などから塊は脂肪腫と判断され、腹腔鏡手術が行われました。

 

腹腔鏡で観察したところ、ねじれた腸が見つかりました。また、大網(だいもう)というひだ状の臓器が、脂肪腫と見られる塊にからんでうっ血させている様子が見えました。脂肪腫は大きさ10cm程度で、腸間膜(ちょうかんまく)の中にあり、腹腔鏡で切除されました

術後6日で退院となりました。1年後まで再発や手術による問題は起こっていません。

 

脂肪腫とほかの内臓がからまることで症状が現れた人の報告を紹介しました。

脂肪腫は脂肪細胞から発生する良性腫瘍です。がんではなく、脂肪腫があるだけでは症状を起こすことも命に関わることもありません。

脂肪腫は多くの人に現れます。一生脂肪腫に気付かないままの人もいます。また、脂肪腫はさまざまな場所にできます。腸間膜というのは、腸を背中側に結び付けている臓器です。腸間膜は脂肪の多い厚いカーテンのような形をしています。

上で紹介した人は、腸間膜から脂肪腫ができていました。つまり、腸のすぐ隣に大きな塊ができたことで臓器がからまったと考えられます。

この人のように、脂肪腫が周りの臓器に影響したとしても、多くは手術などで対処可能です。この報告は腹腔鏡手術の手法(シングルポート手術)が新しい点としています。まれな事態も対処を含めた報告が集まることで将来の似た状況への備えとなります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

A small intestine volvulus caused by strangulation of a mesenteric lipoma: a case report.

J Med Case Rep. 2017 Mar 13.

[PMID: 28285596]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。