2017.06.27 | ニュース

糖尿病による足の潰瘍・切断を防げる治療はある?米政府機関が調査

文献の調査から

from AHRQ Comparative Effectiveness Review

糖尿病による足の潰瘍・切断を防げる治療はある?米政府機関が調査の写真

糖尿病は全身にさまざまな合併症を起こします。糖尿病神経障害は代表的な合併症のひとつです。足の切断などにも関係します。治療によって糖尿病神経障害の症状やほかの合併症を防ぐ効果が検討されました。

アメリカの政府機関である医療研究品質庁(AHRQ)が、糖尿病神経障害の症状を治療する方法糖尿病神経障害による合併症(引き起こされる問題)を防ぐ方法について効果と害を評価しました。

AHRQの研究班は、文献データベースを検索して関係する研究報告を集めました。
 

糖尿病の状態が長年続くと、全身の神経がダメージを受けます。これを糖尿病神経障害と言います。症状としてしびれ・痛み・感覚が鈍る、目の動きが悪くなる、ふらつきなどがあります。

糖尿病神経障害はさらに、足の潰瘍や切断、ふらつきによる転倒などの合併症にも結び付きます。

 

調査により、合併症の予防について62件、症状の治療について129件の研究報告が集められました。治療・予防効果の証拠が見つかった方法の中に以下のものがありました。

  • 厳しい血糖コントロールによって、2型糖尿病に対する標準的なコントロールに比べて足の切断を減らせる(中等度の質の証拠)
  • 医療用の履き物によって足の潰瘍の発生・再発を減らせる(中等度の質の証拠)
  • 家庭での足の皮膚温度の測定によって足の潰瘍の発生・再発を減らせる(中等度の質の証拠)
  • デュロキセチンベンラファキシンは糖尿病神経障害による痛みに短期的に有効(中等度の質の証拠)

デュロキセチンとベンラファキシンはどちらもSNRIという種類に分類される薬です。SNRIは抗うつ薬の一種ですが、痛みなどに対する効果も認められています。

厳しい血糖コントロールの副作用として低血糖など、SNRIの副作用として便秘・吐き気・眠気・めまいなどがありました。
 

糖尿病神経障害の治療の評価を紹介しました。

糖尿病治療の目的は合併症の予防です。糖尿病の状態が続くと、糖尿病神経障害のほか、糖尿病腎症、糖尿病網膜症などさまざまな場所に合併症が現れます。

合併症を防ぐためにまず血糖値を正常に近い範囲で維持することは大切です。しかし、努力しても長年のうちに合併症が進んでしまうことはあります。合併症に対する治療も大切です。

足を守る方法、痛みを和らげる方法についても紹介したような研究があります。効果が確かめられた方法をうまく使うことで、糖尿病による害を抑え、治療中の生活の役に立てることができます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Preventing Complications and Treating Symptoms of Diabetic Peripheral Neuropathy.

Comparative Effectiveness Review. Number 187. 2017 Mar 24.

https://effectivehealthcare.ahrq.gov/search-for-guides-reviews-and-reports/?pageaction=displayproduct&productID=2436

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る