2型糖尿病患者が厳しい生活制限をする研究
アメリカの研究で、2型糖尿病患者が体重を減らしたときの認知機能障害への影響が検討され、結果が専門誌『Neurology』に報告されました。
この研究は、肥満で2型糖尿病がある人を対象に、厳しい生活制限によって体重を減らし維持することによって、心筋梗塞や脳卒中などを防ぐ効果があるかを調べた研究の一部です。
55歳から76歳で、BMI(体重÷身長÷身長)が25以上の肥満がある2型糖尿病患者が対象となりました。対象者はランダムに2グループに分けられました。
- 生活制限をするグループ(介入群)
- 個人指導とグループセッションにより、参加時から7%以上の体重を減らして維持し、毎週175分の運動を続けることを目標とする。減量のために用意された食品や運動法、薬物治療を使ってもよい。
- 生活制限をしないグループ(対照群)
- 毎年3回の講習と社会的支援を受ける。
対象者の3,802人について、認知機能障害のテストが行われました。
軽度認知障害・認知症に差がない
認知機能障害を調査した時点で、対象者は平均して研究参加から11.4年経過していました。平均年齢は69.6歳でした。
介入群と対照群で、軽度認知障害(MCI)または認知症と思われる結果が出た人の割合は表のとおりでした。
グループ | 軽度認知障害 | 認知症と思われる |
介入群 | 6.4% | 1.8% |
対照群 | 6.6% | 1.8% |
軽度認知障害または認知症と思われる結果の割合について、統計的に差が確かめられませんでした。
ダイエットは何のため?
厳しく体重を減らす生活を11年以上続けても、認知機能障害を防ぐ効果は確かめられなかったという報告を紹介しました。
肥満はいくつかの病気につながる可能性があります。2型糖尿病は肥満と強く関係しています。しかし、あらゆる病気や加齢にともなう変化が肥満で説明できるわけではありません。
現在のところ、生活習慣によって認知症を防ぐ方法は知られていません。効果が確かめられていない方法を試してみるという考え方もできる一方で、厳しい生活制限は負担にもなります。
目的を考えれば、方法にこだわる必要はないのかもしれません。
執筆者
Effect of a long-term intensive lifestyle intervention on prevalence of cognitive impairment.
Neurology. 2017 May 23.
[PMID: 28446656]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。