2017.06.03 | ニュース

触って見つからない小さい乳がん、本当に怖いものなのか?

437人の生存率の統計

from Oncotarget

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乳がんが隠れているかもしれないと言われると怖くなるでしょうか?乳がんの一部は進行が非常に遅いことが知られています。触ってもわからず検査で見つかった乳がんの生存率が調査されました。

中国の研究班が、早期乳がんの生存率についての研究結果を、専門誌『Oncotarget』に報告しました。

乳がん検診では、症状がない女性にもマンモグラフィーX線(レントゲン)を用いて、乳房にがんがないかを調べる検査超音波検査空気の細かな振動である超音波を使った画像検査。体の奥の血管や臓器を観察することができるが行われています。症状がない人も対象として病気を見つけ出そうとする検査をスクリーニング病気の原因や程度ではなく、病気が有るか無いかをまず調べるための検査と言います。乳がんの診断には通常、マンモグラフィーや超音波検査に続いて、乳房の組織を針で刺すなどして取り出す生検病気(病変)の一部を採取すること。また、それを顕微鏡で詳しく調べる検査のこと。病気の悪性度の確認や、他の検査では診断が難しい病気の診断のために行われるが行われます。生検は非常に信頼度が高く、生検の結果によって診断が確定します。

この研究は、北京共和医院で2001年から2014年に乳がんを診断された女性を対象としています。スクリーニングにより4,574人の女性が生検を受け、うち729人は触ってもわからなかった乳がんと診断されました。

情報が不足していた30人を除いて、乳がんの進行度で分けた内訳は次のとおりでした。

  • DCIS 152人
  • T1 493人 うち
    • 両側T1 56人
    • 片側T1a 103人
    • 片側T1b 142人
    • 片側T1c 192人
  • T2 54人

DCIS(非浸潤性乳管無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがある)は、がん無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがあるの特徴を持っているものの、周りの組織に入り込んでいない(浸潤がない)状態のものです。ごく早期に当たると考えられます。

T1は、がんの大きさが2cm以下という意味です。T2は2cmから5cmです。T1はさらに5mm以下のT1a、1cm以下のT1b、2cm以下のT1cに分けられます。両側・片側というのは、左右の乳房のうち左右とも(両側)にがんがあったか、片側だけだったかを指します。

 

片側にT1の乳がんがあった437人の生存率を調べると次の結果が得られました。

触知できない乳がんの5年無病生存率は、T1aで99.0%、T1bで96.9%、T1cで92.9%であり、5年全生存率はT1aで100.0%、T1bで100.0%、T1cで97.9%だった。

診断から5年後までの生存率は、T1aの患者で100%、T1bの患者で100%、T1cの患者で97.9%でした。

診断から5年後まで生存し、かつ乳がんがない状態のままでいた割合は、T1aの患者で99.0%、T1bの患者で96.9%、T1cの患者で92.9%でした。

研究班はこれらの結果から「中国人女性においてスクリーニングで検出されるT1の触知できない乳がん低リスクのがんとみなすことができるかもしれない」と結論しています。

 

中国人女性を対象に、早期乳がんの生存率について調べた研究を紹介しました。

乳がんになる女性の数は人種によって差があり、白人で特に多い一方、日本など東アジアの国ではそれほどでもありません。中国のデータは東アジアという共通点から参考にできるかもしれません。

 

触ってもわからず検査ではじめて見つかったT1の乳がん5年生存率診断、治療開始から5年経過後に生存している患者の割合。命に関わるがんなどの病気で用いられることが多い数値が100%に近いという数字が挙がっています。「T1の段階で早期治療すれば効果が大きい」と解釈できるかもしれませんが、「危険性が低いので治療を縮小できる」という可能性についても考察する価値はあるでしょう。

ほかの研究では、DCISの一部を手術なしで治療しても、手術した場合と比べて乳がんによる死亡率に差がなかったとする報告もあります。

関連記事:乳がんには手術しなくていいものもある?DCISの治療と生存率の関連

 

乳がんはがんの中でも長期間の生存を期待しやすいがんです。また、乳がんが発生しやすい年齢は40歳以上です。日本では40歳以上の女性に対して2年ごとのマンモグラフィーが勧められています。

世界では検査の回数が多すぎても生存率向上には結び付かず、かえって過剰治療や心理的負担、費用負担などの悪い面が強く出るため、誰が何年ごとに検査を受けるのが最適かという議論が続いています。

 

「がんは怖い」と思うと、予防や治療のためにできることは何でもやろうと思えるかもしれません。しかし、乳がんの中には危険性の低いものもあります。検査をすればするほど「見つける必要のないもの」も見つかってきます。

マンモグラフィーで「乳がんかもしれません」と言われても絶望する必要はありません。冷静になるのは簡単ではありませんが、自分が置かれた状況をなるべく正確に把握するため、客観的な統計データを参考にしてください。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Tumor biology, clinicopathological characteristics and prognosis of screen detected T1 invasive non-palpable breast cancer in asymptomatic Chinese women (2001-2014).

Oncotarget. 2017 Feb 17. [Epub ahead of print]

[PMID: 28412736]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。 [執筆者一覧]