2017.04.02 | ニュース

転移した大腸がんの抗がん剤治療で、最初の薬が効かなかったらどうする?

文献の調査から

from The Cochrane database of systematic reviews

転移した大腸がんの抗がん剤治療で、最初の薬が効かなかったらどうする?の写真

転移がある大腸がんに対しては抗がん剤が重要な選択肢になります。しかし、最初の薬で十分な効果が得られない場合もあります。2番目に選ぶ薬としてこれまでに試されているものの結果がまとめられました。

文献を調査する方法により、転移がある大腸がんに対して2番目に使う抗がん剤の効果を調べた研究を紹介します。

この研究は、過去の研究データベースを検索して、関係する研究報告を収集しました。

調査範囲は、転移がある大腸がん(結腸直腸がん)に対して、最初に使った抗がん剤の効果が現れないか、治療中にさらに進行が見られたか、治療後に再発した患者を対象とする治療(二次治療)において、治療法をランダムに割り当てる方法で抗がん剤の効果と副作用を調べた研究としました。

 

採用基準を満たす34件の研究が見つかりました。得られたデータをまとめ、次の結果が得られました。

  • イリノテカンによる化学療法は余命を伸ばす効果がある。
  • FOLFOX療法は5-FU単独の化学療法よりも進行または死亡までの期間が長い。
  • イリノテカンとほかの薬剤を組み合わせるとイリノテカン単独よりも進行または死亡までの期間が長い。
  • 分子標的薬は、従来の化学療法に追加を検討して使うことで、余命を伸ばす効果がある。
    • ベバシズマブ(分子標的薬のひとつ)は単独でも進行または死亡までの期間を伸ばす効果がある。
  • 抗がん効果が高い治療法は副作用も悪化する傾向にある。
    • 例外として、化学療法にベバシズマブを加えても、深刻な副作用が疑われる症状などは統計的に増加が見られていない。

FOLFOX療法とは、5-FU、ロイコボリン(レボホリナート)、オキサリプラチンの3種類を組み合わせた化学療法です。

分子標的薬とは、近年開発が進んでいる抗がん剤のタイプの総称です。分子標的薬はがんに特徴的な物質と結び付いて作用を現します。大腸がんに対してもベバシズマブ、ラムシルマブ、セツキシマブ、パニツムマブなどの分子標的薬が使われます。

 

二次治療としての抗がん剤の効果についての研究を紹介しました。

抗がん剤の効果は人によって差があり、一次治療だけで無症状を維持できない場合は少なくありません。二次治療の効果を見積もることは多くの人に関係あることです。

大腸癌研究会による『大腸癌治療ガイドライン』でも「使用禁忌がなければ、二次治療において分子標的治療薬を併用することを考慮する」など、二次治療としての抗がん剤治療は一般に推奨できるものと位置付けられています。上に紹介した研究は、その裏付けとなるデータを改めて要約しています。

二次治療を選ぶには、一次治療で使った薬によっても判断を変える必要があります。一次治療などに応じて適切と思われる二次治療が選ばれていれば、ここで紹介したように、効果を期待できる選択肢はあります。適切な緩和治療とともに、一次治療の結果が思わしくなくてもあきらめず二次治療を始めることは十分合理的な選択です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Second-line systemic therapy for metastatic colorectal cancer.

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jan 27

[PMID: 28128439]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る