2017.01.29 | ニュース

腸内細菌が膨満感・げっぷ・腹鳴の原因に?駆除してよくなった例も

患者38人の検査から

from Journal of neurogastroenterology and motility

腸内細菌が膨満感・げっぷ・腹鳴の原因に?駆除してよくなった例もの写真

腸内細菌は病気の原因にもなります。目に見える病気がないのに胃腸の症状が出ている人38人を検査した結果、一部で細菌が異常に増殖している様子が見つかり、抗生物質で改善が得られたことが報告されました。

島根大学の研究班が、薬の治療をしても胃腸症状が続いている人38人に対して、腸内細菌が異常に増殖した状態の検査をした結果を『Journal of Neurogastroenterology and Motility』に報告しました。

対象となった38人は「機能性胃腸障害」と判断された人です。機能性胃腸障害とは、機能性ディスペプシア、呑気症、過敏性腸症候群などの病気の総称です。

機能性胃腸障害では、胃腸に目に見える病気がないにもかかわらず、食べ物を消化し送り出す機能がうまく働かず症状が現れます。原因の一部に腸内細菌が関わっているという説があります。

この研究では、実際に腸内細菌の異常を検査で確かめることで、機能性胃腸障害と腸内細菌の関係を調べています。薬の治療を4週間以上続けたにもかかわらず症状が続いている人が対象とされました。

 

小腸細菌異常増殖という状態がさまざまな病気につながるという説があります。小腸に住み着いている細菌は、普通は体の免疫システムと相互作用して一定の量に維持されています。しかし、何らかの原因で腸内細菌が異常に増えてしまうことがあります。

小腸細菌異常増殖を見つけるための検査に、呼気水素濃度検査があります。ブドウ糖(グルコース)を飲んだあとで、吐く息(呼気)の成分を調べます。

体内や胃腸の中には水素分子はごく微量にしか存在しません。腸内細菌がブドウ糖を分解するとき、微量の水素が発生します。腸内で発生した水素の一部は吐く息に混ざります。このため、吐く息の水素の量を調べることで、腸内細菌が異常に増殖して水素を発生させていることを推定できます。

この研究では、呼気水素濃度検査で小腸細菌異常増殖と診断された場合、抗生物質のレボフロキサシンで7日間治療することと決められました。レボフロキサシンは腸内細菌を減らすことが予想できます。

 

呼気水素濃度検査で水素濃度が高く、小腸細菌異常増殖と診断された人が2人いました

1人は機能性ディスペプシアと診断されていた50歳女性でした。主な症状はお腹が鳴ること(腹鳴)でした。レボフロキサシンを飲む前は、重症度のスコアが75点中17点(数字が大きいほど重症)でしたが、レボフロキサシンを飲んだあとは8点にまで改善しました。

1人は機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群が重複していると診断されていた69歳女性でした。主な症状はお腹の膨満感とげっぷでした。レボフロキサシンを飲む前は重症度が32点でしたが、レボフロキサシンを飲んだあとは26点にまで改善しました。

 

胃腸の症状があった人の一部に小腸細菌異常増殖が見つかったという報告でした。

腸内細菌が症状を起こしていたと仮定すると、レボフロキサシンで改善があったことの説明がつきます。少数の例ですが、腸内細菌が胃腸の症状を起こしている場合もあるかもしれないと考える材料になります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Small Intestinal Bacterial Overgrowth in Patients with Refractory Functional Gastrointestinal Disorders.

J Neurogastroenterol Motil. 2016 Jan 31.

[PMID: 26554916]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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