2017.12.17 | ニュース

検査異常のない腹痛・不快感に胃酸を減らす薬は効く?

文献の調査から
from The Cochrane database of systematic reviews
検査異常のない腹痛・不快感に胃酸を減らす薬は効く?の写真
(c) LittleBee80 - iStock

腹部の痛みや不快感があるのに内視鏡などの検査で異常が見つからない状態を機能性ディスペプシアと言います。治療薬として使われ、胃酸を減らす作用のあるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の効果について、文献の調査が行われました。

機能性ディスペプシアに対するPPIの効果

カナダの研究班が、機能性ディスペプシアに対するPPIの効果について、これまでの研究データの調査を行い、結果を『The Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。

この研究は、過去の研究を検索して集め、内容を吟味してまとめたものです。16歳以上で機能性ディスペプシアを適切に診断された人に対して、PPIとその他の治療や偽薬を比較して、2週間以上の治療による効果を調べた研究を調査対象としました。

 

11人に1人で症状改善効果

調査の結果、関係する25件の研究が見つかりました。

18件の研究から、偽薬とPPIを比較した結果として統合できるデータが得られました。

偽薬に比べて、PPIを使用したグループのほうが消化不良症状が改善する割合が高く、PPIを使用することによっておよそ11人に1人の割合で消化不良症状改善の効果を得られると見積もられました。

PPIに消化管運動機能改善薬を加えた場合とPPIだけの場合を比較した2件の研究のデータから、消化管運動機能改善薬を加えても加えなくても、消化不良症状の改善に大きな違いはないと見られました。

 

副作用についても調べたところ、副作用やもともとの病気の悪化などによって現れた症状など(有害事象)の件数は、消化管運動機能改善薬とPPIの組み合わせを消化管運動機能改善薬のみと比較した2件の研究で、PPIを加えた場合のほうが少なくなっていました。

研究班は結論として「PPIが機能性ディスペプシアの治療に有効である証拠がある」と記しています。

 

機能性ディスペプシアにPPIは有効?

機能性ディスペプシアに対するプロトンポンプ阻害薬(PPI)の効果の調査を紹介しました。

機能性ディスペプシアは人によってさまざまな原因があると考えられます。生活習慣を変えるなどの方法で症状が改善する人もいます。薬物治療の中でもPPIのほか状況に応じた薬剤の選択肢があります。

薬の効果を予想して治療法を選ぶうえでは、研究から示されたデータが要約されていることで参照しやすくなり、判断の助けとすることができます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Proton pump inhibitors for functional dyspepsia.

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Nov 21.

[PMID: 29161458]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。