早期乳がんの「放射線部分照射」は普通の放射線療法より再発が多いかもしれない

早期乳がんの治療法として、乳房温存手術のあとに再発を防ぐ目的で放射線療法を行うのが一般的です。照射範囲を狭くする「部分照射」も一部で行われています。しかし、部分照射でむしろ悪化する面が見られたことが報告されました。
◆最近までの研究データを収集
部分照射は、その原理から、正常組織に当たってしまう放射線の量を少なくすることが期待されます。一方で、放射線を照射しない部分からの再発が増えること、1回あたりの照射量が多いことによる影響が出ることも懸念されます。
ここで紹介する研究は、早期乳がんに対して乳房温存手術を行ったあと、実際に部分照射と従来の全乳房照射を使ったときの結果を比較しています。
研究班は、複数の文献データベースから最新で2015年6月までの範囲を参照し、関係する研究報告を集めました。
◆再発が多く美容に悪影響?
調査により集まったデータをまとめた結果、次の点については部分照射と全乳房照射に違いが見られませんでした。
- 全体としての生存率
- 乳がんによる死亡率
- 晩期皮膚毒性
- 乳房の痛み
以下の点については部分照射のほうが悪い結果が出ていました。
一方、部分照射のほうが良い点として、急性皮膚毒性が少なくなっていました。
研究班は部分照射に良い点と悪い点の両方が見られたことから、「決定的な結論を出すことができない」としています。
結論は出されませんでしたが、単純に照射範囲が狭いほうが害が少ないとは言えないようです。実際の結果がまとめられていることで、原理だけでは予想できない危険性を把握し、治療法を選ぶための材料とすることができます。
執筆者
Partial breast irradiation for early breast cancer.
Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jul 18.
[PMID: 27425375]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。