2016.03.07 | ニュース

いつか日本にも?毎年89,000人の命を奪う感染症「類鼻疽」の危険性

全世界の集計から

from Nature microbiology

いつか日本にも?毎年89,000人の命を奪う感染症「類鼻疽」の危険性の写真

類鼻疽は類鼻疽菌という細菌が原因で起こる感染症で、発熱や咳などの症状があり、死因にもなります。全世界の地域ごとに類鼻疽菌の危険性が推定されました。

◆人間、動物ともに感染

類鼻疽菌は東南アジアなどでは土の中に広く住み着いています。日本では流行はありませんが、流行地域では人間、家畜ともに感染して発症します。類鼻疽菌は多くの種類の抗菌薬に耐性で、治療に使える薬剤は限られています。発症して有効な抗菌薬が使われなかった場合、70%以上が死亡するとも言われます。

研究班は、全世界の人間と動物の類鼻疽の報告を集計し、地域ごとに報告されていない感染があることも想定した数理モデルを作成しました。

 

◆毎年89,000人が死亡

推計から次の結果が得られました。

全世界で年間にヒト類鼻疽の症例は165,000例(95%信用区間68,000-412,000)あり、うち89,000人(36,000-227,000)が死亡していると推定する。

全世界で毎年165,000人に類鼻疽が発生し、うち89,000人が死亡していると見積もられました。

研究班は、現在感染がない地域のうちでも、感染が起こっている台湾に環境が似ている沖縄県や鹿児島県を挙げて、日本にも将来類鼻疽菌が定着する可能性を指摘しています。同様にアメリカも一部の地域はカリブ海諸国と似た環境があることを指摘しています。

現在も発生を続けている類鼻疽と、将来のさらなる危険性について、研究班は「推定される症例数の多さと死亡率は、公衆衛生機関および政策決定者が類鼻疽に対する注意を新たにするだけの意義がある」と結論しています。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Predicted global distribution ofBurkholderia pseudomallei and burden of melioidosis.

Nat Microbiol. 2016 Jan 1.

[PMID: 26877885 ]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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