◆降圧薬の効果を3つの要因から検討
今回の研究では、過去の文献からデータを集める方法により、以下の関連が検討されました。
降圧薬が心臓や血管の病気(心筋梗塞や脳卒中など)のリスクを下げる効果は、
- 薬を飲み始めたときの血圧の程度
- 糖尿病や腎臓病などの持病
- 薬の種類
によって変わるのか。
123件の文献が集まり、613,815人のデータが解析されました。
◆高血圧の程度や持病、薬の種類に関係なく降圧薬でリスクは下がる
降圧薬によって血圧が10mmHg下がるごとに、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが20%、死亡リスクが13%下がりました。
この効果は、ほぼ持病に関係なく、また、どんな種類の降圧薬でも見られました。
ただし、以下の違いが見られました。
- 糖尿病と慢性腎臓病を持っている人では効果が弱い
- カルシウム拮抗薬は脳卒中の予防効果が強く、心不全の予防効果が弱い
- 利尿薬は心不全の予防効果が強い
- β遮断薬は心臓や血管の病気・腎不全の予防効果が弱い
結果について、研究チームは「収縮期血圧を130mmHg未満に下げること、心筋梗塞や脳卒中のリスクの高い人に降圧治療を提供することが強く支持された」と説明しています。
降圧薬は、飲み始めたときの血圧の程度に関係なく心筋梗塞や脳卒中のリスクを下げることが示されました。イギリスの高血圧治療ガイドラインでは、140/90mmHg以上などの条件を満たす場合で降圧治療が推奨されています。この研究ではさらに低い血圧が提示されました。次回のガイドラインの改訂にこの研究結果が反映されるのか、気になるところです。
執筆者
Blood pressure lowering for prevention of cardiovascular disease and death: a systematic review and meta-analysis.
Lancet. 2015 Dec 23. [Epub ahead of print]
[PMID: 26724178]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。