2015.11.08 | ニュース

目薬で糖尿病性網膜症を予防できるか?

スペイン、マウスの実験で検証

from Diabetes

目薬で糖尿病性網膜症を予防できるか?の写真

糖尿病によって起こる病気(合併症)の中でも代表的な糖尿病性網膜症は、失明の原因にもなります。糖尿病治療薬の一種であるGLP-1受容体作動薬の点眼で糖尿病性網膜症を治療する方法が研究されました。

◆糖尿病マウスの網膜を観察

リラグルチド、リキシセナチド、エキセナチドなどのGLP-1受容体作動薬は、体内にあるGLP-1という物質に似た働きをする薬です。GLP-1は血糖値を下げる作用のほか、神経を保護する作用があると言われています。

この研究は、糖尿病性網膜症で起こる神経の変化を、GLP-1受容体作動薬によって抑えることができるかどうかに着目して行われました。

研究班は、糖尿病を起こす遺伝子変異を持ったマウスを使い、GLP-1受容体作動薬を全身に与えた場合と点眼した場合とで、それぞれ網膜の神経の変化を観察しました。

 

◆リラグルチド点眼で神経の変化を抑制

次の結果が得られました。

[...]GLP-1受容体作動薬(リラグルチド)の全身投与が網膜の神経変性(グリア細胞の活性化、神経細胞のアポトーシス、網膜電図の異常)を防ぐことを示した。

生来のGLP-1および、いくつかのGLP-1受容体作動薬(リラグルチド、リキシセナチド、エキセナチド)の局所投与により、類似した神経保護作用が見られた。特記すべきことに、この神経保護作用は血糖値の減少なく観察された。

リラグルチドなどのGLP-1受容体作動薬を点眼することで、網膜の神経の変化が少なくなる効果が見られました。点眼でこの効果が見られたとき、血糖値は下がっていませんでした。

 

動物実験の結果が人間にも当てはまるとは限りません。また、この研究で見られた作用が糖尿病性網膜症の予防や治療として実際に効果を表すかは別に検証しなければわかりません。

この実験だけで言えることには限界がありますが、GLP-1受容体作動薬は、血糖値を下げるだけでなく、網膜の変化に対しても影響があるのかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Topical administration of GLP-1 receptor agonists prevents retinal neurodegeneration in experimental diabetes.

Diabetes. 2015 Sep 17 [Epub ahead of print]

[PMID: 26384381]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る