2015.11.01 | コラム

実は多種多様、手術に使う糸(手術用器械シリーズ④)

手術に使用する縫合糸の解説
実は多種多様、手術に使う糸(手術用器械シリーズ④)の写真
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手術に使用される糸はどのような特徴があるのでしょうか?ただの糸ではない、手術に合わせて色々と考えられている糸の特徴を解説します。

シリーズ第三弾では針について解説しましたが、今回は糸について解説したいと思います。

手術用に使用される糸は縫合糸と呼ばれ、様々な方法で使用されます。中でも主に2通りの用途があります。一つは糸のみで血管などを結んで止血に使用する方法、もう一つは第三弾で解説した針の穴に通して縫うために使う方法です。針のみの製品は、この糸が無いと全く役に立たず、針と糸をセットで使用します。手術で使われる糸にも、裁縫用とは異なる特徴があります。

 

◆糸の材質

糸の材質は多種ありますが、特徴をもとに大きく2つに分類されます。

  • 吸収性縫合糸:体内で使用された際に、体内で溶けて吸収される糸のこと。縫った部位が、時間の経過と共に修復されて癒合(くっつく)し、糸が吸収された後も縫合部の離開(ひらく)が無いと判断される場所に使用される。吸収されるまでの期間は製品の種類によって異なり、約40日〜約240日と幅がある。使用部位に合わせて、縫合部位が癒合するであろう期間を考慮して種類が選択される。合成材料で作られる。抜糸が不要。
  • 非吸収性縫合糸:体内で溶けて吸収されず、長い期間にわたって組織を縫い合わせたままその場に残る糸のこと。血管の縫合や吻合などに使用されることが多い。素材は絹、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンなど様々。近年では天然の素材よりも合成素材が使用されることが多い。皮膚の縫合に使用される場合、抜糸が必要。

 

◆糸の構造

糸の構造は大きく2種類に分けられます。

  • 編糸(ブレイド糸):複数のフィラメント(繊維)を編みこんだ糸。しなやかで扱いやすく、結び目が比較的緩みにくい。繊維を編み込んでいるため、組織内を通る時の抵抗が大きい。編み目に細菌などが入り込む可能性がある。
  • 単糸(モノフィラメント糸):一つのフィラメントからなっている。表面がなめらかで滑りが良く、組織内を通る時の抵抗が少ない。編み目が無いため細菌の入り込みが少ない。編糸と比べるとコシが強くて扱いにくく、結び目が緩みやすい。

 

◆糸の太さ・長さ

使用する部位や縫合方法に合わせて太さや長さは多種多様です。

  • 太さ:糸の太さは数字で表される。最も太いものは5で、直径は約0.7mm前後。細くなるにつれて、5>4>3>2>1と数字は下がっていき、0以下は0(=1-0)>2-0>3-0という表記になる。最も細いもので10-0まである。0の直径は0.35mm前後、10-0になると0.025mm前後ほどの細さしかなく、髪の毛より細く、ほこりと見間違えるくらいの細さになる。これは細い血管の縫合等に使用される。
  • 長さ:短いものが45cmくらいで、70cm、90cmなど種類によって様々。一針のみの使用なら短いものを使うが、連続して長い距離を縫う場合には長いものを使用する。

糸を単品で使用する場合は4-0くらいまでで、それ以下は針と糸が一体になっているタイプのものが主に使用されています。

 

糸にコーティングが施され、滑りの良くなった編糸や、感染のリスクを低減するために抗菌剤でコーティングされたものなど、近年様々な工夫がされており、その分種類も豊富になっています。単純に縫えればいいのではなく、縫う目的や組織、患者さんの状態まで考慮され、適切な糸が選択されています。

次回は、針と糸が一体になっているものについての解説をします。

執筆者

名原 史織

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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