2015.09.20 | コラム

影の立役者!つまむ・はさむ器械の種類(手術用器械シリーズ②)

鑷子・鉗子の種類と用途に関する解説
影の立役者!つまむ・はさむ器械の種類(手術用器械シリーズ②)の写真
(C) NS

手術に使用するための器械について解説するシリーズ第二弾は、つまむ・はさむための器械の解説です。手術における「つまむ・はさむ」とはどのような意味で、どのような器械が使われているのでしょう?

手術における「つまむ・はさむ」とはどのような手技の事をいうのでしょうか?

手術の進行において、つまむ操作は頻繁に行われています。例えば、臓器を包んでいる薄い膜を切るとき、そのまま電気メスやはさみなどで切ろうとすると臓器を傷つけてしまう恐れがあります。そこで、器械を使って膜をつまみあげて臓器と膜の間に隙間を作り、切る操作をしやすくします。

はさむ操作は、例えば血管を切る必要があったとき、そのまま切ったら血が出ます。そこで、切る前に血管を二ヶ所器械ではさんで血流を止め、その間を切る事によって出血を予防します。

では、これらの操作に使われる器械をご紹介します。

 

◆鑷子(せっし)

鑷子とは、ピンセットの事です。主に何かをつまむための器械ですが、先端の形状や鑷子自体の長さなどの違いにより、使う部位や用途が異なります。具体的な鑷子の種類をご紹介する前に、「鈎(こう)」について解説します。

とは、カギ状・爪状の突起の事を言い、器械の先端内側に、鈎の有るもの(有鈎)と無いもの(無鈎)があります。組織をよりがっちりと強く掴みたい場合は有鈎、優しく繊細につまみたい場合は無鈎を使います。これを踏まえ、具体的な種類をご紹介します。

  • 有鈎鑷子:名前の通り、鈎の有る鑷子。皮下組織や筋肉など、強い組織をつまむために使う。
  • 腸鑷子:名前の通り、腸をつまむ無鈎鑷子。先端の内側には、洗濯板のような浅い溝が掘られている。優しくつまめるため、組織の損傷が少ないが、滑りやすい。
  • 止血鑷子:先端が細く尖った無鈎の鑷子。出血している血管を直接つまみ、電気メスで通電するなど、止血に使用する。
  • ドゥベーキー鑷子:先端は細めで、内側に、ごく微細なサメの歯のような突起が並んでいて滑りにくい。薄い膜や血管など、組織を繊細につまむのに適している。

 

◆鉗子(かんし)

鉗子ははさみのような構造ですが、はさみと違って先端が刃になっていないので、はさんでも切れずに把持する事ができます。ストッパー(ラチェットと呼ぶ)が付いているため、手を離しても把持力をキープできます。前述したように血管をはさんで血を止めたり、組織をはさんで引っ張って手術操作をしやすくしたり、膜を剥がすなど、はさむ以外の様々な用途にも使用されます。膨大な種類の鉗子がありますが、いたってベーシックなものをご紹介します。

  • ペアン:先端が腸鑷子のようになっており、無鈎。最もスタンダードな鉗子。同じ構造で違う長さの器械がある。小さい順に、モスキートペアン(全長約12cm)、ペアン(約14cm)、リスター(約16cm)、ケリー(約20cm)などと、異なる名前が付いている。基本的な使用方法は同じで、手術部位の深さによって使い分ける。
  • コッヘル:ペアンと同じ構造で、先端に鈎が付いている。コッヘルにも異なる長さの物があるが、長い物の使用頻度は低い。これは、鈎があると血管を傷つけ、出血のリスクがある為、臓器や血管周囲の繊細な操作には使用されず、皮下組織や筋などの浅い層に使用されることが多いからである。

 

鑷子や鉗子は膨大な数の種類があり、手術科や部位、術式、深さなどの使用目的によって使い分けれらます。また、執刀医によって同じ用途でも器械の好みが違ったりするので、それも把握して準備することが必要です。有鈎を無鈎と間違えて使用した場合、前述したように血管損傷で出血のリスクがあるなど、器械の選択ミスが手術の安全を左右します。その為、正しい器械の選択や準備が必要で、医師も看護師も広い知識や判断力、集中力を要します。

執筆者

名原 史織

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

MEDLEYニュース新着記事