排便障害を改善できるか?仙骨神経刺激の効果とは
末梢神経障害などさまざまな原因で、便が漏れる(便失禁)症状が現れます。治療法のひとつに、ペースメーカーのような電気信号を出す装置を埋め込んで神経を刺激する方法があります。その効果について、これまでの研究の結果がまとめられました。
◆仙骨神経刺激による便失禁または便秘の改善を検討
この研究は、排便に関わっている仙骨神経に電気刺激を与える仙骨神経刺激によって、便失禁または便秘の症状を改善する効果を調べるため、これまでに行われた研究の結果をまとめました。
◆便失禁に効果あり
見つかった8件の研究のうち、6件で便失禁に対して、2件で便秘に対して効果が検討されていました。
便失禁に対する効果を報告した4件の研究結果は次のようなものでした。
深刻な便失禁のある、仙骨神経刺激群の53人の参加者は、最適な内科治療を受けた対照群に比べてより少ない便失禁のエピソードを経験した(3か月で平均差-5.20、95%信頼区間-9.15から-1.25、12か月で平均差-6.30、95%信頼区間-10.34から-2.26)。
便失禁のある仙骨神経刺激群の15人の参加者は経皮的脛骨神経刺激群に比べてより少ない便失禁のエピソードを経験した(3か月で平均差-3.00、95%信頼区間-6.61から0.61、12か月で平均差-3.20、95%信頼区間-7.14から0.74)。
便失禁のある2人の参加者について、週当たりの便失禁エピソードは「オフ」期間で平均6回、「オン」期間で平均1回報告された。
便失禁のある14人の参加者が、週当たりの便失禁エピソードは「オフ」期間に比べて(8.4回、標準偏差8.7回)「オン」期間で
有意 に少なく(1回、標準偏差1.7)なることを経験した。
ほか1件の研究では参加者の一部に効果が見られましたが、残りの参加者には仙骨神経刺激を行わないときのほうが便失禁が少ないという結果でした。1件の研究では違いが見られませんでした。
便秘に対して明らかな効果を示した研究はありませんでした。
安全性について、報告された出来事としてインプラントした場所の痛み、漿液腫、チクチクした感じ、足の痛み、
研究班は「採用された試験から得られる限られた根拠から、便失禁のある患者の一部に対しては、仙骨神経刺激が排泄抑制能力を改善しうることが示唆される」と結論しています。
便失禁は社会生活の大きな妨げになり、手術による治療もありますが、やはり生活に負担がかかります。この結果は仙骨神経刺激の有効性を確立するには及ばないまでも、治療法を選ぶうえで参考になるかもしれません。
執筆者
Sacral nerve stimulation for faecal incontinence and constipation in adults.
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Aug 24
[PMID: 26299888]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。