2015.09.11 | ニュース

医療行為によりアルツハイマー病の原因物質が脳に侵入?

4人に中等度以上のアミロイドβを発見
from Nature
医療行為によりアルツハイマー病の原因物質が脳に侵入?の写真
(C) Juan Gärtner - Fotolia.com

アルツハイマー病の原因ははっきりわかっていませんが、脳の一部にアミロイドβという物質が沈着することが関わっていると考えられています。他人から伝わった物質がもとでアミロイドβの沈着が起こった可能性があると見られた人の例が報告されました。

病気を起こす物質が人から人へ伝わりうる例として、クロイツフェルト・ヤコブ病など、「プリオン」というタンパク質によって起こる病気が知られています。

過去には人間の脳から取り出した物質を使う成長ホルモン製剤にプリオンが混入したことにより、その薬を使った人に何十年も経ったあとで医原性クロイツフェルト・ヤコブ病(iCJD)が発症した複数の例が知られています(医原性とは、医療行為が原因ということ)。この製剤は現在では使われていませんが、iCJDに苦しむ患者はまだ生存しています。

 

◆8人のiCJD患者の解剖

研究班は、プリオンによる病気の研究で、iCJDの患者8人(年齢は36歳から51歳)の死後に、脳の解剖を行いました。その結果、次のことが見られました。

予期せぬことに、iCJDの患者8人(年齢は36歳から51歳)の解剖検査において、4人に中等度から重度の灰白質および脈管のアミロイドβ病理所見があった。

iCJD患者8人中4人に、中等度以上のアミロイドβの沈着が見られました。この4人の年齢は、アルツハイマー病が多い年齢よりも若く、また若い年齢で発症するアルツハイマー病の原因と考えられている遺伝要因も見つかりませんでした。

さらに2人には部分的にアミロイドβの沈着が見られ、別の1人からもアミロイドβが見つかり、完全にアミロイドβが検出されなかったのは1人だけでした。

 

◆アルツハイマー病は他人から伝わるのか?

研究班は、「[...]この発見は、手術器具や血液製剤など、ほかの既知の医原性プリオン伝達の経路が、神経変性疾患で見られるアミロイドβやその他のタンパク質構造疾患の原因物質にも関係するかどうかについて熟考を促すべきである」と述べています。

つまり、アルツハイマー病と関係するアミロイドβのように、病気と関係する物質が、プリオンのように医療行為を介して人から人へと伝わる可能性が言及されています。

 

しかし、この考えは仮説に過ぎません。ここで報告された症例でも、見つかったアミロイドβが成長ホルモン製剤に含まれていたものに由来するという証拠はなく、iCJDと関係するほかの原因によりアミロイドβの沈着が促された可能性もあります。

また、対象者に生前認知症の症状はなく、ここで見られたアミロイドβの沈着が将来認知症の原因となりえたかはわかりません。

過去の研究でも、iCJDの原因とされた人間由来の成長ホルモン製剤を使った人の中でアルツハイマー病の頻度が高いとは言えなかったとする2013年の報告が、この論文の中で紹介されています。

ここで報告された結果は、アミロイドβのふるまいをより明らかにし、アルツハイマー病の治療に結びつける試みの中で、ひとつの論点になりうるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Evidence for human transmission of amyloid-β pathology and cerebral amyloid angiopathy.

Nature. 2015 Sept 9 [Epub ahead of print]

[PMID: 26354483 ] http://www.nature.com/nature/journal/v525/n7568/full/nature15369.html

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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