コレステロール値が高いと脳卒中による死亡は増える?減る?

脂質異常症は、脳卒中のうちでも特に脳梗塞については悪影響があると考えられ、『脳卒中治療ガイドライン2015』では、LDLコレステロールを減らす治療が勧められています。その根拠のひとつとなる1989年の論文を紹介します。
◆コレステロールと脳卒中の関連を検証
今回の研究では、350,977名の男性を6年間追跡調査し、血中のコレステロール値と脳卒中(脳出血、脳梗塞など)発症との関連性を検証しました。
◆コレステロール値と非出血性脳卒中による死亡には関連あり
調査の結果、コレステロール値が高いと脳出血などの出血による死亡が少ないという関連が見られましたが、脳梗塞などについては以下のことが見られました。
一方、血清コレステロール値と非出血性脳卒中による死亡には正の関連が見られた(p=0.007)。
血清コレステロール値と頭蓋内出血による死亡リスクの負の関連は拡張期血圧が90mmHg以上の男性に限られ、これに当てはまる人では頭蓋内出血による死亡が相対的に多かった。
コレステロール値が高いと脳出血などの出血による死亡リスクは減る一方で、出血ではない脳梗塞などによる死亡リスクは高くなるという結果でした。
出血による死亡について詳しく見ると、コレステロール値が高いことと出血による死亡の減少に関連があったのは、特に出血による死亡が多い、血圧が高い男性に限られていました。
筆者らは、「中年のアメリカ人男性において、血中コレステロール値と出血性脳卒中から死に至るリスクの間には負の関連性がある。しかし、そのことの公衆衛生におけるインパクトは、血清コレステロール値がより高いことと非出血性脳卒中および全心血管疾患(ICD-9分類390-459)による死亡の正の関連性によって圧倒される。」と述べています。
つまり、コレステロール値が高いと脳出血などが少なくなる一方、脳梗塞などが多くなる効果のほうが大きいという結論です。
コレステロール値を下げるための治療法については、別の機会に紹介します。
執筆者
Serum cholesterol levels and six-year mortality from stroke in 350,977 men screened for the multiple risk factor intervention trial.
N Engl J Med. 1989 Apr 6
[PMID: 2619783]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。