体に鉄がたまるヘモクロマトーシスを改善した薬は?

ヘモクロマトーシスは、鉄の代謝の異常により、体に過剰な量の鉄が蓄えられてしまい、肝臓などさまざまな臓器の障害が起こる病気です。治療には血液を体から抜き取る瀉血という方法がありますが、薬の使用と瀉血が必要な回数に関連が見られました。
◆遺伝性ヘモクロマトーシスの患者データを比較
ヘモクロマトーシスの多くは遺伝によって起こり、鉄が過剰な状態が続くことで肝硬変や心不全の原因になると考えられています。過去の研究で、体の中の鉄の量を一定の範囲に収めるよう瀉血を繰り返す治療の期間中、胃酸の分泌を抑える薬であるPPIを使った人では瀉血の回数が減っていたことが報告されていました。
研究班は、特定の遺伝子変異を持っている患者の診療データを使って統計解析を行い、PPIの使用期間と瀉血の回数の関係を調べました。
◆2年使用で減少
次の結果が得られました。
PPIを2年以上使い続けている患者は、ペアグループの患者のPPI使用開始前に比べて必要な瀉血の回数が
有意 に少なかった(1.25 vs 3.17、P<0.001)。
PPIを2年以上使い続けている人では、PPI開始前の人と比べて瀉血の回数が少なくなっていました。
この結果から、PPIがどのようなしくみで影響を与えたのかはわかりませんが、PPIは胃の中で食べ物から鉄が吸収されにくくする作用があると言われており、そのことが関係しているかもしれません。
PPIは胃潰瘍などの治療で使われますが、ヘモクロマトーシスの治療薬としては広く認められていません。より効果的な治療のため、この結果が参考になるかもしれません。
執筆者
Proton Pump Inhibitors Reduce the Frequency of Phlebotomy in Patients with Hereditary Hemochromatosis.
Clin Gastroenterol Hepatol. 2015 Jul 31 [Epub ahead of print]
[PMID: 26240005]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。