◆2005年から2012年の記録を解析
研究班は、病院外での心停止を記録した日本全国の統計データを使い、2005年から2012年の間で救命処置が行われた割合や治療後の結果などの関連を統計解析しました。
日本でAEDが医療従事者以外の一般の人にも使えるようになったのは2004年で、その後公共施設などでAEDの設置が進みました。この期間に普及したAEDによって除細動が行われた数は急増していることが予想できます。
◆後遺症のない生存が3.3%から8.2%に改善
解析から次の結果が得られました。
2005年から2012年の間に、居合わせた人によって目撃された、心原性と見られる病院外の心停止は17,882例(10万人あたり14.0例、95%信頼区間13.8-14.2)から23,797例(10万人あたり18.7例、95%信頼区間18.4-18.9)に増加し、神経学的障害を残さない生存例は587例(年齢調整の割合で3.3%、95%信頼区間3.0%-3.5%)から1,710例(8.2%、95%信頼区間7.8%-8.6%)に増加した。
2005年から2012年の間で、心停止のあと、脳の血流が途切れたことなどによる後遺症を残すことなく生存した割合は、3.3%から8.2%に増加していました。
行われた救命処置については以下の結果が得られました。
居合わせた人による胸骨圧迫が行われた例は38.5%から50.9%に増加、居合わせた人だけによる除細動は0.1%から.2.3%に増加[...]した。
居合わせた人による胸骨圧迫を行うことは、行わない場合に比べて、神経学的障害を残さない生存率の増加と関連した(88,720例中3,595人の生存者、4.1%に比べて78,592例中6,594人の生存者、8.4%、オッズ比1.52、95%信頼区間1.45-1.60)。救急隊だけが除細動を行った場合(42,916例中6,445人の生存者、15.0%)に比べて、居合わせた人だけが除細動を行った場合(2,287例中931人の生存者、40.7%)は神経学的障害を残さない生存率の増加と関連(オッズ比2.24、95%信頼区間1.93-2.61)[...]した。
心臓マッサージが行われた割合は38.5%から50.9%に増加し、心臓マッサージが行われなければ後遺症のない生存は4.1%だったのに対し、心臓マッサージが行われたときは後遺症のない生存が8.4%になっていました。
居合わせた人によって除細動が行われた割合は0.1%から2.3%に増加し、救急隊だけが除細動を行った場合には後遺症のない生存が15.0%だったのに対して、居合わせた人だけが除細動を行った場合には40.7%になっていました。
心室細動は、もともと狭心症などの心臓の異常がある人に起こることもありますが、まれに健康な人にも起こることがあります。心臓から血液が送り出されなくなると、数分で脳が重大なダメージを受け、救命できたとしても重い後遺症が残る原因になります。
心停止から一刻も早く手当てをすることで生存できる割合は大幅に改善すると言われ、最近の研究でも救急隊到着前に心肺蘇生が行われたときは30日後に生存した割合が2倍以上だったとする報告があります。
AEDは特に訓練を受けていない人でも使いやすいように工夫されています。また、AEDの使い方や心肺蘇生法の講習をさまざまな機関が行っていますので、関心のある方はぜひ調べてみてください。
執筆者
Association of Bystander Interventions With Neurologically Intact Survival Among Patients With Bystander-Witnessed Out-of-Hospital Cardiac Arrest in Japan.
JAMA. 2015 Jul 21
[PMID: 26197185]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。