2015.07.27 | ニュース

抗生物質が効かない、多剤耐性緑膿菌による角膜炎が多かった要因とは?

インド90例の症例対照研究
from Ophthalmology
抗生物質が効かない、多剤耐性緑膿菌による角膜炎が多かった要因とは?の写真
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角膜炎の原因のひとつが緑膿菌の感染です。治療には抗菌薬が使われますが、特定の抗菌薬に耐性がある緑膿菌には使える薬が限られます。インドの研究班が、多剤耐性緑膿菌角膜炎は眼の軟膏や保護レンズを使っていたときに多かったことを報告しました。

◆多剤耐性緑膿菌と薬剤感受性緑膿菌の比較

研究班は、対象とした1施設で診断された緑膿菌角膜炎の患者についての情報を集め、3分類以上の薬剤に耐性がある多剤耐性緑膿菌が原因だった場合と、薬剤感受性緑膿菌が原因だった場合との違いを調べました。

 

◆潤滑軟膏、保護レンズと関連

次の結果が得られました。

23例の多剤耐性緑膿菌角膜炎(症例)と、67例の薬剤感受性緑膿菌角膜炎(対照)が同定された。多変量解析で、潤滑軟膏の使用、眼球表面の免疫抑制、保護コンタクトレンズの使用が多剤耐性緑膿菌角膜炎と関連していた。

角膜穿孔は対照(11.94%、67例中8例)よりも症例(52.17%、23例中12例、P=0.0001)で多かった。

多剤耐性緑膿菌による角膜炎は、何らかの病気の治療として、角膜を保護する潤滑軟膏や保護用コンタクトレンズを使っていたとき、また免疫が弱くなっていたときに多くなっていました。多剤耐性緑膿菌による角膜炎では、薬剤感受性緑膿菌による角膜炎に比べて、角膜に穴が開くなどより重症の場合が多くなっていました。

研究班はこの結果をふまえ、「防腐剤の入っていない潤滑軟膏は感染源または感染の温床として働くかもしれない」と述べています。

 

多剤耐性緑膿菌が発生する原因には、感染症の治療として抗菌薬の不適切な使い方がなされたことが考えられます。角膜炎の治療に抗菌薬が使われるとき、眼の表面に人工物があることや免疫が弱くなっていることが原因で治療が不徹底になりやすいとすれば、結果としてこれらの場合は多剤耐性緑膿菌が発生しやすい状況ということになります。

こうした場合には、治療を長引かせないため抗菌薬の使い方に注意が必要なのかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Multidrug-Resistant Pseudomonas aeruginosa Keratitis: Risk Factors, Clinical Characteristics, and Outcomes.

Ophthalmology. 2015 Jul 15 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26189185]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。