2015.06.26 | ニュース

糖尿病では血圧が高すぎても低すぎても認知能力に影響

オランダでの調査から

from Diabetes care

糖尿病では血圧が高すぎても低すぎても認知能力に影響の写真

高血圧と糖尿病は、両方とも認知能力の低下に繋がると言われています。そこで著者らは、24時間の血圧の変化と認知能力とがどのように関係するのかについて、糖尿病のある人たちとない人たちとで調べました。その結果、糖尿病をもっている人では、収縮期血圧が極端に低くても高くても、情報処理速度や記憶が低い傾向がありました。

◆約700人に関し、糖尿病と血圧に対する脳機能の関連を調査

著者らは以下の調査を行いました。

24時間の血圧(n=713人、201人が2型糖尿病)及び夜間での血圧低下状態(n=686人、196人が2型糖尿病)と、 一般的な認知機能、情報処理速度、単語記憶(単語をすぐに思い出す度合いと時間が開いたあとに思い出す度合い)、反応抑制との横断的関連を、線形回帰分析で行い、人口動態と血管リスク因子、心血管疾患、鬱、脂質調節剤と降圧剤の服用などを補正して、解析を行った。

つまり201人の2型糖尿病である被験者と512人の2型糖尿病を患っていない被験者に関し、血圧の測定と、認知機能や情報処理速度、記憶等の調査を行いました。

 

◆糖尿病を患うと、情報処理速度と記憶が悪くなる

著者らは、以下の結果を示しました。

全補正後、24時間の拡張期血圧(DBP)と、情報処理速度(2次項=-0.0267、p<0.01)および記憶(素早い単語想起 b=-0.0180、p<0.05、遅い単語想起 b=-0.0076, p<0.01)に関して、糖尿病患者では2次的(逆U字型)の関連を見出した。しかしながら糖尿病を患っていない場合は相関しなかった。

つまり、糖尿病を患うと、情報処理速度、短期の記憶、長期の記憶はいずれも血圧が中程度のときに高い山型のパターンを示し、血圧が極端に高い人や極端に低い人では悪い傾向がありました。

著者らは、「2型糖尿病患者では、24時間内での拡張期血圧が低いことも高いことも、情報処理速度と記憶に関する成績の低下と関連する」と結論づけています。

 

糖尿病における血圧と脳機能の関係を示唆する、非常に興味深い結果です。血圧が高い場合の脳機能の低下、低い場合の脳機能の低下の原因は、どの程度同じ点があるのか、興味深く思います。例えば血中のホルモンのような、脳機能に影響を及ぼす因子が、高血圧でも低血圧でも同様の変化を起こすのか、それとも高血圧のときと低血圧のときでは全く違う因子がそれぞれ脳機能に影響を及ぼすのか、といった点に疑問が湧いてきます。より詳細な研究が望まれます。

執筆者

高田

参考文献

Both Low and High 24-Hour Diastolic Blood Pressure Are Associated With Worse Cognitive Performance in Type 2 Diabetes: The Maastricht Study.

Diabetes Care. 2015 May 27

 

[PMID: 26016842] http://care.diabetesjournals.org/content/early/2015/05/26/dc14-2502.abstract

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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