2015.05.16 | ニュース

アルツハイマー型認知症が進行しやすい人の3つの特徴

症状と進行の速さに関連あり

from The American journal of psychiatry

アルツハイマー型認知症が進行しやすい人の3つの特徴の写真

アルツハイマー型認知症は徐々に進行することが知られています。進行の速さは人によって違いがあり、何がその違いを生み出しているのかははっきりわかっていません。そこでアメリカの研究チームが、どんな症状があると認知症の進行や死亡につながりやすいのかを調べ、神経精神症状などいくつかの症状がある人で、認知症の進行または死亡がより早く起こっていたことを報告しました。

◆過去の研究の情報を改めて解析

研究チームは次のように、先行研究を参照し、対象者の情報を解析しなおすことで、認知症の進行または死亡と関連する症状を探しました。

著者らは、Cache County Dementia Progression Studyから得られたデータを使い、軽度のアルツハイマー型認知症に見られる臨床的に意味のある神経精神症状と、重度の認知症への進行または死亡との関連を検証した。

 

◆神経精神症状などに関連あり

調べたデータの中で、次の関連が見つかりました。

アルツハイマー型認知症を発症した335人が調査された。68人(20%)がフォロー期間中に重度の認知症に至った。精神疾患(ハザード比2.007)、興奮/攻撃性(ハザード比2.946)、どれか1つの臨床的に意味のある神経精神症状(ドメインスコア≧4に対してハザード比2.682)は重度認知症に至るより速い病状の進行と関連していた。精神疾患(ハザード比1.537)、感情症状(ハザード比1.510)、興奮/攻撃性(ハザード比1.942)、軽度に症候性のある神経精神症状(ドメインスコア1から3に対してハザード比1.448)、臨床的に意味のある神経精神症状(ハザード比1.951)はより早い死亡と関連していた。

つまり、以下の要因が悪い結果と関連していたことがわかりました。

  • 認知症の進行、死亡の両方と関連
    • 精神疾患
    • 興奮/攻撃性
    • 比較的明らかな神経精神症状
  • 死亡と関連
    • 感情症状
    • 比較的明らかでない神経精神症状

この結果から、研究チームは「軽度のアルツハイマー型認知症における特定の神経精神症状の治療は、重度の認知症や死亡に至る時期を遅らせることができるかどうか試験されるべきである」と述べています。

神経精神症状が認知症の進行の原因になっていたのか、それとも何か別の原因が神経精神症状を起こすと同時に認知症を進行させていたのかはこの研究では区別できません。

研究チームが主張するように、実際に神経精神症状を治療してみることで、新しい治療方針の発見となる可能性が出てきます。たとえ無効という結果でも次の課題が見えている、気になる研究テーマです。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Neuropsychiatric symptoms as predictors of progression to severe Alzheimer's dementia and death: the cache county dementia progression study.

Am J Psychiatry. 2015 May 1

[PMID: 25585033]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る