◆アルツハイマー病モデルマウスで、p75ECD量が減る
この研究で筆者らは、以下のように、アルツハイマー病の患者の脳で、「p75ECD」が少なくなっていることを確かめました。
アルツハイマー病患者とAPP/PS1トランスジェニックマウスの脳における脳脊髄液において、p75ECD量が有意に減少していた[...]。
APP/PS1トランスジェニックマウスとは、アルツハイマー病を発症するよう遺伝子を改変したマウスです。このマウスの脳でも、人間のアルツハイマー病患者と同じように、p75ECDが少なくなっていました。
◆p75ECDを加えると、マウスの病態が回復した
p75ECDがアルツハイマー病の脳変化に関係していると考えられたため、著者らは更に、以下のように、マウスの脳の中でp75ECDを正常な量まで戻す実験を行いました。
APP/PS1マウスの脳にAβが沈着する前または後に、ヒト由来p75ECD遺伝子を脳に導入して通常レベルの発現量に戻すと、行動障害やアルツハイマー病で見られる所見(Aβ沈着、細胞死、神経炎症、タウ蛋白質リン酸化、樹状突起棘・神経構造やシナプスタンパクの損失など)が回復した。
アルツハイマー病の症状や脳の変化を起こしていたマウスに遺伝子操作を行い、脳の中でp75ECDが作られるようにしたところ、症状や脳の変化が回復しました。
著者らは「これらのデータからp75ECDは生理的にAβの毒性から神経を保護する分子であり、アルツハイマー病患者への新たな治療標的とバイオマーカーになるであろうことが示された」と述べています。
p75ECDという物質が、マウスにおいてアルツハイマー病の治療に効果がありそうであると判明しました。ヒトにおいてもアルツハイマー病の予防や治療に効果があることが示せれば、もしかしたら画期的な治療法が生み出させれるかもしれません。
世界中で進んでいる認知症研究に、今後も期待しましょう。
執筆者
p75NTR ectodomain is a physiological neuroprotective molecule against amyloid-beta toxicity in the brain of Alzheimer's disease.
Mol Psychiatry. 2015 Apr 28
[PMID: 25917367]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。