アルツハイマー型認知症の典型的な症状「物忘れ」と「エピソード記憶の障害」について
認知症の中で一番多いのがアルツハイマー型認知症です。中には認知症=アルツハイマー型認知症と思っている方もいらっしゃるかもしれません。実際には認知症には他の病気も含まれますが、やはり一番多い病気である本疾患について詳しく知りたい方が多いかと思います。そこで今回は、神経内科医の立場からアルツハイマー型認知症の記憶障害について解説します。
◆最初にあらわれる記憶障害は「エピソード記憶」
アルツハイマー型認知症の
物忘れには色々なパターンがあります。 アルツハイマー病で最初に現れる記憶障害は、エピソード記憶と言われるものです。
エピソード記憶とは、その人の人生についての個人的な記憶で、その人(と周囲の人)しか知り得ないものです。
今日の朝食のメニュー、前日に出かけた場所、といった直近の記憶から、お年寄りの昔話(私の若い頃は…)のような古い記憶まで様々です。
こういった記憶が正しいか判断するために、患者さんご本人だけでなくご家族の方からも色々と話を伺います。
もちろん、物をどこかに置き忘れてしまうレベルのことは、認知症ではない高齢者でもありえますが、前日に何をしたか思い出せない、約束をしたことを忘れて破ってしまう、といったレベルになってくると少し可能性は高くなってくるかもしれません。
◆アルツハイマー病の特徴的な症状
もう一つ、アルツハイマー型認知症の患者さんの受け答え方には特徴があります。
例えば「今日は何月何日ですか」と聞くと、「分からない」というだけでなく、「この歳になったら日付なんて関係ないからねえ。毎日変わらないから」「今朝新聞を見てないねえ」というように、答えられない理由を取り繕うことがあります。。
対人関係を乱そうとせず、その場の雰囲気に合わせて上手く答えようとする、こうした行動を「取り繕い反応」と呼びます。
また、ご家族と一緒の場合は「何日だったかねえ」と家族の方を向いて尋ねることもあります。
このわからない時に付き添いの人に頼ろうとするというのも特徴的な行動の一つで、「振り返り現象」と呼ぶこともあります。
このように、その場の空気を読んでうまく反応されることがあるため、認知症の発見が遅れることをしばしば経験します。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。