2015.06.13 | ニュース

ステージIVの肺がんに、新薬ネシツムマブが生存期間を改善した

扁平上皮非小細胞がんにゲムシタビン、シスプラチンとの併用で

from The Lancet. Oncology

ステージIVの肺がんに、新薬ネシツムマブが生存期間を改善したの写真

肺がんにおいて、ほかの臓器に転移があるなど「ステージIV」という段階まで進行したものは治療が非常に難しく、有効な方法は限られています。今回海外から、新しい抗がん剤「ネシツムマブ」を既存の薬と併用すると、既存薬だけの治療よりも生存期間が改善したことが報告されました。

◆ほかの治療を受けたことがないステージIVの扁平上皮がんを治療

この試験は、26か国にまたがる184の施設が参加して行われました。対象には、肺がんの中でも扁平上皮非小細胞がんというタイプでステージIVのものがあり、以前にほかの治療を受けたことがない18歳以上の患者が選ばれました。

対象者はランダムに2つのグループに振り分けられ、一方のグループ(対照群)ではゲムシタビン、シスプラチンという2種類の抗がん剤による治療を、もう一方のグループ(試験群)ではゲムシタビン、シスプラチンに加えてネシツムマブの3剤による治療を受けることとされました。

 

◆全生存期間を9.9か月から11.5か月に

試験から次の結果が得られました。

2010年1月7日から2012年2月22日までに1,093人の患者が登録され、ネシツムマブ・ゲムシタビン・シスプラチンの治療を受ける(545人)かゲムシタビン・シスプラチンの治療を受ける(548人)かにランダム割り付けされた。全生存期間は試験群で中央値11.5か月(95%信頼区間10.4-12.6)と、対照群の中央値9.9か月(8.9-11.1)よりも有意に長かった。

疾患の進行に関連するイベントを含めて、死亡につながった有害事象は試験群で538人中66人(12%)、対照群で541人中57人(11%)に起こった。そのうち試験群で15人(3%)、対照群で10人(2%)は試験薬に関連すると見られた。

死因を問わない全体としての生存期間が、試験群では治療開始後中央値11.5か月であり、対照群の中央値9.9か月よりも長くなっていました

副作用について、肺がんの進行によるものと副作用によるものを含む、症状の悪化などによって、試験群の66人、対照群の57人が死亡しました。そのうち治療の副作用によると考えられた例は試験群15人、対照群で10人でした。

研究班は、「この結果はネシツムマブをゲムシタビンとシスプラチンの化学療法に追加することが進行した扁平上皮非小細胞肺がんの患者の全生存期間を改善し、この疾患に対する新しい第一選択の治療選択肢となりうることを示している」と結論しています。

 

ステージIVという非常に難しい段階に対して、生存期間が長くなったという結果が示されています。有効な薬剤が加われば、新しい希望になるかもしれません。

ただし、全体として生存期間が長くなったとしても、中央値の差で1.6か月という幅であり、またその中には、治療が原因で死亡したと考えられる人も含まれています。実際の治療に取り込まれるとすれば、これらの面のうちどれを重視するかが、治療選択に関わってくるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Necitumumab plus gemcitabine and cisplatin versus gemcitabine and cisplatin alone as first-line therapy in patients with stage IV squamous non-small-cell lung cancer (SQUIRE): an open-label, randomised, controlled phase 3 trial.

Lancet Oncol. 2015 Jun 1 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26045340]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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