2015.06.09 | ニュース

エボラワクチン臨床試験の結果

中国で2014年型に対するワクチンを開発
from Lancet
エボラワクチン臨床試験の結果の写真
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2014年に流行したエボラ出血熱には有効な治療が確立されていません。世界各国でワクチンの開発が試みられていますが、人間に対して実際の予防効果が確かめられたものはありません。中国の研究班が、これまでに報告されたワクチンがすべて1976年に流行した型のウイルスを元に作られていることに対して、2014年に流行した型のウイルスを元に新しいワクチンを開発し、人間に対して安全性が確認されたことを報告しました。

◆低用量と高用量で安全性を検証

研究班は新しいワクチンの安全性を検証するため、次の対象者を選びました。

健康な成人(18歳から60歳)が連続して登録され[...]偽薬、低用量のアデノウイルス5型ベクターに基づいたエボラワクチン、高用量のワクチンにランダムに割り付けられた。

健康な18歳から60歳の対象者をランダムに3つのグループに振り分け、それぞれに偽薬、低用量のワクチン、高用量のワクチンを接種しました。

 

◆高用量でも深刻な副作用なし

試験の結果、ワクチン接種後28日までに、低用量のグループ、高用量のグループでともにエボラウイルスが持つ物質に対する抗体が作られ、また免疫の働きをする白血球が増加する反応がありました。

安全性について次の結果が得られました。

2014年12月28日から2015年1月9日にかけて、120人の参加者が登録され、40人が偽薬群、40人が低用量ワクチン群、40人が高容量ワクチン群に割り付けられた。参加者は28日間フォローされた。全体で82人(68%)の参加者が1件以上の有害反応をワクチン接種後7日以内に訴えた(偽薬群で19件、低用量群で27件、高用量群で36件、P=0.0002)。最も多い反応は注射部位の軽い痛みで、偽薬群の8人(20%)、低用量群の14人(35%)、高用量群の29人(73%)に見られた(P<0.0001)。ほかの有害反応と検査値には群間に有意差がなかった。

21人(18%)の参加者(偽薬群で9人、低用量群で6人、高用量群で6人)が微熱を起こした。深刻な有害事象は記録されなかった。

高用量群では注射した場所の軽い痛みが73%の人に起こるなど、副作用と思われる反応が多くなっていましたが、深刻な有害反応はありませんでした。

研究班は「この結果は高用量ワクチンが安全で頑健に免疫応答を起こしうることを示している」と結論しています。

 

エボラワクチンで有効性が確認されたものはまだないため、ワクチンの元にしたウイルスの型が違うことによって効果に違いがあるかどうかも今後の検証を待つ段階にあります。ここで報告されたものを含め、各国で開発されている中から実際に有効なワクチンが選び出され、早く対策として使えるようになることが待望されます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Safety and immunogenicity of a novel recombinant adenovirus type-5 vector-based Ebola vaccine in healthy adults in China: preliminary report of a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 1 trial.

Lancet. 2015 Mar 24. [Epub ahead of print]

 

[PMID: 25817373]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。