2017.10.16 | ニュース

エボラ生存者の精液からウイルスRNA検出、1年以上の例も

シエラレオネの流行後

from The New England journal of medicine

エボラ生存者の精液からウイルスRNA検出、1年以上の例もの写真

エボラ出血熱の大規模な流行が2014年から2016年にかけてアフリカ大陸西部で発生していました。発病後生存した男性を対象に、年月が経っても精液からウイルスRNAが検出されるかの調査が行われました。

シエラレオネで生存した男性210人の精液検査

世界保健機関(WHO)などの支援を受けてシエラレオネで行われた調査の結果が医学誌『The New England Journal of Medicine』に報告されました。

この調査は、2015年5月から2016年5月にかけて、シエラレオネの首都フリータウンと、近隣の都市ルンギで行われました。

エボラ出血熱を発病し生存した男性210人が、回復したあとばらばらのタイミングで精液を提供しました。

精液はエボラウイルスのRNA(遺伝情報を担う物質)を含むかを検査され、提供者がエボラ治療室から出た日から経過していた日数によって集計されました。

 

3か月目まで100%、最長470日

検査の結果、月単位でウイルスRNAが検出された割合は以下のとおりでした。

  • 3か月目まで:100%(7人中7人)
  • 4か月目から6か月目:62%(42人中26人)
  • 7か月目から9か月目:25%(60人中15人)
  • 10か月目から12か月目:15%(26人中4人)
  • 13か月目から15か月目:11%(38人中4人)
  • 16か月目から18か月目:4%(25人中1人)
  • 19か月目以降:なし(12人中0)

エボラ治療室から出たあと最も長くて470日後の参加者の精液からRNAが検出されていました。

研究班は、精液に含まれるウイルスが性感染する可能性については「ウイルスRNAが検出されることは必ずしも感染力のあるウイルスが血液や精液に存在することを意味しない」と断っています。

 

エボラはどんな脅威となるのか?

エボラ出血熱治療後のウイルスについての調査を紹介しました。

ほかの報告によれば、リベリア(シエラレオネに隣り合う国)の調査でエボラ治療室から出て565日後に精液からウイルスRNAが検出された例や、ギニアの調査でエボラの症状が始まった日からおよそ470日後に性感染が起こった例などがあります。

2015年にはスコットランド出身の看護師がシエラレオネでエボラ出血熱にかかり、帰国後に再発したことが報道されました。

エボラ出血熱の感染拡大を防ぐため、ワクチンの開発などが進められています。しかしウイルスのふるまいなどについては不明の点も残されています。感染が広がる可能性のある範囲をより正確に特定することが、効果的な対策にもつながるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Ebola RNA Persistence in Semen of Ebola Virus Disease Survivors — Final Report.

N Engl J Med. 2017 Oct 12.

[PMID: 26465681]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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