2015.06.09 | コラム

「食前」と「食直前」の違いって何?

薬の飲むタイミングとその意味〔番外編①〕
「食前」と「食直前」の違いって何?の写真
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薬の服用方法において「食前」と「食直前」という一見よく似た服用方法があります。特に糖尿病の治療薬でよく使われる指示なのですが、実際のところ何が違うのでしょうか?この2種類の指示が出ている場合に注意しなくてはならないことは何なのか?臨床現場での事例を参考に考えてみます。

◆ 「食前」と「食直前」、一緒じゃダメですか? 

いくつかの糖尿病治療薬をご存知の方はピンとくるかもしれませんが、薬の服用方法において、あえて「食前」と「食直前」を使い分けている場合があります。

薬を交付する際、この指示が共に出ている場合に時々 こんな質問を受けます。

「どちらも食事の前に飲むのですよね?」

この質問に対してはいつも  「はい、でも"OO"は違うんですよ」 と答えるようにしています。

この「OO」は簡単に言うと、「食事までの時間」です。 一般的な薬の服用方法においては、『食前とは食事開始30分くらい前に服用』することであり、『食直前とは食事開始5~10分前に服用』することを意味します。

特別な指示や意味などがある場合を除けば、「食前」の指示で服用する薬は服用してから30分くらい経過後、効果を期待したい時に使い、「食直前」の指示で服用する薬は5~10分の短時間で効果が期待できる薬に使用します。 もしも、この2種類の指示で出ている薬同士を逆の順番で飲んでしまった場合は大変です。特に、「食直前」の薬を食前(食事の30分くらい前)に服用してしまうと、食事の前に薬の効果が出始めてしまう場合があります。このことを糖尿病治療薬で考えると、「食直前」に飲むはずの薬を「食前」に飲んでしまうことで、食事を摂る前に必要以上に血糖値が下がってしまい低血糖症状が起こる可能性があるので特に注意が必要です。

もちろん、本来は他の服用方法でも飲める薬をあえて「食直前」の指示で処方する場合もあります。一つの例として、自宅や高齢者施設などにおいて、食事の介助を受けている方に対し薬を飲み忘れないように配慮して「食直前」で指示を出している場合があります。この場合、介護従事者が食事の介助に入る時に一緒に薬の服用の有無も確認できるというメリットがあるのです。いずれにせよ薬が「食直前」の指示で出されていたら、何らかの理由があると考えて、指示通りに服用することが必要であることを覚えておきましょう。

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。