◆52件の疫学研究の患者データベースから調査
研究グループは52件の疫学研究から参加者の情報を調査し、治療開始してから最長4年間にわたって経過観察し、卵巣がんを発症する割合と卵巣がんの種類によって発症リスクが変わるかどうか解析を行いました。
◆治療期間を問わず卵巣がんになりやすい
ホルモン補充療法を受けた全12,110例の閉経後の女性のうち、55%(6,601例)が経過観察中に卵巣がんを発症していました。
さらに治療期間が5年未満であっても治療を受けている女性は卵巣がんになるリスクが1.43倍高く、5年以内に治療を中止した女性においても1.37倍リスクが高くなることが判明しました。
また、卵巣がんの4つのタイプそれぞれで発症リスクがさまざまでしたが、主要である漿液性の卵巣がんと類内膜性のがんの発症リスクは治療によってそれぞれ1.53倍と1.42倍高くなることが判明しました。
ホルモン補充療法の使用を止めてから長い期間が経つにつれ、リスクは低下する傾向にありますが、治療を止め10年経過しても漿液性または類内膜腫瘍の発症するリスクは依然高いままという結果を示しています。
研究グループはホルモン補充療法と卵巣がん発症には何かしら因果関係があるかもしれないと述べており、もし因果関係があるとすれば、今回の結果から推測すると50歳頃から5年間治療を受けた場合、卵巣がんが1,000人に1人増え、卵巣がんよる死亡数も1,700人に1人多くなることになると指摘しています。
今回の研究結果からホルモン補充療法が卵巣がんを引き起こす可能性があることが示唆されました。
しかし、今回の研究ではホルモン治療剤の存在を考慮してしていない点や、日本においても同様の調査結果が得られるか判らないなど、まだまだ不明な点が多く、今後の追加研究を待ちたいところです。
執筆者
Collaborative Group On Epidemiological Studies Of Ovarian Cancer.,
Lancet. 2015 Feb 12.
[PMID: 25684585] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25684585※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。