2017.03.19 | ニュース

閉経前の子宮を取る手術では、卵巣を残したほうがいい?

113,679人の経過を解析

from BMJ (Clinical research ed.)

閉経前の子宮を取る手術では、卵巣を残したほうがいい?の写真

卵巣は女性ホルモンを作る臓器です。女性ホルモンは心筋梗塞などに対して予防的に働くという説があります。子宮を取り出す手術を受けた女性のデータをもとに、卵巣も取るかどうかによる違いが検討されました。

イギリスの研究班が、イギリス各地にわたる統計データを解析し、閉経前の女性が子宮摘出を受ける際に卵巣子宮の両側にある器官で、女性ホルモンを分泌したり、卵子を作り出したりする働きを持つものを温存するかどうかで、以後の経過や生存率などに違いがあるかを検討しました。結果は医学誌『BMJ』に報告されました。

参照した統計のうち、良性病気の中でも、相対的に経過が悪くないもの。多くの場合、腫瘍をつくる病気に対して、悪性腫瘍と対比させるために使われる用語疾患(がん無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがある以外の理由)で子宮摘出を受けた35歳から45歳の女性113,679人の情報が解析されました。

卵巣は左右に1個ずつあります。両側卵巣を取り除いた女性と、片側の卵巣を残した女性が比較されました。

 

解析から次の結果が得られました。

両側卵巣摘出群に比べて卵巣温存群の患者のほうが、子宮摘出後の虚血性心疾患による入院が少なかった(調整ハザード比0.85、95%信頼区間0.77-0.93、P=0.001)。

全死因死亡率にも有意データを分析して導かれた結果が、偶然ではなく「意味が有る」必然的な値であると推測できること差が見られた。両側卵巣摘出群では1.01%(37,098人中376人)に対して、卵巣温存群では0.60%(76,581人中456人)だった。

両側の卵巣を取り除いた女性に比べて、片側の卵巣を残した女性のほうが虚血性心疾患心筋梗塞狭心症など)による入院が少なく、全体として死亡率が低くなっていました

研究班は考察の中で、女性ホルモン体内で作られて、血流にのって体の特定の部位を刺激する物質。内分泌物質とも呼ばれる乳がんを増やす反面で大腸がんを予防する可能性や、心筋梗塞脳卒中などの心血管疾患心臓や全身の血管(主に動脈)に起こる病気の総称。ほとんどの場合は動脈硬化が原因となる、虚血性心疾患や脳卒中、末梢血管障害などを指すを予防する可能性によって理論的な説明を試みています。

ただし研究の限界として、使ったデータにはホルモン補充療法についての情報がなかったこと、手術方法が選ばれた理由に関して不明の点が残っている可能性があることなどにも触れています。

 

子宮摘出の際に卵巣を残した女性のほうが死亡率が低かったとする研究を紹介しました。

結果だけを見ると「卵巣を残したほうがよい」と思えそうですが、限界として触れられているとおり、違う可能性も残されています。

たとえば、卵巣を残さなかった人のほうがホルモン補充療法をよく使っていたので、ホルモン補充療法の副作用によって生存率が低くなったとすれば、むしろ女性ホルモンは有害に働いていたと考えることになります。このような想像は情報がない状況では検証できないため、ほかの研究の結果と合わせて考える必要があります。

ひとつの研究の結果だけで実践をすぐに変えようとすることは危険です。ここで見られたような統計的関係を合理的に解釈しようとすることが、さらに論点を絞った研究を生み出すための仮説生成の場となります。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Removal of all ovarian tissue versus conserving ovarian tissue at time of hysterectomy in premenopausal patients with benign disease: study using routine data and data linkage.

BMJ. 2017 Feb 6.

[PMID: 28167486] http://www.bmj.com/content/356/bmj.j372

*本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。 [執筆者一覧]