高リン血症治療薬(血中リン排泄促進薬)
主に慢性腎臓病(CKD)の病態において、消化管内でリンを吸着し、リン排泄を促すことで高リン血症を改善し、動脈硬化や骨折などを予防する薬

高リン血症治療薬(血中リン排泄促進薬)の解説

高リン血症治療薬(血中リン排泄促進薬)の効果と作用機序

  • リンを吸着し、リン排泄を促すことで高リン血症を改善し、動脈硬化や骨折などを予防する薬
    • 慢性腎臓病では腎臓の機能が低下することで体内にリンが蓄積し高リン血症がおこる
    • 高リン血症では血管や関節などの石灰化により動脈硬化や関節痛などがおこりやすくなる
    • 高リン血症では副甲状腺ホルモンの過剰分泌がおこり、これにより骨がもろくなる
    • 本剤は消化管内でリンと結合し、この結合物質が体外へ排泄されることで結果として体内のリン量を減らす効果をあらわす

高リン血症治療薬(血中リン排泄促進薬)の薬理作用

慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)では、腎臓の機能が低下することで、食事などにより吸収された余剰のリンの排泄が滞り、体内にリンが蓄積し高リン血症が引き起こされる。これを放置しておくとリンとカルシウムの過度な結合により、骨以外の組織でも石灰化がおこる。特に血管の石灰化は動脈硬化の原因となり血栓症などが発症しやすくなる。また、関節の石灰化で関節症、皮膚であれば掻痒(痒み)など様々な症状がおこりやすくなる。そのほか、血清中のリンの上昇とカルシウムの低下は副甲状腺ホルモンの分泌を促進し、このホルモンが骨からカルシウムなどを流出させるため、骨がもろくなる。

本剤は消化管内でリンを吸着する作用によりリンの消化管内での吸収を抑制することで血液中のリンの濃度上昇を抑え高リン血症を改善し、動脈硬化や骨折などを予防する。リンを吸着する作用の仕組みは薬剤ごとに異なり、金属イオン(カルシウムや鉄)がリンと結合したり、金属以外の物質がリンと結合し、これらリンと結合した物質が体外へ排泄されることで結果として体内のリンを減らす効果が期待できる。

高リン血症治療薬(血中リン排泄促進薬)の主な副作用や注意点

  • 消化器症状
    • 便秘、下痢、吐き気などがあらわれる場合がある 
  • 肝機能異常
    • 頻度は稀である
    • 倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸などがみられ症状が続く場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 消化器疾患を持つ患者が服用する場合の注意
    • 便秘や下痢、薬剤によっては稀だが消化性潰瘍イレウスなどがおこる場合もあり十分注意する

高リン血症治療薬(血中リン排泄促進薬)の一般的な商品とその特徴

レナジェル、フォスブロック

  • セベラマー塩酸塩製剤(錠剤)
    • 塩酸(強い酸)を含む製剤のため、アシドーシスにより注意が必要となる

ホスレノール

  • 炭酸ランタン水和物製剤
    • 炭酸(弱い酸)を含む製剤であり、塩酸(強い酸)を含む製剤(セベラマー塩酸塩など)に比べアシドーシスへの懸念が少ないとされる
  • 剤形に関して
    • チュアブル錠、顆粒剤、OD錠(口腔内崩壊錠)があり、嚥下機能などに合わせて選択が可能

キックリン

  • ビキサロマー製剤
    • セベラマー(主な商品名:レナジェル、フォスブロック)との比較
      ・セベラマーよりリンを吸着した際の膨潤(物質の膨らみ)が少ない
      ・上記の理由により、消化器系の副作用の軽減が期待できるとされる
  • 剤形に関して
    • カプセル剤と顆粒剤があり、嚥下機能などに合わせて選択が可能

リオナ

  • クエン酸第二鉄水和物製剤(錠剤)
    • 成分中の鉄が消化管内でリンと結合することでリンを排泄する
    • 服用後、主に消化管内ですばやく溶けて効果が出るように造られた製剤
  • 鉄欠乏性貧血の治療に使われる場合もある

カルタン

  • 沈降炭酸カルシウム製剤
    • 成分中のカルシウムが消化管内でリンと結合することでリンを排泄する
  • 剤形に関して
    • 剤形として錠剤、OD錠(口腔内崩壊錠)、細粒剤があり、嚥下機能などに合わせた選択が可能