発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の原因について:補体による赤血球の攻撃
PNHは
目次
1. 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)のメカニズム
PNHは私たちの身体の中にある「免疫システム」と深く関わっています。免疫システムは私たちの身体の中に
PNHでは免疫システムがおかしくなり、赤血球が攻撃されることで起こります。その結果、赤血球に含まれる
2. より細かなメカニズムの説明について
もう少し詳しく説明します。免疫システムには様々な細胞や物質が関わっていますが、PNHのメカニズムを考える上で、重要な物質は以下の3つです。
- 補体(ほたい)
- CD55
- CD59
補体は免疫システムが細菌を殺す時に使われる免疫物質です。補体があることで細菌が入ってきても身体を守ることできます。
補体には一つの特徴があります。CD55やCD59を見たら攻撃しないというものです。補体は一番身近な存在である私たちの身体を攻撃しません。これは一つに私たちの身体の細胞にはCD55やCD59を出し、味方の目印となっているためです。
PNHはこのCD55やCD59を赤血球の表面に出せなくなることで起こります。その結果、赤血球が補体の攻撃を受けるようになり、貧血を起こしたり、ヘモグロビン尿の原因になります。
3. どうしてCD55やCD59を表面に出せなくなるのか?
血液細胞がCD55やCD59を細胞の表面に送り出す際には、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)という物質が必要です。GPIはPIGA遺伝子の情報をもとに作られますが、PNHの人ではPIGA遺伝子がおかしくなっていることが報告されています。PIGA遺伝子に異常があることでGPIを作ることができなくなり、CD55やCD59を細胞表面に出せなくなっていると考えられています。
ただし、PIGA遺伝子の異常は「生まれつき」ではなく「生まれた後」に起こります。生まれた後であったも、放射線を浴びたり、細胞の老化などで遺伝子がおかしくなることがあります。PNHは生まれつきの遺伝子の異常の病気ではないので、子どもに遺伝することもありません。
4. 感染症は発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の原因になるか?
5. メカニズムをもとに他の貧血の原因との違いを考える
赤血球には120日程度の寿命があります。しかし、通常、赤血球の数は日々大きな変動がありません。これは、赤血球が死んでいくのと同じペースで新しい赤血球が絶えず作られており、一定数を保っているからです。
PNHでは赤血球が破壊されることで貧血を起こします。また、他にも出血を起こし、血液を失うことが貧血の原因になります。赤血球を消費する(消費の亢進)と貧血を起こしてしまうことがわかります。
他方、血液の工場である
貧血の原因にはこれ以外にもいくつかありますが、このような分類で貧血の原因について考えると以下のようになります。
【貧血の原因分類】
- 赤血球の消費の亢進
- 出血
- 赤血球が破壊される(自己免疫性溶血性貧血、PNHなど)
- 赤血球の産生の低下
貧血の原因にはたくさん種類がありますが、赤血球の消費が亢進しているタイプであること、その中でも破壊されるタイプであることがわかれば、PNHの診断に近づけることがわかります。実際にどのようにして見極めを行っているかは「検査について」のページで説明します。